大島邸に関する新聞記事等を経時的に列挙してみました。

 朝日新聞 2009年
12月13日 
大島邸保存へ勉強会
 唐津市民ら「貴重な建物」


 唐津市が2010年度にも取り壊すことを決めている、旧唐津銀行創立者の大島小太郎氏(1859-1947)の旧居・大島邸=唐津市西城内=について、保存を求める市民らが「大島邸を残す会」を結成し、19日、同邸で勉強会を開いた。同会代表の辻いく子さん(60)は、「昔の町並みを伝える貴重な建物。多くの市民に大島邸のことを知って欲しい」と話している。
 大島邸は1879(明治12)年ごろに建てられた、木造平屋建ての邸宅。大座敷や二つの茶室を備え、武家屋敷の面影を残す。県の「近代和風建築総合調査報告書」 (1996年)で、県内有数の良質な邸宅として取り上げられている。だが、シロアリの食害などで傷みが激しく、市は隣接する大志小学校の校舎老朽化に伴い、2010年度に取り壊し、跡地に同小校舎を建てることにしている。
 勉強会には市民約50人が参加。九州大芸術工学研究院の藤原恵洋教授が、大島邸の茶室について「クワの木や黒柿などの名木を使い、遊び心にあふれた作りで、大変貴重」と解説。建物全体についても、補修をすれば保存は可能との見解を示した。
 勉強会に参加した同市南城内の骨董品店経営、高橋俊子さん(60)は「城内地区はかつて、武家屋敷がたくさん並んでいたのに、マンションが次々に建ち、景観が壊れてしまった。最後に残った屋敷が大島邸であり、是非保存して欲しい」と話していた。 
佐賀新聞  2010年
1月18日 
貴重な大島邸を壊さないで
 唐津市 辻いく子(60)

  唐津に唯一残る武家屋敷大島邸がひっそりと西城内にあります。江戸時代の建築様式を残し遊び心にあふれた素晴らしい茶室を持つ珠玉の近代和風建築で、いろいろなつくばいや五輪塔、数々の灯籠を備え、樹齢百年を超す樹木が茂り豊かな緑を残しています。
 また、大島小太郎は唐津銀行の創始者で、明治期の疲弊した唐津の経済を立て直し、港、鉄導道路などを整備した唐津の偉人でもあります。
 近年、西城内地区はマンションが立ち並び、城内の風情がほとんどなくなり、大島邸が最後に残った緑豊かなお屋敷です。でも今年の春には大志小学校の校舎建て替えのために壊される運命にあります。
 私たちは古い物を壊すばかりでなく、次の世代に先祖から受け継がれた物や立派な緑地を残す義務があると思います。子どもたちのため、また城下町唐津の街並み整備のためにも、大島邸を壊さないでください。 (大島邸を残す会代表)
 佐賀新聞 2010年
1月19日 
 私の主張
消えゆく唐津城下の風景

中里 紀元(77)唐津市

 唐津は士、農、工商(町人)と身分の別に三重の堀で居住地を分けた、江戸期の典型的な遺構を持つ城下町である。さらに士土と下士の住居も区分し、東西に分けた寺町など日本の共通した城下町の姿を一目で学ぶことのできる町で、また数少ない海域の城下であった。ところが城の直下に城と一緒に眺めることができた東高校の武家屋敷の高麗門が消えた。唐津城下の風景が、また一つ消されていった。
 この地唐津藩主の屋形跡の最初の学校は、明治3年の藩校耐恒寮である。ここで高橋是清から英語を学んだ辰野金吾(東京駅、日銀本店設計)、曽祢達蔵(丸ノ内煉瓦館、慶応三田校舎設計)の両建築家、天野為之(早稲田第2代学長)、また佐賀への唐津街道、博多への海岸道路、その両道路に沿った鉄道などの開発、西唐津港の開港、唐津銀行の創設をした大島小太郎など、東京や郷土唐津の町づくりに活躍し尽力した俊才たちが育った学校であった。
 しかし、廃藩置県により財政的後援をなくし耐恒寮は閉鎖された。その洋書は大島興義(小太郎の父)が委員長となって旧藩校の志道舘跡に建設した志道義舎の学校に移した。その維持費はなく、城内の太鼓櫓で町へ時を知らせ、その代価として町人から3銭ずつの集金をして維持費とした。
 明治7年、征韓論の江藤新平の反乱が起こり、唐津士族九百九十余人のうちわずか百二十余人が志道館に集合し、その混乱で志道義舎も閉鎖されてしまった。
 そのため青年の当てもなく遊ぶ姿がふえ、それを見た大島小太郎は耐恒寮跡に国語、外国語、数学、記簿法、測量学、奏学など16科目を教える下等中学、ほぼ同じ学科に経済学、重学、動植物学、鉱山学など15科目を教える上等中学の2編成の共立学校を設立した。
 閉鎖寸前にまで追い込まれたときも、小太郎は東松浦郡区長坂本経懿に頼み、解体されていく士族の屋敷の築材を買い取ってもらい教室を増築していった。この時に高麗門は武家屋敷から運ばれ校門として建てられたと考えられる。
 さらに坂本は西松浦郡区長を説いて、この学校を両郡共同の郡費による準中学校への計画を進めていった。明治9年、長崎県令北島が巡視に来て、この学校の生徒たちが自炊をし、互いに「切磋琢磨し学業に励む姿に感激して中学校に取り立てた」(唐津市史)。こうして長崎にも佐賀にもない最初の中学校が唐津に誕生したのである。
 東高校の高麗門は、明治初年の混乱期に大島父子を中心として唐津の先人たちが地域の子どもたちのための学校設立に努力したシンボルであり、その歴史を語る文化遺産であった。
 佐賀市では、いまとくに明治期の文化遺産を発掘し、その場所に保存する活動が、さかんに行われているが、唐津では、どうして次々に消されていくのだろうか。それも佐賀と名の付く校舎のために。 (佐賀大学非常勤講師)
佐賀新聞 2010年
01月21日
「旧大島邸」解体へ
 大志小新校舎用地に 唐津市

 明治の和風建築 老朽化に勝てず

 近代和風建築、保存求める声も

 佐賀県唐津市西城内にある明治期の近代和風建築「旧大島邸」が、隣接する大志小の新校舎建設用地になるため取り壊されることになった。市は歴史的建築物として記録に残し、文化的価値のある建具の一部を保存する方針だが、市民からは保存を求める声も上がっている。
 旧大島邸は武家屋敷の面影を残す県内有数の大邸宅。唐津の文化・財界をリードし、唐津銀行頭取だった大島小太郎氏の旧宅で、1879~80(明治12~13)年に建築された。5300平方メートルの敷地に立つ木造一部2階建て380平方メートルの屋敷は客間や広間などがあり、「敬日庵」と呼ばれる茶室では毎年、茶会も開かれていた。
 ただ、文化財指定がなかったことなどから保存は進まずに老朽化。シロアリ被害などで床や屋根の一部が崩れ落ちている。昨年、東隣の大志小の老朽化に伴う新築が決まり、新築方法の協議の中で、旧大島邸を取り壊して校舎を建てることになった。
 建物を含む敷地は98年に市土地開発公社が文化財及び教育的用地として買収、管理している。市は「財政面から建物保存は困難。大志小も校庭の拡大など教育環境の改善が急務で、改築費用や児童の学習への影響を最小限に抑えることなど総合的に判断した」とし、5億1800万円で敷地を購入する。
 市によると、建物は写真や図面で記録し、外観が復元できる程度の報告書を作成する。欄間やふすまなど建具の一部は新校舎の具材としても利用する方針で、教室の一部に茶室を設け、市民にも開放する考え。解体は来年度からで、新校舎は2011年度内の完成を目指す。
 こうした動きに対し、市民有志でつくる「大島邸を残す会」は昨年末、県内外から集めた保存を求める1800人の署名を市に提出した。代表の辻いく子さん(60)=南城内=は「大志小新築について地域との話し合いはなく、近隣の住民でさえ解体されることを知らない人が多い。次世代に歴史や文化を継承するためにも現状のまま残してほしい」と話す。(谷口)
佐賀新聞 2010年
03月11日
「旧大島邸 唯一の武家屋敷」
唐津市守る会 保存へ新たな署名と要望書

唐津市の旧大島邸 保存求め署名、要望書を提出

 唐津市の大志小の新校舎建設用地となるため、新年度に解体される方針が示されている旧大島邸について、「大島邸を守る会」(辻いく子代表)のメンバー8人が10日、県内外から集まった保存を求める3264人分の署名と要望書を坂井俊之唐津市長に提出した。大塚稔市教育長は「子どもたちに安心安全な校舎と運動場を提供する義務がある」と解体に理解を求め、溝は埋まらなかった。
 要望書は「地域に残る唯一の武家屋敷で、江戸時代の建築様式を残す貴重な建物。何億をかけても再現できない」として現地保存を求めた。進藤健介市議会議長と古川康佐賀県知事にも提出した。
 守る会は昨年末、1800人の署名を提出。その後約3カ月で3200人余りの署名があり、5000人を超えた。先日旧大島邸で開いたひな祭りの観光客の多くが署名したという。
 旧大島邸は佐賀銀行頭取だった大島小太郎氏の旧宅で、明治12~13年に建てられた。茶道宗?流の普及に貢献したとされる茶室があり、建具などには江戸後期~明治初期の特徴的な細工が施されている。文化財指定がなかったことなどで管理が行き届かず、床や屋根の一部が崩れ落ちている。
 市は「財政面を含めて保存は困難」とし、敷地活用で仮校舎建設費(5~6千万円)が節減できることなどを含めて解体を決め、3月議会に新校舎建設費4億3300万円と土地契約に関する議案を提案しているが、「守る会」のほか、文化財保存県協議会も「幕末から明治維新にかけての唐津城下町を後世に伝える上で、欠落させてはならない文化財」などとして保存を求めている。 (谷口)

【写真】旧大島邸の茶室。障子など建具の一部が老朽化しているが、今でも茶会などで市民が活用している=唐津市西城内

 佐賀新聞 2010年
03月13日
 
旧大島邸の解体
あらためて表明
  唐津市、一般質問で答弁


唐津市の大志小の新校舎建設用地にするため、解体の方針が示されている旧大島邸について、市は12日の市議会一般質問で、計画通り来年度に解体し、新校舎を建設する方針をあらためて強調した。
 熊本守男教育部長が「昨年から新校舎の設計計画などを議会に諮り、了承されてきた」と経過を説明。保存した場合の新校舎建設への影響については、運動場が拡張できなくなる▽設計費など約4千万円が無駄になる▽交付金の再申請などで新校舎建設が大幅に遅れる-などと答弁した。
 質問した山下正雄議員は「議会の承認は重く、教育環境改善のため新校舎の建設を粛々と進めるべき」と意見を述べた。
 旧大島邸の保存を求めている「守る会」のメンバーらは「思いが届かず残念。私たちは新校舎の建設に反対しているわけではなく、旧大島邸を残してほしいと訴えているだけ。そこは誤解しないでほしい」と話した。(谷口大) 
佐賀新聞 2010年
03月25日
旧大島邸の保存求める請願、不採択 唐津市議会
 佐賀県唐津市議会は25日、大志小の新校舎建設用地にするため、解体の方針が示されている旧大島邸の保存を求める住民の請願を不採択とした。
 「大島邸を守る会」の会員で、松浦文化連盟元会長の中里紀元さん(78)が提出していた。
 審議では「保存を求める5千人分の署名を重く受け止め、文化財保護審議委員会で審議すべき」という賛成意見の一方、「議会で議論を尽くした」「現校舎は耐震性に問題があり新築が不可欠」という反対意見が出て、賛成3、反対17で不採択となった。
 市議会は同日、大志小の新校舎建設費4億3300万円を含む新年度予算案を可決。市は新年度に着工、2011年度内の完成を計画している。
朝日新聞  2010年
3月25日 
 大島邸保存へ請願書
市民団体会員
唐津市議会に


 唐津市が2010年度の取り壊しを予定している、旧唐津銀行創立者の大島小太郎氏 (1859~1947)の旧居・大島邸(唐津市西城内)について、保存を求める市民団体「大島邸を残す会」(辻いく子代表)の会員が24日、唐津市議会に保存を求めて請願書を提出した。
 提出したのは、同会会員で元松浦文化連盟会長の中里紀元さん(78)。請願書では取り壊しについて「唐津を誇る文化財を失うことになる」としており、中里さんは「邸内の貴重な茶室を大志小の児童たちに触れさせるなど、大島邸を教育にも生かしつつ残してほしい」と話している。
 大島邸は1879(明治12)年ごろに建てられた、木造平屋建ての邸宅。県が1996年にまとめた「近代和風建築総合調査報告書」では、県内有数の良質な邸宅として取り上げられている。だが、傷みが激しいことと、隣接する市立大志小学校の校舎の老朽化も進んでいることから、市は2010年度から2年間の計画で、大島邸を取り壊して鉄筋コンクリート3階建ての同小新校舎を建設する計画を立てている。現在開会中の市議会で審議している来年度一般会計当初予算案では、事業費として約4億3300万円を計上している。
朝日新聞  2010年
3月26日
 
大島邸保存の請願
唐津市議会不採択

 唐津市が2010年度の取り壊しを予定している、旧唐津銀行創立者の大島小太郎氏(1859~1947)の旧居・大島邸の保存を求める請願書について、市議会は25日の本会議で不採択とした。一方、大島邸の取り壊し事業を含む、来年度一般会計当初予算案は原案通り可決した。
 大島邸は、県の調査報告書で県内有数の良質な邸宅として取り上げられている一方、傷みが激しいことや、隣接する大志小学校の老朽化も進んでいることから、市は大島邸を取り壊し、同小の新校舎を建設する計画を立てている。
 不採択となった請願書は、元松浦文化連盟会長の中里紀元さん(78)が24日、提出していた。議会の審議では、請願書に対し「大志小校舎は耐震診断で、震度6強の地震で倒壊の危険性があり、早急な改築が必要」「大島邸はシロアリ被害が激しく、危険」といった反対意見が出された。
 
佐賀新聞 2010年
04月20日
旧大島邸、保存求める声相次ぐ 校舎建設で説明会
 明治期の歴史的建造物・旧大島邸の解体が論議を呼んでいる佐賀県唐津市の大志小の新校舎建設について、市は19日夜、周辺住民への説明会を開いた。耐震強化や校庭の拡大など教育環境改善のため、建設に理解を求める市に対し、参加者からは計画への疑問や、あらためて大島邸保存を訴える声が上がった。説明に納得できない一部住民グループは住民監査請求の準備を始めた。
 唐津市民会館で開かれた説明会には約100人が参加。市は築50年以上が経過し老朽化した現校舎の耐震化の必要性や、校庭が現在より1・5倍に拡張する計画概要を説明。大島邸の取り扱いについては、解体した内装材を一部新校舎に移築し一般開放する一方、写真や図面で記録し「将来の復元に備えたい」と理解を求めた。
 これに対し、これまで保存を訴えてきた住民らから「文化財としての価値をもう一度見直して」などの声や「新築ありきの計画ではなく、現校舎を耐震補強するなど財政負担の少ない方法を模索すべき」といった意見が出た。
 住民グループ「大島邸を保存する会」(松下麗会長)は「市の説明には納得できない」として、建設予算の差し止めを求める住民監査請求に向け、1000人を目標に署名活動を開始。事務局の山崎久美子さん(57)=同市坊主町=は「大島邸と校舎改築が共存できる道を探るべき」と話す。
 一方、市は5月から大島邸の樹木伐採や解体作業に着手、9月ごろから本工事に入り、2011年度完成を目指す。市教委は「すでに議会の承認を受け、必要な手続きは踏まえており、計画は予定通り進めたい」としている。
【写真】旧大島邸の保存を訴える声も上がった大志小の新校舎建設の地元住民説明会=唐津市民会館
 西日本新聞  2010/04/21  「旧大島邸残して」 市民団体が住民監査請求 唐津市
2010年4月21日 01:02 カテゴリー:九州 > 佐賀
 本年度での取り壊しが決まっている唐津市西城内の「旧大島邸」をめぐり、市民団体「大島邸を保存する会」(松下麗会長)が、「文化的価値の高い大島邸を取り壊す目的で事業費を支出するのは違法」として、公金支出差し止めを求める住民監査請求を近く唐津市に行うことが20日分かった。
 旧大島邸は、佐賀銀行の前身・唐津銀行の頭取を務めた大島小太郎の私邸。武家屋敷の面影を残す近代和風建築物として評価は高いが、隣接する大志小の校舎新築に伴い、所有者の市が邸宅を取り壊して新校舎を建てることが決まっている。
 解体は5月に開始予定。市は邸宅を復元できるよう図面で記録し、建具の一部は新校舎の資材として利用する方針だが、同団体は「一部を保存しても将来復元するのは難しく、邸宅は現状の姿で残すべきだ」と訴えている。また校舎の新築工事に対しても「現在の校舎への耐震補強工事で十分目的を達成できる」と指摘している。


 朝日新聞 2010年
4月21日
大島邸解体すれ違い
市民「壊したらおしまい」
市教委「部材の一部は活用」
唐津で地元説明会


 唐津市西城内にあり、武家屋敷の面影を残す明治期の近代和風建築「大島邸」。小学校の改築に伴って解体する話が持ち上がっており、市教委による地元住民への説明会があったが、市民の間からは「大島部は解体されたらおしまい」と保存を求める声が出た。市教委は「記録保存や、部材の一部を新校舎に活用したい」などと説明したものの、議論はすれ違いに終わった。 (田中良和)
 大島邸は、旧唐津銀行の創設者・大島小太郎(1859~1947年)の私邸で、1879~80(明治12~13)年ごろの建築とされる。敷地約5100平方㍍、木造一部2階建ての建坪約380平方㍍で、邸内には約360本の木が生い茂っている。客間、座敷、茶室などが武家屋敷の面影を残し、県が1996年にまとめた報告書では、県内有数の近代和風建築として取り上げられており、文化財的価値が高いといわれる。ただ、大島邸は文化財に指定されていない。
 解体は、隣接する大志小学校の耐震化などを目的にした改築に伴うもの。市の計画では、大島邸を解体して、その跡に鉄筋コンクリート3階建ての新校舎を2年計画で建てる予定だ。このための今年度の事業費約4億3300万円は3月議会で可決。市はすでに大島邸を買収しており、2010年度の取り壊しを予定している。
 大島邸を守ろうという市民の動きが出てきたのは、昨年11月から。約20人でつくる「大島邸を残す会」の辻いく子代表(61)は「大島邸は唐津に残っている唯一の武家屋敷で、木立も緑の空間として貴重。近くの高取邸、唐津神社、旧唐津銀行本店などとともに観光スポットになっている。大志小改築の設計を変更すれば、大島邸を壊す必要はない」と言う。
 19日夜の説明会には約120人が出席した。市教委は、大島邸の取り扱いについて「歴史的建造物として記録保存し、母屋の内装材を新校舎の『作法室』にそのまま移築する」などと説明した。これに対して、住民の間からは「大島邸を残すのか残さないのか。壊すのは大きな過ち」などの声も出たが、議論はかみ合わないままだった。
 市教委は、大志小改築をめぐる手続きは終わったとし、早ければ来月中旬にも改築工事の入札手続きに入る予定という。

 
 朝日新聞 2010年
4月22日
唐津・大島邸解体問題
住民監査請求へ
市民ら署名活動

唐津市西城内にある「大島邸」の解体をめぐる問題で、市民グループの「大島邸を保存する会」(松下麗会長)が市に対して住民監査請求を求めるための署名活動を始めたことが21日、わかった。同会は千人以上の署名を集め、27日ごろにも市監査委員あてに請求を提出したいとしている。
 同会によると、大島邸は、旧唐津銀行創設者の大島小太郎の邸宅で、武家屋敷の面影を残すなど文化的価値が高い。ところが、市は大島邸の解体と隣接する大志小学校の改築のために今年度から2年間に約12億7600万円の事業費を計上。「市の文化的財産を取り壊す目的での事業費の支出は、地方財政法に反する違法不当な行為」としている。
 「保存する会」は、同じ運動を続けている「大島邸を残す会」から分離して、3月上旬に結成し、会員は約20人。
 市は、大島邸解体と大志小改築のための今年度予算約4億3300万円が3月議会で可決、地元住民に対する説明会も19日に終えたとして、5月中旬にも工事の入札手続きに入りたいとしている。
 住民監査請求の動きについて、市教委は「請求の内容を十分見たうえで、対応を検討したい」としている。

 
 読売新聞 2010年
4月25日
明治の和風建築「旧大島邸」、保存求め市民動く…佐賀
 佐賀県唐津市西城内にある旧唐津銀行頭取・大島小太郎(1859~1947年)の私邸「旧大島邸」の保存を訴えている市民グループ「大島邸を保存する会」(松下麗会長、20人)は19日夜、住民監査請求をすることを決め、20日から署名活動を始めた。

 25日頃までに1000人分以上を集め、月末にも市監査委員に提出する予定。

 旧大島邸は1879、80年(明治12、13年)頃の建築。茶室を持ち、江戸期の住
宅の面影を残す近代和風建築とされている。隣接する大志小の校舎改築に伴って解体されることになり、3月議会で今年度の事業費として約4億3300万円の改築費が可決された。

 監査請求では、歴史的・文化的価値の高い旧大島邸を取り壊すための事業費の支出は、「地方公共団体の財産は常に良好な状態で管理する」と定めている地方財政法8条に違反すると指摘。大志小の耐震化は補強工事で目的を達成できるとして、事業費支出の差し止めを勧告するよう求める。請求が認められない場合は住民訴訟を起こすとしている。

 市は20日、市民会館で大志小改築に伴う住民説明会を開催。同校の校舎は市内で最も古く、児童の安全・安心の確保を図りたいとして改築の必要性を強調した。

 住民から「現在のままで耐震化した方が安く、旧大島邸も残せるので合理的。改築を白紙に戻して」などの意見が出たが、市は「旧大島邸は記録保存するので、予定通りやらせてほしい」と理解を求めた。
 西日本新聞  2010/04/28  「唐津市は旧大島邸を残して」
 1451人が監査請求 小学校舎新築差し止め要請

2010年4月28日 04:52 カテゴリー:九州 > 佐賀
 小学校の校舎新築に伴い本年度中の取り壊しが決まっている唐津市西城内の「旧大島邸」をめぐり、市民団体「大島邸を保存する会」(松下麗会長)は27日、新築工事に対する公金支出の差し止めを求める住民監査請求書を市監査事務局に提出した。請求人は1451人に上り、「旧大島邸を残してほしいという市民の思いに応えてほしい」と訴えている。
 旧大島邸は佐賀銀行の前身・唐津銀行の頭取を務めた大島小太郎の私邸。近代和風建築物として評価は高いが、隣接する大志小の校舎新築に伴い解体されることになり、3月議会で本年度の事業費約4億3300万円を計上した予算案が可決された。
 監査請求書によると、歴史的・文化的価値の高い旧大島邸を取り壊すために事業費を支出するのは、「地方公共団体の財産は良好な状態で管理し、効率的に運用しなければならない」と定める地方財政法に違反すると指摘。現校舎の耐震補強工事でも目的を達成できるとして、新築工事に対する事業費支出差し止めの勧告を求めている。
 市監査委員は今後、請求書を受理するかどうかを検討。受理すれば監査に入り、勧告や棄却などを決める。松下会長は「請求が棄却されればさらに署名を募って、旧大島邸の保存を求める条例を議会に求めたい」と、住民訴訟や坂井俊之市長のリコール運動も視野に入れて活動するという。
 市は5月中旬から旧大島邸の樹木伐採や解体作業に着手する予定。市教委は「議会の承認を受けている。工事は粛々と進めたい」としている。


 読売新聞  2010年
4月28日
江戸の面影「旧大島邸」、解体反対の市民が監査請求
 佐賀県唐津市の市民グループ「大島邸を保存する会」の松下麗会長ら1451人は27日、大志小学校(唐津市西城内)の校舎改築が違法不当な行為に当たるとして、公金支出の差し止めの勧告を求める住民監査請求書を市監査委員に提出した。

 隣接する旧大島邸が校舎改築に伴って解体されるため、その保存を求めている。

 監査委員は受理すると60日以内に結果を公表しなければならないが、同会は請求が認められない場合、市議会に同邸保存条例の制定を求めて署名活動をするなど、様々な方法で保存を求めていくとしている。

 旧大島邸は、旧唐津銀行頭取・大島小太郎(1859~1947年)の私邸で、1879、80年(明治12、13年)頃の建築。茶室も備え、江戸期の住宅の面影を残す近代和風建築とされている。大志小の校舎改築に伴って解体され、2011年度までに新校舎が建つ。市教委は約12億円の事業費を見込んでいる。

 監査請求では、大志小の耐震化は耐震補強工事(約4000万円)で目的を達成できると指摘。「最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」と定めた地方自治法2条などに反するとしている。

 活動開始から1週間で1400人を超える署名を集めた松下会長は「市民の熱い思いを感じた。請求が認められない場合は、住民訴訟、市長リコール、市議会解散なども視野に運動を展開していきたい」と話している。

 これに対して、市教委の大谷正広教育部長は「現時点では、予定通り5月中旬からしゅくしゅくと工事を進めたい」と語った。 
朝日新聞  2010年
5月12日


唐津市西城内の「大島邸」の保存を求めている市民グループ「大島邸を保存する会」(松下麗会長)は11日、新たに千人の署名を集めて市監査委員に住民監査請求書を提出した。同会は、先月27日にも1451人の署名を添えて同様の請求をしており、今回はその第2弾。監査委員事務局は「一括して審査したい」としている。
市は、老朽化した大志小学校の改築に伴って隣接する大島邸の解体を計画。今年度から2年間の事業費約12億7600万円を計上している。これに対して、保存する会は「市の文化的財産である大島邸を取り壊す目的の事業費の支出は違法」として、公金の支出差し止めなどを求めている。
市教委は「市民の動きは真摯(しんし)に受け止めたい。ただ、計画はすでに議会の議決を得ており、スケジュールはやや遅れているが、6月上旬には工事の入札の準備を始めたい」としている
 
 西日本新聞  2010/05/16 「旧大島邸」インタビュー
後世に残す「市民の宝


大島邸を保存する会会長
松下 麗氏

取り壊し避ける方法も

 小学校の新築工事に伴い、本年度中の解体が決まっている唐津市西城内の「旧大島邸」。3月議会で本年度の事業費約4億3300万円を計上した予算案が可決されたが、一部の市民は保存を訴え、市民団体が新築工事に対する公金支出の差し止めを求め、市に住民監査請求する事態にまで発展した。工事を進める市と反対活動を続ける市民双方の主張を聞いた。 (岩谷瞬)

-なぜ「旧大島邸」の保存を訴えるのか。
 「旧大島邸は佐賀銀行の前身・唐津銀行の頭取を務めた大島小太郎の私邸。1879、80年(明治12、13年)に建てられたとされ、武家屋敷の面影を残す近代和風建築物として歴史的価値は高い。市内で同様の建築物は他に見当たらず、市民の宝として後世に残すべきだ」
 -市は06年に同邸の劣化調査をし、現状での保存は困難と判断した。
 「今の同邸は腐朽が進み、シロアリ被害もあるが、『補修は可能』とする有識者もいる。同邸が現状のまま残れば管理を担当するNPO法人を我々で設立する。使用料や見物料でシロアリ駆除や補修を行うつもりだ」
-築53年の大志小校舎は老朽化で耐震性に問題があるという。工事によって校庭も拡張される。
 「新校舎の建築には反対しない。だが居ながらの耐震補強工事や今の大志小の学校用地内での新校舎建設など、同邸を解体しない方法もあるはず。少子化で児童数が減っていく中、校庭を広げる必要性も感じられない」
 市は将来復元できるよう図面で記録し、建具などの部材も保存する。庭に生える樹木は選別し、一部は学校内に残す計画だ。
 「市土地開発公社は98年、『文化財及び教育用地』として同邸を買収した。文化財として買収したのなら現状での保存が当然で、『取り壊すが図面で記録し、部材は残す』という市の計画は詭弁にしか聞こえない。また庭も含めての『旧大島邸』と考えており、緑地保存の観点からも樹木は可能な限り残してほしい」
-4月27日、市に対して新築工事に対する公金支出の差し止めを求めて住民監査請求した。
 「3月議会で本年度の新築工事の事業費約4億3300万円を計上した予算案が可決された。目前まで迫った同邸の取り壊しを止める苦肉の策として、住民監査請求を選択した」
-請求人は1451人に上った。
 「当初は遅きに失したかと思ったが、多くの市民から賛同を得て素直に驚いた。11日には追加で千人分の請求書を提出した。請求人の数は民意の表れ。市は絶対に無視してはいけない」


唐津市教育副部長
田島 龍太氏

記録保存や公開展示を

-昨年末から「旧大島邸」の解体中止を求めて、市民団体が相次いで要望書や住民監査請求書を提出した。市民の声をどう受け止めているのか。
「文化財保護に携わる者として、市民が文化財を残そうと行動することはうれしい。だが1998年に『文化財及び教育用地』として市土地開発公社が旧大島邸を買収し、工事に向けて市議会で議論を重ねてきた。老朽化した今の校舎は耐力度に問題を抱えている」
-校舎の新築ではなく、居ながらの耐震補強工事で対応できないのか。
 「昨年3月の耐力度調査で『震度6の地震で倒壊の恐れ』との結果が出た。校舎は築53年と市内の小中学校で最も古く、耐震補強工事では焼け石に水。照明や風通しなどの問題もあり、手狭な校庭の拡張も含めて環境整備が必要だ」
-同邸の保存状態はどうだったのか。
「06年に市で劣化状況を調査し、全体にシロアリ被害があった。一部分は崩れ落ち、茶室も屋根が腐朽していた。財政面からも現状での保存は困難で、校舎新築工事も急務。工事費や児童への影響も考え、同邸を解体、跡地に新校舎を建設することが良いと判断した」
-文化財として買収した建築物を解体することは許されるのか。
 「94、95年に、県が近代和風建築の総合調査で『武士住宅の面影を残す邸宅で歴史的建造物』と報告した。市も歴史的価値を認識しており文化財と表現したが、すべての建造物を指定文化財として保護できない。その中で、可能な限り保存する方法を探った」
-具体的には。
「将来復元できるように図面で記録する。建具や欄間、瓦、庭の石塔などは残し、市近代図書館などで展示する。部材は一部、新校舎内に設ける茶室に活用する。同邸の門はそのまま新校舎の校門付近に残したい」
-庭には約360本の樹木が生い茂っている。
 「同邸が建築されたとされる明治時代の庭は芝生に低木が主流で、今生えているすべての樹木が庭園を構成するものとは考えていない。一方で緑地保存の観点から樹木の保存は重要だ。木々の状態を見て選別し、状態の良い木は学校内に残すか別の場所に移植したい」

佐賀新聞 2010年
05月21日
「今の魅力を観光資源に」 唐津「まちづくり」シンポ

 唐津の文化や景観を生かしたまちづくりを探る公開シンポジウムが20日、唐津市の唐津商工会議所で開かれた。長野暹佐賀大名誉教授や商工観光関係者らが、唐津くんちや歴史的建物などの魅力を提示。足元を見つめ、市民自らが個性豊かなまちの未来像を描いていく大切さを提言した。
 基調講演で長野名誉教授は「唐津には日本人特有の自然と共生する心を表現した建物や文化がある」と指摘。市が解体の計画を進めている旧大島邸もその一つとして、「壊せば背景にある心や物語も失う。後世に残すことで文化都市として成長できる」と訴えた。
 パネル討論では、太田善久唐津商工会議所会頭や市の担当者、建築家ら5人がそれぞれの立場から意見交換。同市出身で日本近代建築の祖とされる辰野金吾が生まれ、唐津くんちや唐津焼をはぐくんだ独特の歴史や風土に触れ、今ある魅力を観光資源として育てていく必要性を説いた。
 旧大島邸の保存を求める市民らでつくる「城内を考える会」(辻いく子代表)が主催。市民や自治体関係者ら約140人が参加した。

【写真】唐津の潜在的な魅力を示し、これからのまちづくりを考えた公開シンポジウム=唐津市の唐津商工会議所

 毎日新聞  2010年
6月1日
 旧大島邸:保存へ 
「残す会」が1688人分の署名簿を市に提出

 唐津市西城内の和風建築物、旧大島邸の保存活動に取り組む「大島邸を残す会」(辻いく子代表)が31日、1688人分の署名簿を添えて保存・活用の要望書を市に提出した。昨年12月、今年3月に続いて3回目。計6752人分となった。
 佐賀銀行唐津支店とまいづるショッピングプラザで大島邸の写真展を開催。この時に来場者が署名した。
佐賀新聞 2010年
06月09日
旧大島邸 質の高さ評価  元文化庁審議委が視察

 元文化庁審議会委員で日本建築史に詳しい西和夫神奈川大名誉教授(71)が8日、唐津市西城内の大志小の新築に伴い、解体される予定の旧大島邸を視察した。西教授は「非常に質の高い建物」と評価し、「どのような方法で残すことができるか真剣に検討すべき」と話した。
 市民グループ「大島邸を保存する会」が招いた。西教授は客間や茶室などすべての部屋を見て回り、改築の有無や建具などを入念に調べた。
 ケヤキの一枚板でつくられた床の間や、丁寧に木目をそろえた天井に関心を示し、「建材を吟味しており、大工の技術も素晴らしい。価値としては旧高取邸(国指定重要文化財)と比べても遜色(そんしょく)ない」と感想を語った。
 同会は大志小の建設費の差し止めを求め、住民監査請求している。市は請求が却下されれば解体を進める方針を示しており、西教授は「建物をなくせば大島家の歴史も失う。最低でも移築などして価値を守らなければならない」と話した。
【写真】建具やふすま絵などを入念に調べる西和夫名誉教授=唐津市の旧大島邸

(谷口大)
 読売新聞  2010年
6月9日
神奈川大名誉教授
旧大島邸を調査
     「貴重な建物」


 唐津市西城内の「旧大島邸」の保存問題で、元文化庁文化審議会委員の西和夫・神奈川大名誉教授(71)が8日、邸宅内を調査し、「明治の住宅は全国的に数が極めて少なく、住宅の歴史を知るうえで貴重」として保存へ向け行政とともに知恵を出すよう求めた。
 日本建築史が専門の西名誉教授は、市民グループ「大島邸を保存する会」の求めに応じて訪問した。メモを取りながら邸宅内を調べ、8畳の客間の床がケヤキの一枚板製で、天井板の木目もそろっていることなどを指摘。「材料に凝っており、大工の技術もいい建物で価値が高い」と評価した。
 そのうえで、唐津の近代化の礎を築いた旧唐津銀行頭取・大島小太郎(1859~1947年)の旧居であることから、「建物を取り壊すことは、まちの歴史そのものを壊すことにつながり、とても疑問だ」と語った。
 旧大島邸は、隣接する大志小学校の校舎改築に伴って解体が決まっている。
 毎日新聞  2010年
6月9日
旧大島邸:保存を切望 西・元文化審委員が視察

 文化庁文化審議会の元委員で神奈川大名誉教授の西和夫さん(71)が8日、唐津市西城内に残る明治期の和風建築物・旧大島邸を視察し「日本住宅の歴史の中で重要な存在」として何らかの方法で残すべきだと主張した。
 市立大志小の移転により取り壊されようとしている旧大島邸について、西さんは「傷んでいるが非常によい建物。玄人好みの材質が使われ、大工の技術も素晴らしい。有形登録文化財の価値がある」と絶賛し、保存の方向で解決策を探ってほしいと切望した。
 保存場所については「ここに残すのがベストだが、移築や引き家などの可能性も検討すべきだ」と助言した。
【原田哲郎】
西日本新聞 2010/06/10 ぴーぷる
わが町の魅力を知ろう

全国各地の文化財の調査活動に携わってきました。長崎県平戸市で旧城下町地区の町並み調査に取り組んだ際、地元住民が「平戸に古い町並みなんてありませんよ」とため息混じりに漏らしたことに驚きました。平戸は港町と城下町の歴史が複雑に絡んだ町並みですが、住民は見慣れていてその価値に気付かない。文化財の保存と同じく、住民がわが町の魅力を知ることも大切なのだと知りました。
 唐津にも歴史を物語る建物が残っています。市民の皆さん、ぜひ一度市街地をぶらぶら歩いてみてください。きっと魅力あふれるわが町のとりこになりますから。   (横浜市)
 神奈川大学名誉教授
  西 和夫さん(71)
 朝日新聞 2010年
6月10日 
 大島邸保存「行政と協力を」
 元文化審委員、市民グループに提言


 唐津市西城内にある「旧大島邸」の解体計画に反対している市民グループ「大島邸を保存する会」(松下麗会長)は、元文化庁文化審議会委員の西和夫・神奈川大学名誉教授(72)を招いて「語ろう会」を8日夜に市内で開いた。大島邸を見学した西さんは「唐津市の歴史を子どもたちに伝えるためにも残すペき」と主張。今後の運動の進め方については「行政と協力し、運動する側も一枚岩になることが必要」と提言した。
 西さんは、大島邸の建設年代について、これまでいわれてきた1879~80(明治12~13)年よりはやや下った明治中期と推定。「すぐれた材木を集めて腕のいい大工が造った。全国でも数少ない貴重な建物」と高く評価。旧唐津銀行創立者の大島小太郎の私邸であったことから、「唐津の歴史を次の世代に伝えるためにも子どもたちに見せたい」と語った。
 西さんは、現在地に残すことができない場合の次善の策として、建物をそのまま別の場所に移動させる「引き屋」や、いったん解体して別の場所に作り直す「移築」などの方法を紹介。市教委が説明している「将来、復元できるよう部材を保存する」という「記録保存」については、「再現するためではなく、壊すためのもの。まやかしの言葉」と批判した。
 語る会には約50人が参加。福岡市内から来たという女性は「運動する側もただ、反対するだけでなく、代案を出すべきだ」と主張した
読売新聞 2010年
6月12日
近代化を進めた先覚者の遺産
貴重な和風建築、旧高取邸に匹敵
旧大島邸保存の声強く
唐津市「財政厳しい」


唐津市西城内の旧唐津銀行頭取・大島小太郎(1859~1947)の邸宅だった旧大島邸*は隣接する大志小学校の校舎改築に伴って解体が決まったものの、保存を求める市民らの声はむしろ大きくなっている。背景には、近代和風建築という建物の貴重さに加え、唐津近代化の礎を築いた大島の歴史物語が消えていくことに、納得いかない市民感情がある。(山田和男)
大志小校舎は1955~57年に建てられ、市内の小中学校でも最も古い。耐震診断では震度6強の大規模地震で倒壊の危険性が高いとされ、市教委は「早急な改築で安全、安心な教育環境を整備する必要がある」と強調。運動場を広くとるなどのために隣接の旧大島邸の解体を決めた。
 「今頃になって、保存と言われても。我々はここ10年、文化財的価値を議論してきた。すでに結論が出ている」。市議の一人は首をかしげる。確かに、昨年12月議会で学校用地として取得する費用約5億2000万円を盛り込んだ一般会計補正予算案が、今年3月議会で邸宅の解体費など今年度の関連予算約4億3000万円を含む当初予算案が可決された。市民が同月末に提出した保存を求める請願も不採択とし、市議会は3回意思を示している.
 それにもかかわらず現地保存へ向けた市民グループの運動は広がりをみせる。関連予算に関する住民監査請求を提出し、今月26日までに結論が出る。学識者らで構成する建築史学会でも保存へ向けた動きがある。
 市側は、文化財的価値について一定程度認めているが、「建物が長年放置され、傷みがひどい」とし、保存に相当な費用が必要で、厳しい財政状況下で困難との判断だ。将来復元できるように記録保存するとともに、文化的価値の高いふすま、欄間などは残し、公開展示する方針。
 だが、今月8日に旧大島邸を現地調査し、9日に国重要文化財の旧高取邸(唐津市)を視察した元文化庁文化審議会委員の西和夫・神奈川大学名誉教授(71)(日本建築史)は「旧高取邸と比べて遜色なく、国重要文化財クラスの価値があり、検討しては」と評した。
 大島小太郎は、旧唐津銀行を創立したのをはじめ、現在のJR筑肥線や道路網を敷設し、港も整備した。「唐津電灯」を設立、今から100年前に唐津へ電灯を初めてともしたとされ、地域の都市基盤を整備した先覚者だ。
 「大島邸を残す会」の代表の辻いく子さんは「物語あふれる地元の代表的人物の邸宅をわざわざ壊す必要はない。むしろ、観光スポットとして活かしていくことこそ大切」と指摘。西名誉教授も「まちの歴史を語る際、最も大事な人。壊してしまうのは疑問だ」と語り、保存へ向けて知恵を絞ることを臨む。
 市側は、用地の確保に向け、大志小南側の民有地の購入を検討したとするが、それは約10年前のこと、その時に断られたままという。購入できれば、旧大島邸を解体せずに済む可能性がある。
 ここまで問題がこじれた以上、市側は①学校南側の民有地の活用②旧大島邸の価値③歴史上の人物、大島の位置づけ--などを再検討し、その結果を住民に説明すべきではないだろうか。」

*旧大島邸 敷地は約5000平方メートルで、建物は木造一部二階建てで延べ床面積約380平方メートル。県教委が1996年に報告した「県の近代和風建築」では1879.80年(明治12.13年)頃に建てられ、「武士住宅の面影を残す県有数の良質の大邸宅」としている
佐賀新聞 2010年
06月15日
大志小改築見直しを
  一部保護者市に要望書


 唐津市が老朽化のため新校舎の建設計画を進めている大志小について、一部の保護者が14日、計画見直しを求める要望書を市に提出した。
 要望書では、現計画はN字型に曲がった複雑な設計で職員室から教室が見えず「児童の安全が保てない」とし、PTAの一部役員だけでなく、広く保護者や地域住民の意見を反映させた計画に見直すよう求めた。
 また、2011年度内の新校舎完成以降、自校方式の給食をセンター方式に変更することについても「校区内での十分な議論と説明をした後で決定すべき」と訴えた。
 市教委は「決して一方的ではなく、校長や保護者の意見を取り入れた計画であり、今後も学校を通じて周知を図っていきたい」としている。
 新校舎建設では、市が建設予定地にある明治期建造の「旧大島邸」を取り壊す方針で、住民グループが現状保存を求めている。  (谷口大)
読売新聞 2010年
6月15日
旧大島邸の復元に含み
唐津市長「検討の場設けたい」


唐津市西城内の大志小改築に伴って解体されることが決まっている「旧大島邸」の保存問題について、坂井俊之市長は14日の市議会一般質問で、「保存する部材の活用について、市民を含め幅広く検討する場を設けたい」と答え、解体するものの将来の復元に含みを持たせた。
 大西康之議員が、5月から解体される予定だった旧大島邸の工事が手つかずとなっている理由をただしたのに対し、大谷正広教育部長は「住民監査請求(4月27日)が出ており、住民感情に配慮した対応を選択した」とし、監査委員の決定を待つとした。
 大西議員は3月議会の予算議決の際につけた、「将来復元できるような記録保存に努め、解体時の部材は慎重に取り扱う」との付帯意見の扱いについて質問。大谷部長は「慎重な解体をしたうえで、今後どうすべきか検討したい」とした。市長は生かし取りの範囲を拡大するなど具体的な解体方法を検討しており、解体でこれまで分からなかった建築年代や増築の経過が分かるのではないかとした。
 これに関連して、大志小の保護者の一人は同日、市と市議会に、「同小の改築計画では保護者・地域住民らの意見収集・反映に努め、より安全な計画への見直しを求める」などとした文書を提出した。(山田和男)

(2010年6月16日 読売新聞)
旧大島邸保存「限界ある」 唐津市
 唐津市西城内の大志小改築に伴って解体が決まっている「旧大島邸」の文化財的評価について、15日の同市議会一般質問で議論が交わされた。市側は貴重な建物との認識を示したものの、「すべての文化財を指定して残すのは限界がある。記録保存し、部材の慎重な取扱をする」と答えた。
 志佐治徳議員が、県教委が県内761軒の近代和風建築を調査してまとめた報告書「県の近代和風建築」(1996年)などを基に質問。報告書では旧大島邸について「県内有数の大邸宅」とされたが、「それを超える県の評価があるのか」と尋ね、市側は「ない」とした。
 市側は、2月の市文化財保護審議会で、旧大島邸の保存の声など経過を報告した際、委員の中から「惜しい」との意見が出たとした。また、高い評価をしている県から問い合わせや指導もなかったことを明らかにした。」
読売新聞 2010年
6月16日
旧大島邸保存「限界ある」 唐津市

 唐津市西城内の大志小改築に伴って解体が決まっている「旧大島邸」の文化財的評価について、15日の同市議会一般質問で議論が交わされた。市側は貴重な建物との認識を示したものの、「すべての文化財を指定して残すのは限界がある。記録保存し、部材の慎重な取扱をする」と答えた。
 志佐治徳議員が、県教委が県内761軒の近代和風建築を調査してまとめた報告書「県の近代和風建築」(1996年)などを基に質問。報告書では旧大島邸について「県内有数の大邸宅」とされたが、「それを超える県の評価があるのか」と尋ね、市側は「ない」とした。
 市側は、2月の市文化財保護審議会で、旧大島邸の保存の声など経過を報告した際、委員の中から「惜しい」との意見が出たとした。また、高い評価をしている県から問い合わせや指導もなかったことを明らかにした。」
西日本新聞  2010年
6月17日
建築史第一人者が「旧大島邸」視察
「解体は歴史を壊す」
市、市民一体の保存要望


 日本建築史の第一人者、神奈川大学の西和夫名誉教授が8日、唐津市を訪れ、小学校の新築に伴い本年度中の解体が決まっている「旧大島邸」を視察。「全国的に明治時代の住宅は少なく、建物としての質も高い」とし、市と市民が一体となって保存への道を探るよう求めた。
 同邸の保存を求める市民団体「大島邸を保存する会」(松下麗会長)が招待した。西教授は邸宅を隅々まで周り、メモを取りながら部材の状態などを調査。一枚板で作られた床の間や木目がそろった天井を「建築者の技術が高く、建材も素晴らしい」と評価した。
 視察後は懇話会が開かれ、団体メンバーら約50人が参加。旧大島邸は佐賀銀行の前身・唐津銀行の頭取を務めた大島小太郎の私邸であることから、「唐津を象徴する建物を解体するのは、まちの歴史を壊すことに繋がる。市と市民が協力して、保存する方法を考えてほしい」と話した。
    (岩谷瞬)


唐津市の旧大島邸解体
「現状のまま保存を」
 建築史学会、市などに要望


小学校の新築に伴い、本年度中の解体が決まっている唐津市西城内の「旧大島邸」について、建築史学の研究者らでつくる「建築史学会」(会長・吉田鋼市横浜国立大教授)は17日、唐津市、市教委、市議会に対し、同邸の保存を求める要望書を提出した。
 同学会は、建築物の歴史や文化財保存を専門とする大学教授や研究者ら約600人で構成。元会長の西和夫神奈川大名誉教授(71)が8日、旧大島邸を視察し、部材の質や建築技術を高く評価。その後、学会員と相談し、学会の総意として要望書を提出するに至った。
 この日は西教授と学会員の藤原惠洋九州大大学院教授が市を訪れ、吉田勝利副市長らに要望書を提出。西教授は「唐津の歴史を語る上で貴重な建築物で、建築年代などの調査も十分にされていない。記録保存ではなく、現状のまま保存レてほしい」と主張。吉田副市長は「貴重な建物だと市も承知している。できる限り広範囲で保存し、市民を交えた議論の場なども設けたい」と話した。
 
朝日新聞 2010年
6月18日
大島邸保存へ要望書
 建築史学会「唐津の歴史語る」


 唐津市の「旧大島邸」について、全国の研究者約600人でつくる建築史学会(会長=吉田鋼市・横浜国立大学教授)が17日、保存を求める要望書を坂井俊之市長らあてに提出した。同学会はこれまで、大阪証券取引所(大阪市)の立会場があったビルなど貴重な近代建築の保存を求める活動をしており、元会長で文化庁文化審議会委員も務めた西和夫・神奈川大名誉教授(71)が市役所を訪れ、吉田勝利副市長に要望書を手渡した。
 要望書は、旧大島邸の建築史上の価値について「明治中期の大規模、上質な住宅」と高く評価。中でも、旧唐津銀行創立者の大島小太郎(1859~1947年)の自邸だったことに着目。西さんは「唐津の歴史を語るうえでも、小太郎の住んでいた空間の保存は欠かすことができない」と述べた。
 建物については「傷んでいるので一見、だめなように見えるが、構造的にはしっかりしている。手を入れさえすれば保っていける」と述べた。また、市立近代図書館内にある「大島家文書」の分析など建物に対する研究が不十分と指摘。時間をかけて検討して保存するかどうかの結論を出すよう要望した。
 西さんは8日に旧大島邸を見学後、保存を求める要望書の提出を学会に働きかけ、隣接する大志小学校の改築に伴って大島邸の解体が始まる前にと要望書を提出することを決めたという。
 吉田副市長は「解体時に保存することになる部材などの活用について、市民を含めて幅広く意見を聞きながら検討する場を設けたい」との坂井市長の6月議会での答弁を説明したが、解体の方針は変えなかった。
読売新聞 2010年
6月18日
旧大島邸
建築史学会「現地保存を」

唐津市に要望 歴史上の価値強調

 唐津市西城内の大志小改築に伴って解体が決まっている「旧大島邸」について、元文化庁文化審議会委員の西和夫・神奈川大名誉教授(71)らが17日、市役所を訪れ、建築史学会名で保存を求める要望書を手渡した。同学会が建物の保存を要望するのは異例という。
 要望書では「建築史学上きわめて貴重な建築。かけがえのない文化遺産を後世に継承するように深甚なる配慮を求める」とした上で、「保存活動に際して可能な限り協力と支援をする」としている。
 建築史上の価値について①明治中期の大規模かつ極めて上質な住宅②吟味した上質の木材を使用し、明治の優れた住空間をつくり出している③茶室「敬日庵」は当時の茶の文化の高さを示す-など5項目を挙げている。
 対応した吉田副市長は貴重な建物との認識を示し、「これまで一部を生かし取りして記録保存するようにしていたが、生かし取りを広範囲にするなど解体の見直しを図っている」などと答えた。
 これに対し、西名誉教授は「記録保存は、建物を保存するものではない」と現地保存を求めた。小学校改築と旧大島邸保存の両立について「何とか知恵を出してせないか」と尋ね、図書館所有の大島関連の文書などを分析して、行政と価値を共有したい考えを示した。
 要望後の記者会見で西名誉教授は「鉄道敷設や港整備など多方面で活躍した大島小太郎という歴史上重要な人物の自宅をつぶして、唐津の歴史が語れるのか」と解体に疑問を呈した。
佐賀新聞 2010年
6月18日
旧大島邸現地保存 建築史学会が唐津市に要望
 小学校新築に伴う解体の賛否で揺れる唐津市の旧大島邸について、全国の研究者でつくる建築史学会(会長・吉田鋼市横浜国大教授、600人)は17日、現地保存を求める要望書を市に提出した。

 要望書は「鉄道敷設や港整備などで唐津の発展に貢献した大島小太郎の功績を知る上で欠かせない」「上質の木材を使用した大工技術で明治の優れた住空間を作り出している」など、5項目にわたる同邸の建築史上の価値を挙げている。

 同学会元会長で8日に大島邸を視察した西和夫神奈川大名誉教授の見解を踏まえ、学会内で論議し要望書をまとめた。吉田勝利副市長に要望書を手渡した西名誉教授は「校舎建設と大島邸保存が両立できるよう知恵が絞れないか。市は記録保存をするというが、解体してしまえば保存とは言えない。学会として保存活用に協力したい」と訴えた。
毎日新聞  2010年
6月18日
唐津・大志小:改築見直しを 市民団体が要望書 /佐賀

 唐津市立大志小新校舎の改築計画で、市民団体が14日、市に対し改築計画の見直しの要請文書を提出した。

 文書は「保護者や地域住民の意見集約・反映に努め、より安全な計画へ見直すこと」「学校給食方針は、県食育計画に基づき市食育計画を策定した上で、校区内で十分な議論と説明をして決定すること」と求めている。

 市民団体は、校舎の構造が複雑で、児童に目が行き届かないなど安全面に疑問や不安があると主張している。

毎日新聞  2010年
6月19日

旧大島邸:建築史学会、唐津市に保存要望 /佐賀

 唐津市西城内に残る明治期の和風建築物・旧大島邸の解体問題で、建築関係の研究者らで構成する建築史学会(吉田鋼市会長、600人)が17日、同邸を保存するよう市に求める要望書を提出した。
 要望書は、旧大島邸の建築史上の価値について「唐津銀行を創設するなど唐津の歴史上重要な大島小太郎の自邸で、その功績を知る上で欠くことができない」などと訴えている。
 学会元会長の西和夫さん(71)=神奈川大名誉教授=が代表として訪れ、吉田勝利副市長に手渡した。吉田副市長は「貴重な建物であることは十分認識している。保存活用について検討する場を設ける方向で考えている」と答えた。【原田哲郎】

佐賀新聞 2010年
6月20日
 
日曜討論

基調講演
佐賀大名誉教授長野 暹さん

歴史的建造物残すべき

 いま世界は大きく変わってきている。大量生産、大量消費の時代はもういいのではないか。そういう考え方が広がり、循環型の社会体系に変わってきた。時代が求めるのは心のゆとりや癒やし。日本にはそれを満たす輝かしい文化がある。
 九州・山口の近代化産業遺産群に佐賀県が申請した高取邸は暫定リストから落ちた。その背景には世界遺産の考え方が変わってきたことがある。素晴らしい建物があるだけではなく、守り育てる人がいるか。それを維持し、保証する地域の文化が連続しているか。人々の心に染みるものがあるか。それが問われた。
 心は文化が守り育てるもので、その心は言葉や建物など「物」として表れる。日本文化のキーワードは「わび」と「さび」。端的に表すのが木造文化だ。その静けさの中に素晴らしい文化発展の要素が含まれ、それが日本人の心に染みる。
 市内に残る旧大島邸も同じだ。あの建築様式は日本人の心の象徴で、世界に誇るべき素晴らしい癒やしの文化だ。仮に写真や記録で残したとしても、日本人の心は伝わらない。心は「物」があることで初めて証明されるからだ。
 旧大島邸の茶室には京都で培われた繊細な技術が施されているといわれる。建物がなくなれば、その技術も、職人がどういういう気持ちで建てたのかも分からなくなる。まさに文化そのものが消えてしまうのだ。
 旧大島邸の解体は子孫に対する犯罪ともいえる。日本の文化を伝えるものを壊す必要がどこにあるのだろうか。日本人が世界に誇ろうとしているものをなぜ残そうとしないのか。いままさにそれが問われている。
 行政が一度解体を決めたとしても、その価値に目覚め、後世に残そうと市民が立ち上がれば、唐津は世界に誇れる観光都市になれる。日本の文化を伝え残す行動こそが、世界の時代の先端を行くことにつながる。

観光都市・唐津の未来像考える
 観光都市・唐津の未来像を考える公開シンポジウムが、唐津市で開かれた。唐津くんちなどの伝統によって培われた独特の地域性や明治期の歴史的建造物が残る唐津。学識経験者や商工観光関係者らが、それらの資源を活用した観光戦略や住民主体のまちづくりの必要性について語った。要旨を紹介する。

パネリスト
落合 裕二さん(唐津市商工観光部長)
太田 善久さん(唐津商工会議所会頭)
中村 享一さん(建築家・日本建築家協会環境行動委員)
長野  暹さん(佐賀大名誉教授)
コーディネーター
三原宏樹さん(NPOまちづくり研究所理事長)


松原再生の手法注目 落合
守り育てた文化魅力 長野
物が消えれば歴史も 中村
良いところ掘り下げ 太田


パネルディスカッション

三原 それぞれ思い描いている唐津像を教えてほしい。

中村 建築物と武士道が一体化された状態で残っている数少ない都市。その独自性をうまく利用すれば、観光資源以上の重要な意味を見いだすことができる。

太田 城や海岸、工芸品、祭りに加え、食もある。観光都市として売り出すには最適のまちだ。

落合 観光客から見た唐津の魅力は伝統、歴史、自然、食、さらに福岡やアジアとの距離感などが挙げられる。合併後は旧郡部の観光資源も加わった。その要素をいかにフォーカスして紡いでいくかが問われている。

三原 唐津には独特の観光資源がある。あらためて素晴らしいところは。

長野 殿様の文化がそのまま伝わるのではなく、そこに住んでいる人々の文化が漂っているところ。それをずっと大切に守り育ててきたことが一番の魅力だろう。

中村 日本を代表する建築家の辰野金吾、曽禰達蔵、村野藤吾がなぜここで生まれたのか。唐津の風土が大きく影響していると思う。特に村野の建築には唐津の風土と密接な関係を感じる。城や堀の周辺で育った生活体験が、デザインという形で開花したように、彼らを生んだ唐津の土壌を評価すべきだ。

太田 今春開校した早稲田佐賀中高一貫校に注目したい。早稲田大の開設にかかわった大隈重信や竹内明太郎の意思を受け継ぎ、将来を担う優秀な人材が輩出されることを期待する。早稲田に負けまいと、地元の教育者が切磋琢磨する環境が醸成されたことも特筆すべきだろう。
落合 唐津くんちを例にすれば、長い歴史の中でつくり上げた祭りの組織、コミュニティーがある。これはよそでは決してまねのできない、簡単にはつくられないもので、唐津固有の財産だと言える。

三原 唐津には独特の祭りや文化、歴史、ストーリーがある。難しいのはそれらをいかに利活用していくかだ。官民が一体となって同じ理想像を描きながら地域資源を生かしていくためにはどうすべきか。
長野 祭りや町民文化を通じて人々の連携ができた。連携を促す集合的なものがあれば人々の心がまとまる。例えば旧大島邸や高取邸を守り伝えていくことで連帯感が生まれる。佐賀の本丸歴史館も一度壊したが、再建し、多くの人たちが本物を求めてやって来るようになった。伝統を守り、発展させていく人が地域にどれだけいるかが問われている。

中村 形ある物は多くのメッセージを与えてくれる。旧大島邸も建物があるからこそ大島小太郎の人間関係が後世に伝わる。彼が高橋是清に習い、そこに辰野金吾もいた。なぜ辰野があの場所に旧唐津銀行を設計したのか。そこには初代頭取の小太郎も関係しているはずだ。そういう物と人との関係が一緒にあるのが歴史。物がなくなれば歴史も同時に消えてしまうことを考えてほしい。

太田 ないものねだりではなく、持っているものを生かす。他のまねをしても完ぺきなものはできない。唐津の良いところを深く掘ってつなげていくことが大切だ。

落合 資源を守るという観点で考えると、虹の松原の保存再生事業をどう進めていくかに注目したい。松原に広がりつつある雑木林を土木工事で取り除いても、すぐ元に戻る。白砂青松を取り戻すには地道に松葉かきを続けていくことこそが必要で、それを永続的にやっていくには行政と市民が協力して取り組んでいかなければならない。

三原 唐津の未来像を考えることは同時に、私たちの足元を見つめ、固めていくことにほかならない。最後に唐津のまちづくりへの提言を。

長野 すでに唐津のまちづくりへの一歩は始まっている。行政主体ではなく、市民が企画したこのシンポジウムがまさにそうだ。歴史や文化を守り育てていこうとする気運をいかに広げていくかが問われている。

中村 30年前と今を比べたとき、果たして好ましい展観に変遷してきたのかを顧みることで未来が見えてくる。大量消費の時代を追いかけるのか、真に豊かな都市像とは何なのか。ここに住む一人一人が考える時に来ている。

太田 市と商工会議所による第三セクターのまちづくり会社「いきいき唐津」ができ、中心街活性化の一歩を踏み出した。これをモデルケースに、にぎわいの創出につなげていきたい。市民も「まちは自分たちでつくる」という気概を持つことが大切だ。

落合 観光産業の発展は役所が主導するだけではうまくいかない。市民主導のうねりをいかにサポートしていくか。それが行政の役どころであり、腕の見せどころだ。

三原 唐津の将来像は行政に任せきりでは描けない。ここにいる皆さんが「10年後、100年後のビジョンは自分たちでつくる」との気持ちで立ち上がってほしい。


記者の目
行政主導から住民主体へ
 シンポジウムを企画したのは、近隣小学校の新築に伴い、解体が予定されている旧大島邸の保存を訴える地元の主婦たちだった。行政主導ではなく、住民主体でまちづくりを考える-。そんな気運の高まりを感じた。
「城内に残る歴史的な建物は旧高取邸だけ。城下町の風情は薄れていくばかり」。主婦の一人はまちの変遷を嘆く。旧大島邸の保存に力を注ぐのも、かねてから古き良き町並みが消えゆく危機感があったからだという。主婦たちが集めた署名は延べ6千人にのぼる。
 一方、市は「議会で議論を尽くした」として、その声に耳を傾ける姿勢は見受けられない。市議会では過去に保存活動がなかったことも取りざたされ「今さら声を上げても遅い」という雰囲気を感じた。だが主婦たちは「地域への説明さえなかった」と意思決定の手続きに疑問を投げかける。
 老朽化した小学校の建て替えは不可欠だが、旧大島邸をめぐる市民の訴えは 「開発」や「発展」の名の下、繰り返されてきた公共事業の在り方にも一石を投じている。(谷口大)

朝日新聞  2010年
6月21日 
「一部生かし取りをして、あとは記録保存…」
市の用語に専門家異議
旧大島邸問題市民「辞書にない」


 「生かし取り」「記録保存」-。唐津市西城内にある「旧大島邸」の解体を巡って、市当局が使う言葉のあいまいさに建築の専門家から異議が出ている。解体には、市民グループが2451人の署名を添えて解体工事のための公金支出差し止めなどを求めて住民監査請求を出すなどしているが、説明の言葉のわかりにくさも、「保存か解体か」の論議の混迷に拍車をかけている。(田中良和)
 「これまでは一部生かし取りをして、あとは記録保存に努めるということだったが、今回、できるだけ広範囲に生かし取りができるよう、解体について見直しを図っている」
 旧大島邸の保存を求める建築史学会の要望書を持って17日に市役所を訪れた元文化庁文化審議会委員の西和夫・神奈川大名誉教授(71)に吉田勝利副市長が説明した言葉だ。これに対して、西さんは「記
録保存は記録を保存するのであって建物を保存するものではない」と、建築の専門家としての見解を述べた。
 市は旧大島邸解体を巡って4月に開かれた地元住民に対する説明会でも「生かし取り」「記録保存」の二つをキーワードに説明。市議会答弁でもこの言葉が登場。西さんは「記録保存という言葉はあるが、よく知らない人には建物が保存されるように受け取られる恐れがある」と語る。
 「生かし取り」とは-。西さんと一緒に要望書を手渡した藤原惠洋・九大教授(54)は17日夜、市内で開かれた市民との「語ろう会」で、「建築の世界に『生かし取り』なんて言葉はない。きょう初めて聞いた。たとえば、茶室の壁をそのまま移築する『大ばらし』という技法ならある」と市の用語に疑問を投げた。
 会に出席した女性からも「辞書を引いても載っていなかった」との発言が出た。
 これに対して、市教委幹部は18日、「『生かし取り』は、唐津などで大工さんらが建築現場で使っている言葉。学術用語にはないかも知れないが、『丁寧に解体する』と同じ意味。言葉のすれ違いだ」と釈明した。市民との懇話会を設けて、解体時に保存する部材の活用を話し合うことで事態の収拾をめざす方針だが、保存を求める人たちとの溝は埋まらないままだ。
 
朝日新聞  2010年
6月23日
小学校改築と両立
旧大島邸巡り要望
 唐津市長に文化財保存県協

 唐津市西城内の「旧大島邸」の解体問題で、文化財保存県協議会の長野暹会長(佐賀大名誉教授)は21日、坂井俊之市長らに対し、旧大島邸に隣接する大志小学校の改築と旧大島邸の保存が両立できる道を探ってほしいとの要望書を提出した。
 要望書は①旧大島邸を県文化財に指定して解体の道を封じる②大志小学校の改築計画を変更して、校舎面積が現計画の6割になるようにする、と提案している。これに対して、市教委は「すでに市長が議会で答弁した通り」と、旧大島邸の解体、保存する部材の活用を話し合う市民との懇話会設置の方針を繰り返している。
     
朝日新聞  2010年
6月26日
 
大島邸問題
住民監査請求棄却
唐津市監査委員
「解体、損失与えぬ」

 唐津市西城内にある「旧大島邸」の解体計画をめぐって市民グループ「大島邸を保存する会」(松下麗会長)が公金支出差し止めなどを求めていた住民監査請求で、市監査委員は25日、「請求に理由がない」と、請求を棄却する決定をした。これに対し、同会は、改めて坂井俊之市長あてに旧大島邸の保存を求める要望書を提出。受け入れられない場合は、7月初めにも市を相手取って住民訴訟を起こす考えを明らかにした。
 市は、大志小学校の改築工事に伴って隣接する旧大島邸の解体を計画、今年度から2年間の事業費約12億7600万円を計上している。
 これに対し、「保存する会」は、旧唐津銀行創立者の大島小太郎の邸宅だった「旧大島邸」は、明治時代に建築された「地域に残る唯一の武家屋敷で、歴史的文化的価値は極めて高い」と主張。文化的財産を取り壊す目的での市の事業費支出は地方財政法8条に反する違法行為として、2192人の有効な署名を添えて公金支出差し止めの勧告などを出すよう求めていた。
 2人の監査委員は、旧大島邸の現地調査、同会の陳述や市教委からの事情聴取などを踏まえて決定を下した。「地方財政法の規定は地方公共団体の財産の経済的金銭的な価値に着目したもので、文化財としての価値に着目したものではない」と解釈。旧大島邸は「建物としての金銭的価値はないので、解体によって市に損失を与えることにはならない」と判断した。
 監査結果を受けて、市教委は7月下旬の夏休み入りとともに、大志小学校体育館の解体工事を始めるスケジュールを発表。旧大島邸の解体は10月にも始める予定だ。
 一方、松下会長(66)は「誠に遺憾、残念。大島邸を残す署名をいただいた計7千人以上の方に申し訳ない」と述べ、旧大島邸の移築や曳家による保存を含めた建築計画の変更を求める要望書を市長あてに提出した。
 旧大島邸の保存をめぐっては、唐津市内だけでなく、全国の研究者約600人からなる建築史学会(会長=吉田鋼市・横浜国立大学教授)が、保存を求める要望書を市長あてに提出するなど、解体に反対する声が広がっている。


文化財的価値
評価を求める

 県教委に保存県協

 唐津市の「旧大島邸」解体計画について、文化財保存県協議会(会長=長野暹・佐賀大名誉教授)は25日、県教委の川崎俊広・教育長に対して、旧大島邸を調査して文化財的価値を明らかにするよう求める要望書を提出した。
 要望書は、唐津市が旧大島邸を解体する方針を崩していないことについて「大島小太郎父子が唐津の文化、経済、産業面で果たした歴史的役割を抹消しかねない暴挙」と厳しく批判している。
佐賀新聞 2010年
6月26日
大志小建設
住民監査請求を棄却

旧大島邸保存会 訴訟も検討

 唐津市の大志小の新校舎建設費支出差し止めを求めた住民監査請求で、市監査委員は25日、請求を棄却した。請求人代表で「大島邸を保存する会」の松下麗会長は「住民訴訟も視野に対応する」としている。
 新校舎建設で解体される旧大島邸の保存を求める2192人が「歴史的・文化的価値の高い旧大島邸を取り壊す目的での事業費支出は不当」と請求。「耐震補強すれば約4千万円で抑えられる。違法不当な支出」と訴えていた。
 監査委員は、市土地開発公社が旧大島邸敷地を購入した際、建物価格が算定されていないことから「金銭的価値はなく、解体による市の損失はない」とし、「耐震補強は99カ所の補強が必要で、教育環境を保てない」などを理由に建設費支出の違法性は見いだせないとして謂求を退けた。
 同会はあらためて保存を求める要望書を坂井俊之市長に提出。松下会長は「受け入れられない場合は直ちに住民訴訟する」とした。市は、建材を慎重に扱う範囲を建物全体に広げ、その活用について市民を交えた検討会を設ける方針を示した。
      (谷口)
西日本新聞  2010年
6月26日 
唐津の旧大島邸
住民監査請求を棄却
市監査委員 住民団体訴訟も視野


 小学校の校舎新築に伴い、本年度中の解体が決まっている唐津市西城内の「旧大島邸」をめぐり、市民団体「大島邸を保存する会」(松下麗会長)が新築工事への公金支出差し止めを求めた住民監査請求で、市監査委員は25日、「違法不当な行為とは認められない」と請求を棄却した。
 これを受け、同会は工事計画の変更などを求めた要望書を坂井俊之市長に提出。7月上旬までに市が要望を聞き入れない場合は、住民訴訟を起こすことを決めた。
 同会は、文化的価値が高い旧大島邸の解体に事業費を支出するのは地方財政法達反だと指摘。現校舎の耐震補強工事でも目的を達成できると主張していた。請求人は2192人に上った。
 結果を受け、市は中止していた旧大島邸の解体作業を10月から着手すると発表。当初は部材を貴重なものだけ保存しその一部を新校舎に活用するとしていたが、できる限りすべて残すようにした。活用法については白紙にし、市民も交えた検討の場を7月にも設けるとした。  (岩谷瞬)
読売新聞  2010年
6月26日 
旧大島邸保存
住民監査請求を棄却
唐津の市民団体、提訴へ


 唐津市の市民グループ「大島邸を保存する会」の松下麗会長ら2192人が、大志小学校(西城内)の校舎改築への公金支出の差し止め勧告を求めた住民監査請求に対し、市監査委員は25日、「請求の理由がない」として棄却し、松下会長らに決定文書を手渡した。これを受け、同会は、旧大鳥邸の現地保存と、次を求める要望書を坂井俊之市長あてで提出。「要望が認められなければ、30日以内に住民訴訟を起こす」としており、早ければ7月初旬にも提訴する方針。
 市監査委員は棄却の理由として、①解体で市に何ら損失を与えない②旧大島邸の保存は相当の費用を要し、将来復元可能な記録保存をした上で、学校用地との判断は裁量権を逸脱していない--などを挙げた。
 松下会長は「誠に遺憾で残念。保存してほしいと署名をした7000人以上の民意を無視したものだ」と批判。「今後、市長リコールや議会解散を求める運動も広げていきたい」と語った。
 これに対し、坂井市長は「生かし取りする部材の範囲を拡大し、将来の復元に向け、保存。保管したい。保存する部材の活用について、市民も含めた検討の場を設けたい」とのコメントを出した。市によると、大邸の解体工事は10月頃に始め、終了まで3か月かかるという。
 
朝日新聞   2010年
6月28日
 
唐津・大島邸巡り市民ら報告会
専門家の調査市に要望へ
2教授のアピール採択


 唐津市西城内にある「旧大島邸」の解体計画を巡って、市民グループ「大島邸を保存する会」が公金支出差し止めなどを求めた住民監査請求が棄却されたのを受けて27日、市内で報告会が開かれた。元文化庁文化審議会委員の西和夫・神奈川大名誉教授(71)と、藤原惠洋・九大教授(54)が「旧大島邸の価値を確認、保存手法については専門家の調査指導を受ける」とのアピールを市長あてに出すことを提案、全員の賛成で採択された。
 報告会には、市民ら約70人が出席。旧大島邸の文化財的価値を尋ねる質問に、藤原教授は「国の重要文化財に指定されている旧高取邸より評価が低いということはない。今からでも専門的な調査をさせてほしい」と述べた。
 住民監査請求の棄却結果については「予想通り」との受け止め方が多かった。今後の運動の進め方については、市側が10月にも旧大島邸の解体開始のスケジュールを発表したことから、工事差し止めの仮処分を求める民事訴訟も検討する必要がある、との意見が弁護士から出された。
 また、文化財保存県協議会会長の長野暹・佐賀大名誉教授(78)も、7月18日に「旧大島邸のすばらしさと保存を考えるシンポジウム」を佐賀市内で開くことを報告、「運動を九州から全国へと広げていこう」と訴えた。
 
読売新聞  2010年
6月28日 
旧大島邸保存
運動盛り上げ
 監査請求棄却報告集会

 唐津市西城内の大志小学校校舎改築への公金支出の差し止め勧告を求めた住民監査請求で棄却された市民グループ「大島邸を保存する会」は27日、市内で報告集会を開いた。約80人の参加者が今後、運動を盛り上げていくことを確認した。 建築史が尊門の元文化庁文化審議会委員の西和夫・神奈川大名誉教授、藤原惠洋・九州大教授も出席。藤原教授は、①明治以前の武家屋敷のデザイン、材料が受け継がれている②唐津の近代都市基盤を築いた大島小太郎(1859~1947年)の邸宅で、大島の社会的ポジションなど足跡をみるのに重要--などと建築史上、市内にある国重要文化財の旧高取邸と同じような価値があると強調した。
 参加者から「唐津は城下町らしさが残っており、素晴らしい。旧大島邸を保存できなければ、唐津の文化度が問われ、後世から責められる」との意見も出た。
佐賀新聞  2010年
6月29日
 
旧大島邸保存へ
 専門家申し入れ
 市長に「研究機会を」

 唐津市の大志小新築に伴い解体される旧大島邸について、日本建築史が専門の西和夫神奈川大名誉教授と藤原惠洋九州大大学院教授が28日、保存を求める申し入れ書を坂井俊之唐津市長に提出した。
 元文化庁審議会委員の西名誉教授は「保存には種々の手法、方法がある」とし、両教授と茶室建築に詳しい中村昌生京都工芸繊維大名誉教授に調査や指導を依頼するよう、市民ら74人の署名を添えて市に求めた。
 両教授は27日にあった「大島邸を保存する会」(松下麗会長)の集会に出席。「市と対立したままでは活路は見いだせない。議論を進めるためにも提案型の申し入れをしたい」と賛同者を募った。
 藤原教授は旧大島邸の価値について「明治期の近代和風建築の特徴が随所にあり、当時の生活ぶりや習慣、時代を示す秀逸な建築遺構」と主張。「創建時期など学術的な裏付けがあれば国重文指定の可能性も見いだせる。専門家に研究の機会を与えてほしい」と話す。

読売新聞  2010年
6月29日 
旧大島邸の保存
唐津市長に要望
  神奈川大名誉教授ら

 元文化庁文化審議会委員の西和夫・神奈川大名誉教授、藤原惠洋・九州大教授らは28日、唐津市西城内の大志小校舎改築に伴って解体が決まっている旧大島邸について、保存を求める文書を坂井俊之市長あてに提出した。
 同小改築への公金支出の差し止め勧告を求めた住民監査請求で、監査委員は棄却したが、付記で旧大島邸の取り扱いに関して、「今後は、保存の要望が寄せられていることを考慮して進めていただきたい」とした。西名誉教授らは、これを尊重するよう要望している。
 
朝日新聞  2010年
7月13日
  
保護審に諮らず方針
唐津市に公開質問状
 大島邸問題で文化財県協


 唐津市西城内にある「旧大島邸」の解体計画を巡り、文化財保存県協議会(会長=長野暹・佐賀大名誉教授)は12日、同市が市文化財保護審議会(志佐惲彦会長ら13人)に大島邸の保存について諮問しないまま、「記録保存=解体・撤去」の方針を決めたのは、行政手続きとして大きな瑕疵ではないかとただす公開質問状を坂井俊之市長と大塚稔教育長あてに提出した。
 市文化財保護審議会は、市の重要文化財指定や、その他の文化財の保存や活用について教育委員会の諮問に応じて審議することになっている。質問状は、「大島邸のような貴重な文化財が、踏むべき手続き抜きで、解体・撤去の方針が決められ、実行に移されていくのは、きわめて異常」としている。
 このほか、質問状は①大島邸の文化的価値をどう評価しているか②本格的な学術調査を実施すべきではないか-など、計5点について月末までに回答を求めている。これに対して、市教委は「期限までに回答したい」と話している。
 
朝日新聞  2010年
7月19日
 
旧大島邸の価値解説
 佐賀市でシンポ保存呼びかけ


 明治初期の近代和風建築で旧唐津銀行頭取だった故大島小太郎氏の旧居「旧大島邸」(唐津市)の解体計画を巡り、保存を求める文化財保存県協議会(会長=長野暹・佐賀大名誉教授)が18日、佐賀市内でシンポジウムを開いた。「全県的な保存運動にしよう」と呼びかける一方、現地での保存と活用を求める決議を採択した。
 旧大島邸の文化財的価値を解説した元松浦文化連盟会長の中里紀元氏は、邸宅に残る紅葉や雁などの「くぎ隠し」の装飾金具の写真を示しながら、「2枚重なる紅葉の色の違いなど、自然とともにある細やかな日本の伝統美だ」と称賛。解体の弊害については、「市が説明する『記録保存』で解体し陳列しても、どこにその装飾を用いたかが分からなくなるため意味がない」と指摘した。
 シンポジウムでは、保存の必要性についてまちづくり団体の代表なども交え、意見を出し合った。決議では、旧大島邸の文化財的価値を見直すための専門家による調査や文化財保護審議会への諮問などを要望。解体理由となっている隣接する大志小学校の改築にも触れ、「小学校の改築と旧大島邸の保存の双方が両立できる道」を求めている。
 
朝日新聞  2010年
7月23日  
元文化審委員参加へ
 旧大島邸懇話会建築史学会推薦


 唐津市西城内の旧大島邸の解体計画を巡り、市が市民の意見を聴く「旧大島邸の保存と活用を考える懇話会(仮称)」(8月4日開催予定)のアドバイザーとして、元文化庁文化審議会委員の西和夫・神奈川大名誉教授(72)が参加することが22日、明らかになった。これまで旧大島邸保存の立場で発言してきた西名誉教授は、市が懇話会の参加を認めたことを「一歩前進」と評価している。(田中良和)
 懇話会は、坂井俊之市長が6月議会で「解体時に保存することになる部材などの活用について、市民を含めて幅広く意見を聞きながら検討する場を設けたい」と明らかにした。市教委などによると、市民の委員は12人で、保存を求めて署名運動などをしてきた二つの市民グループの代表らの参加が決まっている。
 西名誉教授の参加は、全国の研究者約600人でつくる建築史学会(会長=吉田鋼市・横浜国立大学教授)の推薦で実現。同学会は、旧大島邸を「建築史学上きわめて貴重な建築、唐津市の歴史を示す遺産としても重要」として、保存を求める要望書を6月17日に市に提出している。
 西名誉教授によると、参加の打診が市からあり、承諾した。同氏は朝日新聞の取材に対して、「旧大島邸は現地保存が最も望ましいが、次善の策として曳家(ひきや)や移築もある。タイムリミットも迫っており、今回の懇話会で方向性が出せるようみんなで知恵を出し合いたい」と話している。
 
朝日新聞  2010年
7月24日 
市歩み寄り評価
住民訴訟を断念
 大島邸を保存する会


 唐津市の旧大島邸の解体計画に反対してきた市民グループ「大島邸を保存する会」の松下麗会長(66)は23日、市を相手取っての住民訴訟を断念する考えを表明した。市が、8月4日に開く「旧大島邸の活用を考える懇談会」に建築史学会の推薦する西和夫・神奈川大名誉教授(72)の参加を認めるなど、市側に歩み寄りの姿勢が見られることなどを理由にあげた。
 同会は2192人の署名を集めて、旧大島邸と隣接する大志小学校の改築工事のための市の事業費支出差し止めなどを求めて住民監査請求をしたが、6月25日に棄却。その後、市の対応によっては住民訴訟も検討する構えを見せていた。 
毎日新聞 2010年
7月24日 
 旧大島邸:解体問題 活用検討へ
「懇話会」 唐津市設置
 

 唐津市の和風建築・旧大島邸の解体問題で、市教委は23日、解体後の保存活用について検討する「旧大島邸の活用を考える懇話会」を設置すると発表した。初会合は8月4日に市役所で開く。

 構成委員は12人で、観光や文化など各分野から選定。名簿は非公開だが、解体に反対している松下麗・大島邸を保存する会会長と辻いく子・大島邸を残す会代表や、アドバイザーとして建築史学会元会長の西和夫・神奈川大名誉教授も入る予定。

 ◇来月4日に意見交換会、見学会も

 また、同日午後7時からは保存する会が意見交換会を市民会館で開催。午後3時半からは旧大島邸の見学会も予定し、西教授と藤原惠洋・九州大大学院教授が解説する。

 意見交換会では懇話会の報告もある。参加申し込みは同会事務局の山崎久美子さん090・4510・4127。

 保存する会は、市監査委員に住民監査請求を棄却され、提訴する方針だったが、市側が懇話会を設置するなど歩み寄っているとして提訴は取りやめた。【原田哲郎】

朝日新聞 2010年
8月1日 
旧大島邸活用考える懇話会
溝埋まらぬまま開催
 4日、唐津市教委と市民


 唐津市西城内の旧大島邸の解体計画を巡り、市が市民の意見を聴く「旧大島邸の活用を考える懇話会」が4日、市役所で開かれる。市教委は「解体後の部材の活用について市民の意見を聞くのが目的」と、解体の立場を崩しておらず、現地保存を求める市民グループとの溝は埋まらぬままだ。「結局は市民の意見を聞いたというパフォーマンスに終わるのでは」という声が早くも関係者の間から出ている。 (田中良和)
 市教委によると、懇話会は4日午前10時からで坂井俊之市長も出席。12人の委員が会長、副会長を互選後、旧大島邸を視察。この後、市役所で旧大島邸の活用方法などを議論する予定。だが、12人の委員の名簿は公表されておらず、委員同士も当日まで互いに名前が分からない状況だ。
 懇話会には市民グループ「大島邸を保存する会」の会長も出席する。同会は30日に懇話会への対応を話し合ったが、メンバーがわからないために結局、旧大島邸の「現地保存」という基本線は確認したが、今後の対応は懇話会の進み具合を見ながら決めていくことにした。
 懇話会に「アドバイザー」として参加する元文化庁文化審議会委員の西和夫・神奈川大名誉教授(72)の役割も焦点のひとつ。市教委は「アドバイザーは、自分からは発言できず、会長や委員から発言を求められたときだけ発言できる」という。西名誉教授は全国の研究者約600人でつくる建築史学会の推薦で参加。全国各地のまちづくりに幅広い経験を持つ同名誉教授の見識を生かす場が十分、与えられるかどうかも未知数だ。
 一方、市教委は、憩話会とは別に、大島邸に隣接する大志小学校の屋内体育館解体工事に今月初めから着手する方針。旧大島邸の解体も10月に始めて、年内には終える予定だ。市教委は「懇話会は解体後の部材の活用を話し合う場なので、工事は、これとは関係なく予定通り進めたい」と話している。 
佐賀新聞  2010年
8月5日
 
解体前提とせず議論へ
 「旧大島邸」懇話会が初会合

 佐賀県唐津市の大志小新校舎建設に伴い、解体が論議になっている「旧大島邸」の活用を考える懇話会の初会合が4日、唐津市役所であった。市は解体後の保存活用を話し合う考えだったが、解体を前提とせず幅広く議論することを決めた。10月まで4回程度開き、意見をまとめる。

 市は委員の名前と会議を公開しない方針だったが、会議の冒頭で委員から意見を聞き、いずれも公開した。委員は地域婦人連絡協議会会長や駐在員ら12人。会長に馬渡雅敏・唐津みなとまちづくり懇話会会長、副会長には岩本真二・NPO唐津環境防災推進機構KANNE理事長を選んだ。

 会議ではまず市が「解体保存後の有効な活用方法について検討を行う」とする市の設置要項を説明した。一方、馬渡会長は「多様な意見を集めて収れんしたい」と、現地保存を含めた幅広い活用について意見を求めた。

 委員からは「新校舎建設と旧大島邸の継承を両立するため別の場所に移築」「大島家の功績についても評価すべき」などの意見のほか、保存を求める市民団体や都市右太雄・唐津観光協会会長は「唐津の近代史を伝える上で貴重な建物」として現地保存を求めた。「市の財政を考えると現状保存は難しい」との意見も出た。

 アドバイザーの西和夫神奈川大名誉教授は「建物全体が残り、住宅建築の歴史をひもとく貴重な資料」と提言。委員らは「建築的、文化的価値を共有し、今後の議論に役立てたい」と、西名誉教授らによる建物調査を行うことを決めた。

 次回は25日に開き、活用の前提となる建物の価値などを議論する。

 一方、保存する会は同日、西名誉教授らによる同邸の見学会と意見交換会を開催。見学会には県内外から約130人が訪れた。

 
西日本新聞  2010年
8月5日 

唐津市・旧大島邸の活用へ
 建築史学会に価値調査依頼 懇話会が初会合

 小学校の校舎新築に伴い解体される唐津市西城内の「旧大島邸」をめぐり、解体後の部材の活用法を考える「旧大島邸の活用を考える懇話会」の初会合が4日、唐津市役所であった。旧大島邸の建築的・文化的価値について調査するよう市教委に提案。市教委もこれに応じ、近く建築史学会に調査を依頼する方針を示した。

 懇話会は現地保存派の市民を含め計12人で構成。建築史学会元会長の西和夫神奈川大名誉教授が助言者として加わる。会長に唐津みなとまちづくり懇話会の馬渡雅敏会長(54)を選んだ。

 この日、旧大島邸の茶室などを視察。その後の会合では「旧大島邸の『価値』を共有したい」「市の財政を考えると現状での保存は難しいのでは」との意見が出た。懇話会は10月まで4回をめどに会合を開く予定。

 
読売新聞 2010年
8月5日

「旧大島邸」懇話会初会合、10月めどに結論

 唐津市西城内の大志小学校校舎改築に伴って解体される旧大島邸の活用を考える懇話会の初会合が4日、市役所で開かれた。委嘱された12人の委員からは「邸の現地保存を」「学校の環境を整備すべきだ」といったいろいろな意見が出た。このため、次回の25日の会合までに専門家から建築的、文化的な評価を受け、価値を共有して10月をめどに結論を出すことにした。(山田和男)

 委員は、唐津観光協会会長、唐津中央商店街会長のほか、現地保存を訴えている市民グループ・大島邸を保存する会の会長、城内を考える会代表ら。会長には馬渡雅敏・唐津みなとまちづくり懇話会会長(54)が選ばれた。

 冒頭、坂井俊之市長は「解体に当たり、貴重な部材などを保存することにしているが、その後の活用策について広くご意見をいただきたい」とあいさつした。委員は旧大島邸を視察し、これまでの経緯について市教委から説明を受けた。

 この後、各委員がこの問題について意見を述べた。「大志小の運動場は狭く、子どもたちの学習環境を整えるのがまず第一で、旧大島邸はしかるべき場所へ移築されるのが妥当では」、「何で今頃、保存の話が出てきたのか」などと現地保存に疑問の声のほか、「観光の立場から今の形での保存を」、「城下町の面影を残すものが少なくなっており、緑の空間もなくなってしまう」と現地保存を求める意見が出た。

 学識経験者のアドバイザーとして日本建築史学会から推薦を受けた元文化庁文化審議会委員の西和夫神奈川大名誉教授は「表(公の部分)と奥(私の部分)が、全体として非常によく残っているのが大きな価値のひとつ。書院造りで、日本の住宅の流れを知るうえで優れた存在だ」などと評価した。建築的、文化的な評価は西名誉教授ら専門家チームが行い、詳しい調査を行う予定。

朝日新聞  2010年
8月5日 
保存求める声多く
旧大島邸活用考える懇話会


 唐津市西城内の旧大島邸の解体計画を巡り、市民の意見を聞く「旧大島邸の活用を考える懇話会」の初会合が4日、市教委主催で開かれた。会議では、議論の前提として、旧大島邸の建築的文化的価値について理解を共有する必要があるとしてアドバイザーとして参加している元文化庁文化審議会委員の西和夫・神奈川大名誉教授(72)に対し、改めて調査をしたうえで25日に開かれる次回会合にも報告を求めることにした。
 懇話会には市教委が選んだ各団体代表ら12人が出席。旧大島邸を見学した後、ひとりずつ意見を述べた。何らかの形で保存を求める声が多数を占めた。ただ、保存方法については、①現在のまま残す②残すべきだが、財政問題など留保付き③他の場所に移築など意見が分かれた。馬渡雅敏会長は「いいものを残したいという皆さんの気持ちがわかった。一番いい形、あるいは次善の形で残すやり方をまとめたい」と述べた。
 行政代表として出席した山下正美・市企画経営部長は「大島邸の建築的文化的価値を市として把握していなかったことが議論が進展しなかった原因」と述べ、西名誉教授に建築的文化的価値について評価を依頼することを提案し、西名誉教授も同意した。
 「城内を考える会」の辻いく子代表は現地保存を明確に主張。「城下町の面影を残す城内がどんどんなくなっている。あのまま保存してほしい」と訴えた。また、唐津観光協会の都市石太雄(といちうたお)会長は「大島邸に隣腰する大志小学校の改築に伴ってなぜ、大島邸を壊さなければならないのか、説明が不十分」と述べた。大志小の見学を希望する声も出て、次回に見学することにした。
 会は10月末、意見をとりまとめる予定。

 
朝日新聞  2010年
08月08日 

旧大島邸 文化的価値調査へ

 唐津市西城内の旧大島邸の解体計画を巡り、市教委が市民の意見を聞くために開いた「旧大島邸の活用を考える懇話会」で、アドバイザーを務める元文化庁文化審議会委員の西和夫・神奈川大名誉教授(72)は、朝日新聞のインタビューに応じ、同会から要請のあった旧大島邸の建築的文化的価値について、専門家5~6人でチームを結成して現地調査をしたうえで25日の次回会合で報告する考えを明らかにした。

 また、旧大島邸が保存されることになった場合、自邸だった実業家大島小太郎(1859~1947年)の記念館とする構想も披露。「唐津の町づくりを考える全体的な視野の中で保存を進めるべきだ」との考えを示した。


西和夫・神奈川大名誉教授に聞く

西・名誉教授とのインタビューの主な内容は次の通り。

 ――4日の懇話会初会合出席の感想は。
 旧大島邸は「粛々と壊しますよ」といわれていたので、懇話会を開くところまで来たのは市民にとってプラスだった。方向性としては「現地保存か移築」という二つの意見が多かった。今後、どう収斂させていくかが課題だ。

 ――次回会合に旧大島邸の建築的文化的価値の報告を求められたが。
 私と九大大学院の藤原恵洋教授(55)を中心に九州地域から、設計、建築史の専門家5~6人を集めてチームをつくる。19~22日に現地集合、役割分担をして調査したい。①旧大島邸の建築時期②唐津市の近代図書館にある大島家文書③建物の増改築などがポイントになる。

 ――懇話会では「大島邸は何のために残すのか」という声も出たが。
 やや早いが、建物がきちっと残るようになったら、「大島小太郎記念館」にしたらどうか。残念に思うのは、大島小太郎について唐津市民があまり知らないこと。小学校の地元の歴史を学ぶカリキュラムでも取り上げたことがないという。小太郎は銀行、港湾、鉄道などで地元に功績のあった実業家。記念館ができれば、大島家文書の解説付き展示や、旧唐津銀行本店の紹介もできるのではないか。

 ――唐津の町づくりの中で、旧大島邸の保存をどう進めていったらよいか。
 懇話会でまだ結論が出ていないが、できれば市民が使える施設にして、外から来た人にも見てもらいたい。近くにある旧高取邸や旧唐津銀行本店ともつないで「町歩きマップ」をつくる。そうすれば外から来た人が町を歩き、町が元気になる。そういう全体的な視野が必要だ。街づくりには、産業やスポーツなどいろんな視点があるが、唐津の場合は歴史を生かした町づくりが一番、合っているのではないか。

【旧大島邸】 旧唐津銀行頭取などを務め、唐津の経済近代化に貢献した大島小太郎の旧居。木造平屋一部2階建て延べ床面積約450平方メートルの和風建築。約5300平方メートルの敷地の北側に建物、南側に庭園を配置。「武士住宅の面影を残す県有数の良質の大邸宅」(県近代和風建築総合調査報告書)とされるが、築100年で老朽化が進み、一部朽ちかけているところもある。

【西和夫(にし・かずお)】 早大建築学科卒、東京工大大学院博士課程修了。工学博士。日本建築史が専門で、建築史学会長、文化庁文化審議会委員などを歴任。長崎県平戸市など全国各地の町づくりのサポート役を務めてきた。

 
朝日新聞  2010年
8月20日
唐津の旧大島邸
学術調査始まる
 建築年代など解明へ


 唐津市西城内にある旧大島邸の解体計画を巡り、「旧大島邸の活用を考える懇話会」のアドバイザーを務める西和夫・神奈川大名誉教授を代表とする学術調査団の現地調査が19日、始まった。懇話会は、市教委が市民の意見を聞くために立ち上げた。22日まで調査を続け、25日の懇話会で旧大島部の歴史的価値について報告する。
 学術調査団は、西名誉教授のほかに、九大大学院の藤原恵洋教授ら建築や建築史の専門家10人で構成。旧大島邸の建築構造や建物の歴史など文化的価値について調査する。屋根裏や床下の構造を詳しく調べるとともに、新聞など明治期の文献にもあたって正確な建築年代を解明する。
 初日は、建物の正確な平面図を作製するため、巻き尺で各部屋の間取りを測った。西名誉教授は「接客をする公の空間と家族が暮らす私の空間に分けられており、両方が残っているのは貴重。建物の特色を整理して懇話会で報告したい」と話した。

 
佐賀新聞 2010年
8月20日 
 旧大島邸の建築・文化的価値を調査

 唐津市の旧大島邸の建築的・文化的価値を探る専門家の調査が19日、始まった。解体と保存の論議で揺れる同邸の活用策を考える懇話会が5日の初会合で決めたもので、22日まで4日間行う。25日の2回目会合で結果を報告する。

 調査団は建築史の専門家や建築家ら10人。日本建築史学会元会長で懇話会アドバイザーの西和夫神奈川大名誉教授が代表を務める。専門家による調査は1996年に佐賀県が行った近代和風建築総合調査以来という。
 調査では、客間や台所、茶室など建物全体の構造やデザインを調べ、建物の特色や増改築歴、当時の生活ぶりを明らかにする。将来の文化財指定も視野に、建築当時の寸尺で一間ずつ計測し、正確な図面と報告書を作成する。
 価値評価で重要となる建立時期は不明。県の調査では「明治12~13年ごろ」と報告されたが、市によると大島家が土地を購入したのは同14年になっている。調査団は当時の新聞記事や唐津市近代図書館所蔵の大島家文書、同邸で見つかった施主や年代が書かれた棟札も分析。資料調査は22日以降も継続する。
 西名誉教授は「時間の制約があるが、総合的な調査で建立年代など正確に価値判断できる根拠を数多く集めたい」と話した。

毎日新聞  2010年
8月21日 

旧大島邸:学術調査が始まる
 建築年代など特色を明確に

 唐津市の和風建築物・旧大島邸(旧唐津銀行頭取など務めた大島小太郎自邸)の建築・文化的価値を見直す調査が19日始まった。庭も含め旧邸すべてを22日までの4日間で調査し、建築年代や増築部分の確認、他と比較する特色を明確にする。
 調査は西和夫・神奈川大名誉教授(建築史学会元会長)を代表とする学術調査団(10人)が実施。間取りを正確に把握し、構造と意匠を調べていた。
 同邸は隣接する市立大志小の改築に伴い解体・保存されることになっており、市は今後の活用方法を検討するため「活用を考える懇話会」を設置。同会の意見に基づき、西名誉教授に調査を委託していた。
 調査結果は25日午前10時から市民会館である次回の懇話会で公開される。【原田哲郎】

 
 佐賀新聞  2010年
8月25日
「旧大島邸」解体問題
議論本格化
きょう建物調査の結果提示
大志小の保護者ら注視、思い複雑


 唐津市にある明治期の近代和風建築物「旧大島邸」の解体・保存問題は25日、邸の活用を考える懇話会で専門家の建物調査結果を示され、本格的な議論が始まる。市は解体して隣接する大志小の改築用地にする方針で、既に体育館解体に着手、秋にも旧大島邸を解体する考えだが、昨年末以降、保存運動は急速な盛り上がりをみせ、議論は平行線のままだ。解体方針を認めてきた市議会や新校舎建設を望む保護者は複雑な思いで議論の行方を注視する。
 市や市民団体らで構成する懇話会は今月4日に発足。市は解体後の活用を考える方針だったが、初会合では解体を前提とせず協議することになり、専門家による調査を決めた。調査は19日から4日間、懇話会アドバイザーで日本建築史学会元会長の西和夫神奈川大名誉教授ら10人が邸の構造や特色、建立時期を調べた。
 一方、市は懇話会発足の2日後、大志小体育館の解体工事に着手。「まだ協議中なのに」と疑問の声も上がるが、市は「議会で承認済み」として予定通り、体育館解体後の10月から同邸を取り壊す方針。2011年度に新校舎、13年度内には同邸跡地に新体育館を完成させる計画だ。
 市議会は昨年3月から議論してきた。①現校舎が震度6強の地震で倒壊の恐れがある②旧大島邸の敷地活用で仮校舎建設費5~6千万円が節減できる③保存には数億円が必要で財政的に困難などの理由で昨年12月に邸の敷地購入予算案、今年3月に新校舎建設予算案を可決した。邸宅は図面や写真で記録し、貴重な建材などは慎重に保存するとしている。
 ある市議は「早期建て替えを望む児童の保護者の意見や保存の可能性も含めて総合的に勘案し、結論を出した。民意を反映する議会の決定は重い」という。
 だが、保存を求める人たちは議会の決定過程で「価値が真剣に議論されたのか」と疑念を持つ。市の文化財保護審議会では価値について一度も協議されたことがない。そのことは議会で明らかになったが、対応はなかった。市民団体は「解体ありきの結論」と不信感を募らせる。
 旧大島邸は、唐津銀行頭取だった大島小太郎氏の邸宅。専門家は「明治期の近代建築を伝える費重な遺構」と評価する。保存署名は延べ約7千人に上る。
 一方、大志小の児童の保護者は複雑だ。ある父親(46)は「計画が白紙に戻ればだれが子どもを守ってくれるのか」と、保存の動きを懸念。別のPTA役員(50)は「議論が長引くほど、子どもたちが『自分たちのせいで旧大島邸を壊した』と責任を感じてしまう」と不安を口にする。
 懇話会は調査結果報告を受けて協議を再開する。今後3回の議論を経て、10月までには一定の方向性を出す方針だ。 (谷口大輔)
 
 朝日新聞  2010年
8月26日

旧大島邸 懇話会報告
 主屋の損傷少ない 

 唐津市西城内の旧大島邸の解体計画を巡り、市民の意見を聞く「旧大島邸の活用を考える懇話会」の第2回会合が25日、開かれた。アドバイザーの西和夫・神奈川大名誉教授(72)が「建築年代は1884~93(明治17~26)年。主屋の損傷は非常に少ない」とする調査結果を報告。文化財的価値が高いとして、(1)大志小学校改築と旧大島邸保存の両立(2)旧大島邸は部分ではなく、全体を残す――との方向で次回以降、具体的な検討に入る。(田中良和)
 建築の専門家10人の学術調査団が、19日から22日まで旧大島邸を詳細に調査。その結果、1996年の県の調査で明治12~13年ごろとされた建築年代は、ふすまの下張りの記述や「大島家文書」などから、明治17~26年になることがわかった。
 また、雨漏りなどによる損傷が見られるのは、廊下や物置などの増築部分で、主屋は見えない所まで神経が行き届いた丁寧な工事で、ゆがみなどもほとんど無いことがわかった。
 今後について、山下正美・市企画経営部長は「旧大島邸の所有者だった大島小太郎は、進取の気性に富んだ人物。物的遺産を生かす方向で考えた方が、価値を見いだせる」と、活用に前向きな見解を示した。落合裕二・市商工観光部長も「合併特例債など、旧大島邸保存のために使える財源はある。むしろ、保存後の管理運営の方が問題」と述べた。
 西名誉教授は「旧大島邸のように規模が大きく、すぐれた明治期の邸宅は全国的にも非常に少ない」と文化財的価値を高く評価。そのうえで、「次善の策として移築保存する場合は、建物の文化的価値を損なわないよう十分な配慮をすることが前提」と、一部の部材だけを残すという考え方にくぎを刺した。

 佐賀新聞  2010年
8月26日
 
旧大島邸「何らかの形で保存」
 唐津市で懇話会

 佐賀県唐津市の大志小改築に伴う「旧大島邸」の保存・解体問題で、建築年代が明治17~26年と判明し、文化財的価値があることが25日、活用策を探る懇話会で報告され、邸を何らかの形で保存する方向で議論することを確認した。
 懇話会は2回目で、邸を調査したアドバイザーの西和夫神奈川大名誉教授が報告した。大座敷の違い棚のふすまの下張りに、大島家の魚会社の罫紙(けいし)で「明治17年度後期」との記述が見つかり、大島家文書などの文献と照合。増築の茶室や台所、仏間を除く母屋の建築年代を特定した。
 西名誉教授は「建物全体が良質に現存し、天井の高い豊かな空間や意匠、大工の技術、材料が優れている」とし、「文化財的価値は非常に高い」との見解を示した。
 調査報告を受けた懇話会では、財政面から慎重な意見も出たが、「大島小太郎氏の自邸が残ることで、その功績を含む総合的な価値が見いだせる」との意見が多かった。
 議長の馬渡雅敏会長は「壊すべきではないという委員の認識は共有できた」と集約、保存の可能性を探る方向で議論することを決めた。次回は9月17日に開く。

 読売新聞  2010年
8月26日

旧大島邸移築保存へ
調査団「文化財的価値非常に高い」

 唐津市西城内の大志小校舎改築に伴って解体される旧大島邸の活用を考える懇話会の第2回会合が25日、市民会館大会議室で開かれた。14~24日に行われた同邸の学術調査について、調査団代表で懇話会アドバイザーの西和夫神奈川大名誉教授は「明治の生き証人で、文化財的価値が非常に高い」と報告。懇話会の12人の委員は、建物を何らかの方法で残すことで一致し、移築される方向となった。

 報告によると、主屋の建築年代は1884~93年(明治17~26年)と推定した。大座敷(15畳)の違い棚ふすまの裏面下張りに「明治17年度後半期」と記されていたことなどが根拠で、県近代和風建築総合調査報告書(1996年)の「明治12、13年ごろ」よりやや時代が下った。

 建築的、文化的価値については、〈1〉デザイン、構造が優れており、表(公の部分)と奥(私の部分)の建物全体がよく残っている〈2〉明治中期の大規模住宅の現存例が少なく、住宅史上重要な存在〈3〉銀行・港湾・鉄道など様々な分野で活躍した大島小太郎の自邸で、唐津の歴史を確認するうえで大きな役割を果たす――などとした。

 報告を受けて、各委員が意見を述べた。保存方法について、西名誉教授は現地が一番いいが、次善の策として、場所をかえても全体の空間を確保するなど十分配慮すれば、文化財的価値は担保されるとした。次回は9月17日に開かれる。(山田和男)

毎日新聞   2010年
8月26日

旧大島邸:明治中期の上質住宅 第2回懇話会で評価
唐津 /佐賀

 唐津市の和風建築・旧大島邸(旧唐津銀行頭取を務めた大島小太郎邸)の保存活用問題で、建築・文化的価値を整理するため調査を行った西和夫・神奈川大名誉教授(建築史学会元会長)は25日、調査結果を発表し「明治時代中期の上質な住宅で、唐津市の歴史上重要な人物の功績を知る上でも欠くことができない」と評価した。

 発表は第2回旧大島邸の活用を考える懇話会への報告として行われた。

 これまで1879年ごろとされていた主屋の建築年代を1884~1893年と修正し、台所・仏間・茶室は大正時代の増築と判定した。西名誉教授は「主屋部分は工事が丁寧で損傷が少ない。損傷が目立つのは増築部分」と報告した。

 調査は今月19~22日、10人の調査団で実施した。【原田哲郎】

 
 佐賀新聞   2010年
9月18日

唐津市「旧大島邸」活用策 移築保存を提言へ

 唐津市の大志小改築に伴う「旧大島邸」の保存・解体問題で、活用策を考える懇話会は17日、建物全体を移築保存するよう市に提言することで意見をまとめた。移築の候補地や活用方法などは次回の最終会合で協議する。小学校改築を予定通り進めることも確認した。 

 懇話会は3回目。会合ではまず、「教育環境の改善は危急の課題」として、小学校改築を優先することを確認。現地保存を求めていた市民グループの代表らも「次善の策」として移築に傾いた。 

 移築の方法などについては、アドバイザーの西和夫神奈川大名誉教授の「客間など重要部分だけでなく、当時の生活が分かる台所なども残してこそ価値が保てる」という見解を踏まえ、「一部ではなく全体を残す」とした。西名誉教授が監修して慎重に解体することも決めた。 

 移築後は市民が自由に活用できる場とすることでも一致。移築場所については「旧高取邸近郊」などとする意見が出た。 

 市の計画では邸の解体工事は10月から12月までの予定。移築保存で懇話会の意見がまとまったことについて市教委は「改築の工期は遅らせることはできず期間は限られるが、移築保存できるよう慎重に解体工事を進めたい」と話した。 

 「大島邸を残す会」として保存運動を続けてきた委員の辻いく子さんは「現地保存が最善」としながらも、「西先生の調査などで邸の価値が見直され、なくなる可能性があった建物を残すという意見で一致したのは大きな前進。今と変わらない価値を保てるよう、市には完全な全面移築をお願いしたい」と話した。

 
朝日新聞 2010年
9月18日
旧大島邸 「移築保存」で合意

 唐津市西城内の旧大島邸の解体計画を巡り、市民の意見を聞く「旧大島邸の活用を考える懇話会」の第3回会合が17日あり、「移築保存する」ことで合意した。10月6日の次回会合で最終報告をまとめる予定。「現地保存が最善」との意見もあったが、10月解体開始という市の工事日程などで、やむを得ず次善策の「移築保存」を選択した。

 移築方法については、アドバイザーの西和夫・神奈川大名誉教授の監修を受ける。西名誉教授は「門まで含めた全体を残す」と語り、一部の部材だけを保存して復元する案を退けた。移築場所は、国の重要文化財・旧高取邸などもある城内地区にして、市の観光資源として活用すべきだという意見が大半を占めた。次回に最終的な候補地を複数、市に示す予定だ。
 会議では、すでに屋内体育館の解体工事が進んでいる、旧大島邸に隣接する大志小学校の改築は、予定通り進めることでも一致した。

 8月初めに始まった懇話会では、「緑の木立を含めた旧大島邸の現地保存」「大志小改築と旧大島邸保存の両立」との主張が出されたが、議論を十分、深めることができなかった。馬渡雅敏会長は「もう一年、早かったら別の議論ができた。議会の議決は重かった」と語った。

西日本新聞
2010年
9月18日
 

旧大島邸「移築保存を」 唐津市の懇話会

 小学校の校舎新築に伴い解体される唐津市西城内の「旧大島邸」の活用法を考える懇話会は17日、市文化体育館で会合を開き、「茶室や庭園も含めて全体的に移築保存すべき」との意見をまとめた。出席した市教委も「移築できるように解体する」との意向を示し、同邸が別の場所に移築保存される可能性が高まった。

 懇話会は市と市民、有識者などで構成。最終回となる第4回会合は10月6日に開かれる予定で、同邸の移築場所や活用法、維持管理の方法などを話し合い、報告書をまとめて市に提出する。

 この日の会合では、旧大島邸に隣接する大志小校舎の新築工事については、現行の計画通り2011年2月着工で一致した。

=2010/09/18付 西日本新聞朝刊=

 
毎日新聞  2010年
9月18日
 

旧大島邸:全面移築へ 懇話会の意見受け、唐津市教委が方針決める

 唐津市の和風建築物・旧大島邸(旧唐津銀行頭取など務めた大島小太郎邸)の保存活用問題で、市教委は17日、同邸の一部でなく、全体を保存する方針を明らかにした。同日開かれた「活用を考える懇話会」で、委員全員の意見が「全面的な移築保存」でまとまったのを受けて同意した。
 市教委は「移築保存のために技術的な問題も含めて、建築史学会元会長の西和夫・神奈川大名誉教授のアドバイスを受けながら解体を進めたい」とした。
 懇話会は次回(10月6日)の会合で移築後の施設の利活用なども話し合い、市教委に報告書を提出する。【原田哲郎】

 
 NHK
佐賀放送
2010年
9月18日
 
 旧大島邸移築保存で一致

小学校の改築に伴って解体することが決まっていた唐津市の和風建築・旧大島邸を市民などが保存するよう求めていた問題で唐津市と住民などで作る懇話会は建物を移築して保存するという意見で一致し文化財としての価値を損なわないように配慮しながら解体するという方針をまとめました。
唐津市にある「旧大島邸」は明治中期の和風建築で隣接する小学校の改築のため取り壊されることになっています。
しかし住民の一部などから保存を求める声が出ていたため、市は住民らと建物の活用を考える懇話会を設置し話し合いを進めてきました。
17日は3回目の会合が開かれ話し合いの結果、建物を取り壊す方針は変更しないものの別の場所に移築して保存するという意見で一致しました。
そのため文化財としての価値を損なわないよう配慮しながら、旧大島邸の解体を進めるという方針をまとめました。
こうした方針の決定は先月、建築の専門家による調査によって旧大島邸の文化的な価値が認められたことなどによるもので懇話会では今後移築先となる場所について話し合うことにしています。

09月18日 10時05分

佐賀新聞  2010年
9月25日 
論説 
旧大島邸問題 官民一体でさらに議論を

 保存か、解体か、唐津市民の大きな関心事となっている旧大島邸問題は、活用策を考える懇話会が「建物全体を移築保存」という結論を出し、来月、市に提言する。隣接する小学校改築を推進する市当局と、文化財保存を求める市民有志の、双方が「顔の立つ」結論だが、これで一件落着とするのではなく、財源問題と保存後の活用法など官民一体のさらなる議論を期待したい。 

 緑豊かで閑寂な西城内の一角にある旧大島邸については、隣接する大志小が耐震強度問題で全面改築されるのに伴い、市当局が改築の一部用地として解体方針を打ち出した。 

 昨年3月から市議会で議論されてきたが、重要政策で市民の意見を聴くパブリックコメントなどもなく、多くの市民が実態と経緯を十分知らなかったようだ。 

 それが昨年冬、市民有志で旧大島邸を残す署名運動がわき起こり、次第に運動の輪が広がっていった。 

 坂井俊之市長は今年6月議会で、市民を交えて活用を考える懇話会設置を表明し、12人で構成する懇話会が8月から計3回開かれた。 

 ここで出た結論が「建物全体の移築保存」。大志小の新校舎建築計画を優先させる一方、旧大島邸を解体し移築保存する。校舎改築を推進する市当局に異存はなく、市民有志も現地保存こそ通らなかったが移築保存で、ともに面目を保てた。 

 しかし、これで万事落着では決してない。新たな課題もみえてきた。 

 一つは、移築保存がどう行われるか。移築候補地や活用法などは、最終会合となる来月6日の懇話会で協議する。文化財的価値の高いことが建築史学会で立証されただけに、移築には周到な準備と多額の費用が予想される。 

 17日の3回目協議で、移築場所を「旧高取邸(北城内)近郊」とする意見が出たほか、移築後の活用方法も「市民が自由に活用できる場とする」ことで一致したが、どう活用していくのか具体的プランはこれから内容を煮詰めなければならない。 

 旧大島邸は、専門家の言葉を借りれば「明治期の近代建築を伝える貴重な遺構」で、全国に誇れる文化遺産である。国指定重要文化財「旧高取邸」などと並び有力な観光資源になり得るため、唐津を訪れる観光客が滞留し、商店街を含む経済活性化につながるよう移築場所も考慮する必要があろう。 

 唐津市民にとっては貴重な建物保存にとどまらず、移築後は旧大島邸の所有者であった大島小太郎の遺徳を顕彰し語り継ぎ、その意義を全国に発信することが重要である。 

 大島は旧唐津銀行頭取で、海岸道路の建設、唐津鉄道の実現、唐津港の開港など、唐津市の社会基盤整備の礎を築いた。その功績を広く後世に伝えることは、ひいては旧大島邸の価値を高めることにもつながる。 

 唐津市では今、市内の誇れるヒト、モノ、地域遺産などの資料収集を、編さん委員会が進めている。この機会に、大島ら偉人と誇れる遺産を副読本などにまとめ、小学時代から郷土の知識を身に付けさせることを考えてはどうだろう。同時に、これからも市民と行政が心を一つに、旧大島邸のあるべき姿の議論を続けてほしい。(吉富正憲)

 
佐賀新聞   2010年
10月5日
私の主張

旧大島邸は現地保存を

小泉 知子(51) 唐津市


 旧大島邸は、解体から全面移築保存の方向で考えわれているようであるが、そこに至るまでの唐津市の対応をみる時、問題だらけの市政運営が浮き彫りになる。
 最大の疑問は、旧大成小学校を仮校舎に使用できないことである。唐津市民なら、誰もが旧大成小を仮校舎にすると思っていたに違いない。それが一番安上がりと知っているからである。
 旧大成小を早稲田佐賀中高一貫校に無償貸与を決める時点で、大志小学校の建て替えの必要性を把握していたはずの唐津市は、大志小の新築工事期間限定で旧大成小を使用する約束をなぜ取り交わしていなかったのであろうか? 旧大成小を仮校舎に使えば、旧大島邸は現地保存のため、ゆっくり時間をかけ「市民の財産」としての活用方法を話し合えたはずである。
 旧大島邸の保存を願う市民運動が起こり、唐津市長の呼び掛けで、懇話会が設置されたようだが、解体を前提に利活用を考える趣旨もまた疑問である。大志小の新築工事以前に、唐津市が旧大島邸の文化財的価値の調査を依頼し、「解体しても差し障りない」との結論で解体を決めたのなら、解体前提で利活用を考えるべきだが、市は何ら調査をしていない。
 旧大島邸の文化財的価値を市民運動によって知るという不手際で、解体前提の懇話会を招集するのは筋違いではないか。加えて、旧大島邸の全面移築保存となれば、新たな多額の税金投入が避けられない。よって、市民は市政運営の不合理で生み出された税金の負担を強いられることになる。
 唐津市は、旧大島邸の敷地内に大志小の新校舎を建築予定で、工事の間は現校舎を使用するため、仮校舎建設費用が浮くということで解体を決めたものである。それなのに、解体決定により多額な全面移築保存費用が予測されるのは皮肉な話である。しかし、文化財的価値の高い先人たちの遺産を引き継ぐのも私たちの大切な役割である。
 私は、旧大島邸の現地保存を強く要請したい。度重なる不手際に押し出されるように、解体移築保存の方向で進もうとしでいる中で、旧高取邸、旧唐津銀行、旧大島邸が三位一体となり、文化遺産として高い評価を受け、点でなく面でとらえた文化遺産となれば、唐津市民の誇れる財産となろう。
 私たちは、正しかった原点に立ち戻り、議論を重ねることを市に根気強く要望しなければならないのではないか。旧高取邸、旧大島邸がそれぞれの場所にある意味を知ることこそが、後世に伝えていくべき私たちの使命だと思う。  (自営業)

 NHK
佐賀放送
 2010年
10月6日
 NEWSファイル佐賀
└【総合・佐賀県域放送】(午後)6:10~7:00
唐津市の旧大島邸についての懇話会
朝日新聞
 
 2010年
10月7日 
旧大島邸「3年内に城内移築」

懇話会が結論

バトンは唐津市・議会へ

 唐津市西城内の旧大島邸の解体計画を巡り、市民の意見を聞く「旧大島邸の活用を考える懇話会」の第4回会合が6日あり、「全面的に移築保存」するとの結論をまとめた。馬渡雅敏会長が12日、坂井俊之市長に報告書を提出する。これを受けて、市は11月に旧大島邸の解体工事に着手する予定だが、解体後の移築復元には新たな予算措置が必要で、提言が実現できるかどうかは市と市議会の対応がカギになりそうだ。
 最終回となったこの日の懇話会では、前回の会合で「移築保存」で合意したのを受けて、市に提出する報告書案を巡って意見を交わした。移築先は、旧高取邸などがある城内地区が望ましいということで一致。移築後の活用方法については、観光資源としてだけではなく、「唐津の歴史や文化を学習・体験できる場」とすることなどが新たに盛りこまれた。
 問題となったのは、旧大島部を解体、保管した後の移築の時期。懇話会アドバイザーの西和夫・神奈川大名誉教授が「解体した部材(材木)は時間を置くと、暴れてしまって簡単には組み上げられなくなる」と、できるだけ早い時期の組み立て再現が必要だと指摘。具体的には「3年以内」と述べた。このため、財源の活用しやすい時期に加えて、「復元部材の変形など技術的な観点」も考慮して時期を決めることにした。
 また、移築保存のための市民の寄付などによる基金の設置、施設の管理・運営に「市民協働」の仕組みを採り入れるなどの点も報告書に盛りこまれた。移築場所については今後、市役所内に設けられる委員会などで決めるという。
 会合に出席した大塚稔教育長は、報告書がまとまった後、「趣旨を尊重してできるだけ実現できるような道を探っていきたい」と述べた。

 
佐賀新聞   2010年
10月7日 
旧大島邸、城内に移築
 懇話会最終案


 唐津市の大志小改築に伴う旧大島邸の移築保存について、活用策を考える懇話会は6日、移築先を城内地区とし、市民らが利活用できる施設とすることなどを盛り込んだ最終報告書案をまとめた。12日に市に提出する。

 懇話会は4回目。前回までに建物全体を移築保存することで意見が一致したことを踏まえ、馬渡雅敏会長が用意した報告書案に沿って議論した。

 移築場所は、武士住宅の面影を残すことや、旧高取邸などと一体となった観光資源と位置づけ、城内地区とした。庭園の石灯籠(どうろう)やつくばいなどもできる限り移築することも盛り込んだ。

 移築時期は市の財政に配慮し「(合併特例債など)有利な財源を効果的に組み合わせて活用できる時期」としながらも、建材の変形なども考慮してできるだけ速やかに基本構想を策定するよう求めることにした。アドバイザーの西和夫神奈川大名誉教授は「解体後3年内にできればいいと考える」とした。

 移築後の管理運営については、市民の意見が繁栄できるよう市民協働の仕組みを取り入れることを提言。「歴史や文化を学習・体験できる場として市民や観光客が利活用できる施設とする」とした。

 西名誉教授は「邸と大島小太郎に付随する古文書などが豊富に残っており、邸と資料を活用すれば今後のまちづくりや観光にも役立つ」との報告書を作成。懇話会の報告書とともに市に提出する。

 市は10月中旬を予定していた邸の解体を11月に変更、工期は1月中旬までの予定。大塚稔市教育長は「報告書が提出されれば、関係部局と相談し、できる限り実現できる道を探っていきたい」と話した。  (谷口)

 読売新聞  2010年
10月7日
 旧大島邸移築保存、唐津市長に報告へ

懇話会最終会合

 唐津市西城内の大志小校舎改築に伴って解体される旧大島邸の活用を考える懇話会(馬渡雅敏会長、12人)の最終会合が6日開かれ、邸の移築保存という報告書をとりまとめ、12日に市長と教育長に提出することにした。これを受け市は近く、移築保存に関する基本構想委員会(仮称)を発足させ、移築の規模、具体的な活用策などを決める。
 報告書では、旧大島邸について、全国的に見ても第一級の近代和風建築物であり、多くの観光客をひきつけている唐津の歴史的街並みに付加価値を与えるなどと評価。移転先は、武士住宅の面影を残す城内地区を望むとし、時期についてはできるだけ速やかにとした。懇話会アドバイザーの西和夫神奈川大名誉教授は、解体した部材が変形することなどから3年以内が適当と指摘している。
 基本構想委は、懇話会のメンバーらにも入ってもらう方針で、移転先やその土地利用などを決める。報告書に盛り込まれた基金の設置、市民協働の仕組みを取り入れる管理・運営などについても具体的に詰める。
 旧大島邸は、邸内にある約300本の樹木が今月末から伐採、移植が行われ、建物は11月上旬にも解体が始まる予定。
西日本新聞    2010年
10月7日
移築保存意見書
唐津市に提出へ

「旧大島邸」活用懇話会


小学校の校舎新築に伴い解体が決まっている唐津市西城内の「旧大島邸」の今後の活用法を考える懇話会が6日、同市大名小路の唐津商工会館であり、「全面的に移築保存すべき」との意見を最終的にまとめた。懇話会は今回で終了し、12日に意見書を市に提出する。市は11月上旬から同邸解体に着手し、懇話会の意見を参考に活用法も検討する方針だ。
 解体は懇話会のアドバイザーを務めた西和夫神奈川大名誉教授が監修する。西教授は「部材は時間を置くと変形し、活用が困難になる。邸宅の復元工事は3年以内がめど」と注文を付けた。
 また活用法については、①まちなかの観光資源②唐津の歴史、文化の学習の場とし、管理・運営については、市民による基金の設置を挙げた。馬渡雅敏会長は「市は、唐津を大切に思う市民の意見を十分にくみ上げてほしい」と話した。 

 朝日新聞  2010年
10月13日 
旧大島邸移築提言の報告書提出
唐津市、検討委設置へ


唐津市西城内にある旧大島邸の解体計画を巡り、市民の意見を聞いてきた「旧大島邸の活用を考える懇話会」の馬渡雅敏会長は12日、「旧大島部を城内地区に全面的に移築保存する」とした報告書を坂井俊之市長に提出した。これに対して、坂井市長は、移築先などを決定する基本構想検討委員会を来年4月にも設置して提言を具体化する方針を表明した。
 報告書は、旧大島邸の歴史的・文化的評価について、懇話会アドバイザーの西和夫・神奈川大名誉教授を団長とする学術調査団の報告書を基に、「全国的に第一級の近代和風建築物」と評価。旧唐津銀行の創立者で、鉄道敷設や唐津港整備に功績のあった大島小太郎(1859~1947年)の自邸を残すことは重要な意義があるだけでなく、「唐津の歴史的まち並みに付加価値を与える」とした。
 旧大島邸は、庭園の石灯寵やつくばいなどを含めた「全面的な移築保存」とし、西名誉教授の監修の下に解体し、城内地区の大島小太郎ゆかりの地への移築を望むとした。具体的な移築先は市が設置する有識者や市の担当者らによる基本構想検討委員会で約1年をかけて検討し、必要な予算措置を議会に求める方針だ。
 復元の時期について馬渡会長は、同市の合併特例債を使えるのが2014年度までであることに加え、解体した部材が変形しないよう「3年以内」が望ましいとした。また、財源として、市民から集めた寄付などを基にした基金の活用も提言した。
 市長は唐津港近くの歴史民俗資料館、名護屋城跡周辺の陣跡、唐津焼発祥の地とされる北波多の「古窯の里」など、市内の歴史的な建物などの整備も、同時に進めると明言。来年4月にも研究会を立ち上げる考えを明らかにした。
 
 佐賀新聞  2010年
10月13日  

唐津市の旧大島邸 城内地区に移築へ

 唐津市の大志小改築に伴う旧大島邸の保存について、活用策を考える懇話会は12日、城内地区への移築保存を求める最終報告書を市に提出した。坂井俊之市長は、解体後3年をめどに移築できるよう検討委員会を立ち上げて基本構想をまとめる考えを示した。解体か、保存かで揺れた問題は、移築保存で決着した。 

 報告書は旧大島邸の価値を「明治中期の意匠の優秀さと特徴を示し、全国的にも第一級の近代和風建築物」とした上で「原則として全面的な移築保存」を提言した。移築場所は城内地区とし、専門家が監修することも求めた。

 移築時期は、西和夫神奈川大名誉教授の「解体後3年以内が望ましい」という意見を踏まえ、できるだけ速やかに基本構想を策定することを求めた。移築後は「市民や観光客が利活用できる施設とする」とし、管理運営に市民の意見が繁栄できる仕組みを取り入れることや、市民が募金などで移築保存に貢献できるよう基金の設置も盛り込んだ。 

 懇話会の馬渡雅敏会長から報告書を受け取った坂井市長は、来年度に移築場所や財源、活用法などを考える「基本構想検討委員会(仮称)」を、市民や建築の専門家、市職員らで発足させる考えを示し、「3年以内の着工を目指したい」とした。 

 市は11月から邸の解体に着手。建材は市内の施設で保管する。坂井市長は「今回の議論を契機に、旧郡部を含む他の歴史的建物や史跡などの整備も進めたい」とし、検討委とは別の研究会を設置する考えも示した。 

 旧大島邸は、隣接する大志小の改築に伴い、解体することになっていた。保存を求める声が上がり、市は7月に懇話会を設置。市民グループやまちづくり団体、市関係者ら12人が協議してきた。 

 邸の保存を求めてきた郷土史家の中里紀元さんは「解体に異議を唱える市民の声に権威のある学者が立ち上がり、文化的、歴史的価値を有していることが再認識された。市はこれまでの経過を重く受け止め、価値が損なわれることがないよう庭園も含めた丁寧な移築をしてほしい」と話した。


毎日新聞   2010年
10月13日 

旧大島邸:唐津市長、移築に前向き 懇話会「速やかに城内に」

 唐津市の和風建築物・旧大島邸の保存活用で、坂井俊之市長は12日、移築保存に前向きな姿勢を示した。また「旧大島邸の活用を考える懇話会」は市長に「ゆかりのある城内地区にできるだけ速やかに移築することが望ましい」とする報告書を提出した。

 報告書は、馬渡雅敏会長が坂井市長と大塚稔教育長に手渡し「報告書を尊重し、速やかな対応を」と要望。坂井市長は「新年度に基本構想の検討委員会を設置し、移築場所やどのように残していくかなどを考えていきたい」と述べた。

 報告書では「第一級の近代和風建築物で(所有者だった)大島小太郎は(旧唐津銀行頭取などを務め)唐津の歴史上重要な人物。自邸が残されることは意義がある」と歴史・文化的に評価した。

 市は同邸を解体し市立大志小の新校舎を建築する計画。今月下旬から樹木の伐採と移植に入り、大島邸解体は11月上旬から約2カ月間を予定している。【原田哲郎】
 

 朝日新聞 2010年
10月14日 
旧大島邸を保存する会
全国まちづくり2位
 「最後まで目光らせる」


 唐津市西城内にある旧大島邸の保存運動に取り組んできた市民団体「旧大島邸を保存する会」が、9、10日に熊本市内で開かれたNPO法人日本都市計画家協会(事務局・東京都)主催の「全国まちづくり会議」で、49の参加団体のうち第2位にあたる「全国まちづくり賞」に選ばれた。会場で発表をした会長の山﨑久美子さん(58)は「励みになる。旧大島邸がちゃんと復元されるよう最後まで目を光らせていきたい」と語った。
 「保存する会」は会場の崇城大学市民ホールで、旧大島邸紹介のパネルや絵はがきを展示。山崎さんがこれまでの会の保存活動や、かつて居住していた大島小太郎について約10分間、参加者にプレゼンテーションをした。
 受賞は、約130人の参加者の投票で決まった。山﨑さんの発表を聞いた、京都市の町家保存に取り組んでいる団体の女性から「いまの時代に逆行していませんか」との質間が出た。旧大島邸の現地保存が実現しなかったことを指してのものだが、山﨑さんは「やっとここまで来ました」と答えたという。
 「保存する会」は今年3月に発足、2千人余の署名を集めて旧大島邸の解体も含む大志小学校の改築工事への公金支出差し止めを求める住民監査請求をするなど、旧大島邸の保存活動を続けてきた。
 
朝日新聞 2010年
11月10日 
 旧大島邸の移築保存
市教委が建具を外す
   監修者に連絡なく


 移築保存の方針が決まった唐津市西城内の旧大島邸のふすまと障子など建具約160点が、解体を監修する西和夫・神奈川大名誉教授への連絡がないまま、市教委職員らによって外されていたことが9日、わかった。市民団体「大島邸を保存する会」は同日、市の責任を問う「質問と要望書」を坂井俊之市長あてに提出した。市教委は「解体前の準備作業」と釈明している。
 市教委によると10月25日、邸内の16室のふすまと障子約160枚を文化課職員らがジャッキなどを使って取り外して別の場所に保管。8月ごろからは、額縁、ついたて、びょうぶなどの家具5点も取り出して保管していたという。
 市教委が設置した「旧大島邸の活用を考える懇話会」(馬渡雅敏会長)は、先月6日にまとめた報告書の中で、「専門家の監修、指導のもとに丁寧な解体保存を行う」と明記。馬渡会長は「懇話会アドバイザーの西名誉教授の監修を受ける」と論議をまとめた。坂井市長も西名誉教授の監修の下での解体の方針を確認していた。
 ところが懇話会後、市から西名誉教授への連絡は無く、報告書も送られていなかった。市教委は「ふすまなどの取り外しは、解体前の準備。西名誉教授には解体の日程が決まってから連絡するつもりだった」と釈明している。
 これに対して、西名誉教授は朝日新聞の取材に対して、「今後、解体をどう進めるかについて、みんなで知恵を出し、力を合わせなければならない時期。市からは、監修について相談もなく心配になっている」と話した。
 また、旧大島邸は今月6日から、邸内の樹木約370本の伐採・移植などの作業が本格化し、既に約20本の立ち木が切られた。庭園にあった高さ約6㍍の常緑のモッコクの木も根本から切られ、これを見た「保存する会」の会員は「見る影もない」と残念がっていた。  (田中良和)
西日本新聞 2010年
11月10日
 解体情報の連絡徹底を
 大島邸を保存する会
 唐津市に要望書提出

 小学校の校舎新築に伴い移築される唐津市西城内の「旧大島邸」をめぐり、市民団体「大島邸を保存する会」(山崎久美子代表)は9日、市に対し、解体工事に関する情報通達の徹底などを求める要望書を提出した。

 同邸の活用法を考えるため10月まで計4回開かれた懇話会では、「懇話会の助言者を務めた西和夫神奈川大名誉教授が解体を監修する」との意見で一致していた。

 市は10月25日、邸内の障子やふすま計約160枚を取り外したが、「解体工事の前段階の作業」として西教授に連絡しなかった。

 同会は「解体に含まれる」と指摘し、(1)解体工事に関する対応窓口を明確にしてほしい(2)解体に関するすべての情報を西教授に報告すべき-などと要望した。田島龍太市教育副部長は「解体前の準備作業で連絡は必要ないとの判断だった。ふすまなどは正式な方法で丁寧に取り外した」と話した。

朝日新聞  2010年
11月19日 
大島邸庭石移設
きょうから始まる
 市教委、「監修者へは連絡」

 移築保存の方針が決まった唐津市西城内の旧大島邸の庭園の庭石と灯寵(とうろう)などの移設作業を19日から始めると、同市教委が18日、発表した。
 市教委によると、移設されるのは庭石約150個、灯籠10基、石柱と五重塔が各1基。19日に市教委の文化財専門員らが業者が現場で打ち合わせ、庭石などに番号を付ける「番付作業」をした上で、22日から移設するという。
 同邸のふすまなどの建具を解体監修者の西和夫・神奈川大名誉教授に連絡しないまま、市教委が取り外したことが問題になったが、今回は、西名誉教授への連絡はすませたという。旧大島邸の解体工事の入札は25日に実施される予定で、12月上旬に着工、来年2月下旬に終える予定になっている。
 
佐賀新聞  2010年
11月22日 
旧大島邸、移築作業進む 庭石や樹木を搬出
 

 市民らの要望を受けて移築保存方針が決まった佐賀県唐津市の「旧大島邸」の移設作業が進んでいる。市教委は今月上旬から樹木の移植・伐採を行い、22日には庭石の搬出も始まった。建物は専門家の監修の下、12月上旬から解体される。建材や庭石、移植可能な樹木は2月末までに保存施設や市有地などに移される。 

 これまでに樹木326本のうち移植が可能な53本をいったん市有地などに移し、搬出や移植が困難なものは伐採した。22日からは飛び石や景石などの庭石約150個のほか、石灯ろう14基、石柱、石塔各1個の搬出が始まった。市教委職員立ち会いの下、造園業者が地中の御影石などを掘り出し、運び出している。 

 建物の解体は西和夫神奈川大名誉教授が監修し、12月初旬に始まる。既にふすまや障子など建具を保存施設に移した。西名誉教授と市の文化財専門員、業者が取り扱いの注意点や作業手順を確認しながら2月末まで行う。

毎日新聞  2010年
11月22日
 
 講演会:まちづくりテーマ
 佐賀出身の建築家、西村氏が
--唐津市民会館
 

 佐賀市出身の建築家・西村浩氏(43)の講演会「大島邸の保存とまちづくりを考える」(大島邸を保存する会主催)が23日午後2時、唐津市民会館で開かれる。

 西村氏は東京大学大学院工学系研究科修士課程を修了。現在は設計事務所のワークヴィジョンズ(東京都)代表。焼失した北海道岩見沢市の岩見沢複合駅舎づくりにかかわり、日本建築学会賞やグッドデザイン賞大賞などを受賞している。

 講演では「まちづくりをどうするか?」をテーマに、市民と行政が手を携えていくにはどうしたらいいかを、岩見沢市などの事例を紹介しながら話す。

 入場料は500円。問い合わせは保存する会の山崎久美子会長090・4510・4127。【原田哲郎】

佐賀新聞  2010年
11月24日 
市民参加で歴史の記憶を未来へ まちづくり講演会

 旧大島邸の保存運動を契機に、唐津市の歴史遺産を生かしたまちづくりを考えようと、佐賀市出身の建築家西村浩さん(43)を迎えた講演会が23日、唐津市民会館で開かれた。西村さんは「市民参加で過去を掘り起こし、未来へ受け継ぐ努力を」と提言した。

 西村さんは「かつては街の歴史が個性だったのに、高度成長期の均質な整備で市街地はどこも似たように衰退した」と指摘。「断絶された歴史の記憶をつないでいくのが私たちの役割」として、市民や行政と連携して手掛けた北海道の岩見沢駅や三重県鳥羽市の海辺のプロムナード整備などを紹介した。

 そのうえで、「市民協働の手法で仲間が広がり、まちづくりに“自走力”が生まれた。地域のアイデンティティーを取り戻すには、市民の力が欠かせない」と訴えた。講演会は「大島邸を保存する会」(山崎久美子会長)が企画、約50人が参加した。

 
読売新聞   2010年
11月23日
旧大島邸庭石
移設始まる


唐津市西城内の大志小学校舎改築に伴って移築保存される旧大島邸で、庭石類の移設が22日から始まった。
12月上旬までに終了。この後、建物の解体に入り、来年2月頃まで行われる予定。
 庭石類は、邸内を歩く際の飛び石、庭から家へ入る際の靴脱ぎ石、灯籠、石塔など約170個。大半が御影石製で、大きいものは4,5トンもあるという。いずれも業者が前もって番号を貼り付けたうえ、北と南側に赤い印を付けており、再現しやすいようにしている。
 この日は、作業員が庭石類にロープなどをかけて、4トントラックのクレーンでつり上げ、二台に慎重に載せていた。 
朝日新聞   2010年
11月25日
大志小の改築工事
12年度にずれ込み

     唐 津 市

唐津市は24日、来年度までに終える予定だった市立大志小学校の改築工事が遅れ、2012年度までずれ込むと発表した。隣接する旧大島邸解体を巡る協議などに時間がかかったためと説明している。
 市によると、大志小の改築工事は10月に着工の予定だったが、来年1月着工に変更。今年度は、移築保存が決まった旧大島邸の「慎重な解体」を中心に工事を進め、小学校の校舎新築の本格工事は来年度に回す。旧校舎の解体を含めた工事が終わるのは12年9月の予定。総事業費約12億7600万円に変更はなく、新校舎での授業開始は予定通り12年4月1日という。
 改築工事の入札は17日にあり、唐津土建・井手共同企業体(JV)が約6億7千万円で落札している。
NHK佐賀  2010年
12月7日 

旧大島邸解体始まる

移築することが決まった唐津市にある明治中期の和風建築、旧大島邸の解体作業が7日から始まりました。
唐津市にある「旧大島邸」は明治中期の和風建築で隣接する小学校の改築のため取り壊される予定ですが保存を求める住民などの意見を受けて市は別の場所に移築して保存する方針を決めています。
7日は市や土木建築の関係者などが集まり、建物の解体が安全に進むよう祈願しました。
このあと解体作業を監修する建築史学会の元会長で神奈川大学の西和夫名誉教授が柱などに番号などを書き込んでいく番付打初式と呼ばれる作業を行い解体作業がスタートしました。
建物の解体は来年2月末までかかるということで西名誉教授は「一つ一つの作業を慎重に進めて行きたい」と話していました。

12月07日 20時24分

 
佐賀新聞  2010年
12月8日 
「旧大島邸」解体始まる
  2月末までに完了予定

 移築保存の方針が決まった佐賀県唐津市の明治期の木造建築物「旧大島邸」の解体工事が7日、始まった。2月末までの予定で、西和夫神奈川大名誉教授が監修する。着手は当初計画から5カ月遅れたが、解体後に建設される大志小の新校舎は、予定通り2011年度内に完成できるという。

 旧大島邸は一部2階建て、延べ床面積約450平方メートル。建材はすべて保管し、土壁は崩して再利用する。作業員10~15人に加え、西名誉教授と同大の研究生ら5人が常時交代で監修する。

 瓦などの構造物や建材を上から順に取り外し、木材には位置や方角を示す番付と呼ばれる札を打ちつける。外側に見える木材は梱包(こんぽう)し、市内の保管場所に運ぶ。解体工事費は4300万円。

 7日は安全祈願があった。神事の後、監修メンバーが作業に取りかかる番付打ち始め式を行い、作業手順を確認した。西名誉教授は「小学校改築に支障をきたさないよう、段取りを工夫して無駄なく取りかかりたい」と話した。

 
朝日新聞  2010年
12月8日 
移築保存の旧大島邸
柱に番付札
解体始まる


 移築保存が決まった唐津市西城内の旧大島邸を解体する工事が7日、始まった。解体作業を監修する西和夫・神奈川大名誉教授らがさっそく、番号を書いた「番付札」を柱に取り付けた。
 旧大島邸は、明治時代中期の和風住宅で、木造平屋一部2階建てで延べ床面積約450平方㍍。解体作業は「映画のフィルムを逆回しするように、建てたときとは逆に作業を進める」(西名誉教授)。瓦から始めて、天井板や柱など約5千点の部材をすべて外して別の場所に保管し、移築場所に運んで組み立てる。その最初の作業が、柱に「い一」などの番号札を付ける「番付打初式」だ。
 工事は11月25日の入札で、唐津土建が約4300万円で請け負うことが決まった。実際に作業を進める10~15人の大工が、西名誉教授らの監修を受けながら、部材に傷をつけないよう作業を進める。
 西名誉教授は「一番大事なのは、建物を再現すること。いまは、ほどくのが始まっただけ」と話した。解体は来年2月末までに終える予定だ。
 
毎日新聞  2010年
12月9日 

旧大島邸:解体始まる 部材「番付札」取り付け

 移築保存される唐津市西城内の和風建築・旧大島邸の解体工事が始まった。現在は解体を監修する西和夫神奈川大名誉教授らが部材の位置を示す「番付札」の取り付け作業を進めている。解体工事は来年2月までに終える予定。
 作業は西名誉教授ら監修メンバー6人と解体業者10~15人が柱や天井板などに「い一」などと書いた札を取り付けている。部材は約5000点あり、すべて外して別の場所に保管される。
 同邸は旧唐津銀行頭取など務めた大島小太郎の自邸。明治時代中期の和風住宅で木造一部2階建て、延べ床面積約450平方メートル。【原田哲郎】
 
佐賀新聞  2010年
12月11日
 
旧大島邸の移築
財政と整合性を
    唐津市


 唐津市議会では、旧大島邸の問題などについて、5議員が質問した。
 旧大島邸は小学校改築に伴う解体が市議会で決まっていたが、市は反対運動の高まりから懇話会を設置、移築保存に向け基本構想をまとめることに方針転換した。
 これに対し「3月議会で保存を求める請願は不採択だったのに、議会が知らされないまま保存が決まっている。大きな方針転換が市役所内でも十分に論議されていない。多額の支出が必要となる保存は将来の財政計画とも整合性がとれなくなる」との指摘があった。
大谷正広教育部長は「議会への配慮が足りなかった」と陳謝したうえで、「今後は基本構想の検討委員会で十分検討し、議会の理解を求めたい」とした。
 
NHK
佐賀放送 
2010年
12月28日

旧大島邸基金を1月に設置へ

移築保存のために解体作業が行われている唐津市の「旧大島邸」について、建物の保存運動に取り組んできた住民で作るグループなどが1月下旬から旧大島邸の基金を設置し、移築後の建物の維持費などに活用するため寄付金を募ることになりました。
隣接する小学校の改築のため解体作業が進んでいる唐津市の旧大島邸は、明治中期の和風建築で、市は、保存を求める住民などの意見を受けて別の場所に移築して保存する方針です。
これについて、旧大島邸の保存運動に取り組んできた「城内を考える会」のメンバーなどが移築後の建物の活用に住民が主体となって関わろうと基金を設置することになりました。
基金は、▼移築後の建物の維持費や管理費として使用するほか▼イベントの開催など市民や観光客などによる建物の利用に有効活用するということです。
メンバーらは、▼県内外の個人や企業に協力を呼びかけるほか、▼「ふるさと納税制度」を利用して寄付できるようにすることを検討しているということです。
メンバーは、1月下旬以降県内外から広く寄付金を募ることにしています。

   12月28日 19時04分 

朝日新聞  2011年
1月5日
 
旧大島邸、周辺施設とつないで活用
「歴史ゾーン」づくり
  唐津市、3月に検討委
 
 唐津市の坂井俊之市長は4日の年頭記者会見で、移築保存の決まった旧大島邸の活用方法などを話し合う基本構想検討委員会を3月にも立ち上げる方針を明らかにした。坂井市長は「唐津城、旧高取邸、旧唐津銀行、歴史民俗資料館などとつないで、観光客らが散策できる面的整備をしたい」との構想を述べた。
 同市西城内にある旧大島邸は昨年11月から樹木の伐採などが始まり、住宅の解体も今月から本格化する。検討委員会は、市の担当者の他、市民代表、専門家ら約40人で構成。約1年間かけて議論した結果を市長に報告する。建築、歴史、教育などの分科会も設置する予定。
 坂井市長は移築される旧大島邸について「市民の使い勝手のいいものにしたい。子供たちが唐津の経済発展に貢献のあった大島小太郎について学ぶ場にもしたい」と表明。特に、城内地区を中心とした他の観光施設とつながりのある「歴史ゾーン」づくりを重視する考えを示した。
 復元時期については、解体した部材が変形しない3年以内としている。ただ、坂井市長は「全面的な移築保存が原則だが、朽ちた部材は捨て、最終的にどう復元するかは話し合って決める」と述べた。
 
 
 NHK
佐賀放送
2011年
1月18日
 20時44分
 旧大島邸 基金を設置

移築して保存されることになっている唐津市の「旧大島邸」の保存運動に取り組んでいる住民グループなどが、移築後の維持費などに活用してもらおうと基金を設けました。
唐津市の旧大島邸は、明治中期の和風建築の建物で、保存を求める住民などの意見を受けて市が別の場所に移築して保存することにしています。
旧大島邸の保存運動に取り組んできた「城内を考える会」のメンバーや唐津商工会議所などは建物の移築後の活用に住民が主体となってかかわろうと基金を設け、18日、設立総会を開きました。
総会では、▼1月中に設ける基金用の口座に一口1000円から寄付できるようにすること▼県の内外の個人や企業に協力を呼びかけ、集めた資金を建物を所有する市に寄付することが決まりました。
また具体的な使い道としては、▼建物の維持費や管理費、▼イベントの開催などにあてて、市民や観光客などによる建物の利用に有効活用するということです。

01月18日 20時44分

サガテレビ  2011年
1月18日 
20:16 フラッシュニュース 
旧大島邸基金設立へ委員会発足
解体・撤去から移築・保存の方針が決まった唐津市の旧大島邸を管理・運営するため、基金の設立をめざす市民委員会が18日発足しました。市民委員会は経済団体や市民グループなどの代表が発起人となり発足したもので会長に唐津商工会議所の太田善久(おおたよしひさ)会頭が選ばれました。旧大島邸は小学校の建て替えに伴い解体される計画でしたが、市民グループの運動をきっかけに懇話会が、高い文化的価値を認め、移築・保存の方針が決まりました。市民委員会の初会合では、旧大島邸の復原やその後の運営に協力するため、基金の設立をめざすことを確認し、募金活動や講演会の開催などに取り組むことになりました。募金活動は来月にも始め、特に目標金額は設けず、集まった善意を唐津市に寄付することにしています。
  
西日本新聞  2011年
1月18日 

旧大島邸の管理・運営
 有志が基金設立 唐津市

2011年1月18日 01:06

小学校の校舎新築に伴い移築保存される「旧大島邸」(唐津市西城内)の管理・運用に活用する「大島邸基金」が設立される。発起人は同邸の保存活動に取り組んできた市民団体「城内を考える会」の辻いく子代表ら9人。18日には唐津商工会議所で第1回会合が開かれる。

 同邸の活用法を考えるため昨年8月から10月まで計4回開かれた懇話会では、「市民が移築保存に貢献することを目的とした基金を設置する」との方向性が打ち出されていた。その後、辻代表が参加を呼び掛け、基金設立が実現した。

 発起人には、同商議所の太田善久会頭や唐津観光協会の都市右太雄会長らが名を連ねる。顧問には、同邸の解体工事に携わる西和夫神奈川大名誉教授と、かつて同邸の管理人をしていた印刷会社社長の松尾武彦さん(同市呉服町)が就く。

 基金の目標金額や募金方法については、発起人による会合で今後決めていく。「誰でも参加できる仕組みにしたい」と語る辻代表は「市民全体で大島邸を守りましょう」と基金への協力を呼び掛けている。

 
朝日新聞   2011年
1月19日
移築・運営の基金設立
旧大島邸募金呼びかけへ


 移築保存の決まった唐津市西城内の旧大島邸の移築や運営費用の一部を市民の手で集めようと「旧大島邸基金」を設立することになり、18日、市内に発起人が集まり、市民委員会を発足させた。さらに賛同する団体を募り、2月中には市内外の人たちに一口千円の募金を呼びかけることにしている。
 旧大島邸の移築保存を提言した「旧大島邸の活用を考える懇話会」の報告書には、「市民自ら移築保存に少しでも貢献することを目的とした基金等を設置する」と明記されており、今回の基金設立はこうした経緯を踏まえたものだ。
 この日の会合には、唐津商工会議所、唐津観光協会、唐津焼協同組合、茶道表千家唐津などの団体の代表ら9人が集まり、市民委員会の発足を決めた。会長には、唐津商工会議所の太田善久会頭を選出。懇話会のアドバイザーを務め、解体工事の監修も引き受けている西和夫・神奈川大名誉教授は市外在住ながら、「象徴的な存在」として顧問に就任した。
 懇話会の馬渡雅敏会長は監事に就任。復元後の旧大島邸の活用について「市が管理している旧高取邸などとは違って、お花の会や文化的な催しなど誰でも使えるようなものにしてほしい、との意見が発起人の間から出た。自分たちの手で基金を集め、3年以内といわず、なるべく早く復元できる手助けになればいい」と語った。
 旧大島邸は昨年12月から解体工事が始まっているが、坂井俊之市長は4日の年頭記者会見で、移築後の活用方法などを話し合う基本構想検討委員会を3月にも立ち上げる方針を表明している。市民委員会への問い合わせは、事務局の唐津商工会議所(0955・72・5141)へ。
    ◇
 唐津市教委は18日、市民を対象にした旧大島邸の解体工事の見学会を今月22日と来月11日の2回にわたって開催すると発表した。
 
佐賀新聞   2011年
1月19日 
旧大島邸、移築保存支援へ基金創設 唐津市

 移築保存の方針が決まった明治期の木造建築物「旧大島邸」(唐津市西城内)の移築費用などを支える基金創設に向け、「旧大島邸基金市民委員会」が18日、発足した。邸の活用を考える懇話会の委員らが発起人で、2月から募金を呼びかけ、市に寄付する。 

 発起人は懇話会の馬渡雅敏会長や市民団体「城内を考える会」の辻いく子代表、唐津商工会議所の太田善久会頭ら9人。この日の発起人会では、募金活動のほか講演会など邸の啓発活動を行う規約を確認し、太田会頭を会長に選んだ。 

 事務局は唐津商工会議所に置き、移築やその後の管理運営費として募金を集める。一口千円で、委員も募る。

 旧大島邸は、当初は解体される予定だったが、保存を求める声が上がり、市民や市職員らによる懇話会で協議。城内地区に移築保存することが決まった。懇話会の最終報告に基金設置も盛り込まれていた。

 
毎日新聞   2011年
1月19日 
 旧大島邸:移築保存へ基金発足
 来月中に募金活動スタート
 /佐賀

 唐津市の和風建築物・旧大島邸(旧唐津銀行頭取など務めた大島小太郎邸)の移築保存に向け、同邸基金市民委員会が18日発足した。2月中には募金(1口1000円)活動をスタートさせる。
 この日の発起人会で、会長に唐津商工会議所の太田善久会頭を選び、顧問には西和夫・神奈川大名誉教授らが就任した。
 基金は、旧大島邸の早期復元と復元後の運営協力が目的。市内外の各種団体に募金協力を呼びかけるほか、講演会やチャリティーバザーなどを通して啓発活動をする。
 基金の設立趣意書では「移築保存された大島邸の活用を考えた場合、登録文化財として広く市民に利用してもらうことが大切」と指摘し「子供の情操教育の場として活用できる市民の財産として、管理運営するためにも基金設立が望まれる」と基金の必要性を訴えている。
 問い合わせは同会議所0955・72・5141。【原田哲郎】
NHK
佐賀放送 
2011年
1月23日 
 旧大島邸解体作業の見学会

移築して保存されることが決まり現在解体作業が行われている唐津市の「旧大島邸」で、解体作業の進行状況などを見てもらおうと見学会が開かれました。
唐津市にある「旧大島邸」は明治中期の和風建築の建物で隣接する小学校の改築のため取り壊されることになっていましたが、保存を求める住民などの意見を受けて唐津市は別の場所に移築して保存することを決めています。
22日は建物を解体する作業の進み具合などを地元の人たちに見てもらおうと市が見学会を開きました。
見学会にはおよそ40人が集まり、工事を監修する建築史学会の元会長で神奈川大学の西和夫名誉教授が参加者に建物の解体はことし3月下旬までかかることや茶室や主屋などの解体の状況を説明しました。
この中で、西名誉教授は「解体するにつれて茶室はあと1年ももたないほど傷みがひどかったことがわかった。いま解体していなければいつ壊れてもおかしくない状況だった」と話しました。
参加者たちはメモをとったり建物をじっくり見たりしながら、熱心に説明に聞き入っていました。
この見学会は2月11日にも開かれる予定です。

01月23日 09時53分


佐賀新聞  2011年
2月5日 
 
旧大島邸の棟梁、旧高取邸と同じ人物
 屋根板に名前

 佐賀県唐津市にある明治期の近代和風建築物「旧大島邸」を建てた棟梁(とうりょう)と、同市の国重要文化財「旧高取邸」を建てた棟梁が同一人物であることが分かった。旧大島邸の母屋の屋根に使われていた板に墨で名前が書かれていた。 

 旧大島邸の移築保存のための解体工事で「明治廿六(二十六)年旧四月十八日建之 棟梁 吉田吉次郎」と書かれた板(長さ193センチ、幅16・3センチ)が見つかった。 

 邸の解体を監修する西和夫神奈川大名誉教授によると、棟梁は唐津出身で、明治37年に建てられた旧高取邸の工事年月日や建築者を記す「棟札」に棟梁として同じ名前があるという。 

 母屋の建築時期は西名誉教授らの調査で明治17~26年と判明していたが、だれが建てたかは分かっていなかった。西名誉教授は「建築年代と大工の技術の高さを裏付ける物的証拠で、建物の文化財的価値を評価する上で重要な発見」と話す。

写真 
旧大島邸の解体工事で見つかった、棟梁の名前と日付が書かれた板=唐津市の同邸
朝日新聞  2011年
2月12日 
移築解体進む旧大島邸

「明治廿六(にじゅうろく)年」に産声
                                     
 移築のための解体工事が進む唐津市西城内の旧大島邸で11日、見学会があり、「明治廿六年旧四月十八日建之」と建築年代を墨書した天井板が公開された。工事を監修している西和夫・神奈川大名営教授は「これまではっきりしなかった建築年代が、墨書の発見で確定した」と語った。また、同市の国指定重要文化財、旧高取邸を手がけた棟梁が旧大島邸を建築したこともわかった。 (田中良和)

天井板の墨書から判明
 この天井板は、解体工事中の今月1日、南広縁のひさし付近から発見された。幅約15センチ、長さ約190センチ、厚さ約1センチ。表には「明治廿六年旧四月十八日建之 棟梁 吉田吉次郎」と墨書されていた。旧大島邸は、施主や建築年月日などを記した「棟札」は見つかっておらず、この墨書が建築年代を特定する唯一の証拠となった。
 西名誉教授が調査団長として昨年9月にまとめた「旧大島邸学術調査報告書」では、建築年代を1893(明治26)年~1906(明治39)年と推定したが、年月までは絞り切れていなかった。
 棟梁の吉田吉次郎は、旧高取邸や旧唐津銀行本店など唐津を代表する建物を手がけたことで知られていたが、旧大島邸を建築したことがわかったのは初めて。複雑な工法が使われていたため、解体工事は一時、難航したが、墨書の発見で棟梁が吉田とわかり、旧高取邸の修復工事の経験を生かして2月以降は急ピッチで進んだという。
 広い主屋と茶室、庭園を抱えていた旧大島邸も玄関口を残してすべて解体された。後は工事の足場を外し、20日前後には更地にする。
 この日の説明会で西名誉教授は「旧大島邸は木と木が細かく組み合わされていて、ほどくのが難しかった。それだけ丁寧につくられた質の高い建物だった。墨書は旧大島邸の来歴を知るうえで大きな発見」と語った。
 
佐賀新聞  2011年
2月11日 
旧大島邸解体工事公開
 「棟梁」の仕事、目の当たり


 移築保存に向けて解体が進んでいる唐津市の旧大島邸で11日、工事見学会があった。市内の国重要文化財・旧高取邸と同じ棟梁(とうりょう)が手掛けたことを示す屋根板の墨書などが公開され、訪れた市民約30人が熱心に見入った。 

 解体作業を監修する西和夫・神奈川大名誉教授が、屋根板の墨書によって1893(明治26)年の建築年代が判明した経過などを報告した。名前が記された棟梁の吉田吉次郎について、市教委の田島龍太副部長が説明。1855(安政2)年に近くの坊主町に生まれ、筆頭棟梁として旧高取邸のほか、旧唐津銀行本店の建設などに腕を振るったことが紹介された。 

 訪れた同市の福島環さん(79)は「約120年前の丁寧な仕事ぶりがうかがえる」と話した。解体は柱や梁(はり)の一部と基礎石などを撤去し、今月下旬に終了する見通しになっている。

 
NHK
佐賀放送 
2011年
2月11日 

旧大島邸の建築年代資料が発見

文化的な価値が高いとして移築して保存されることになっている唐津市の明治中期の和風建築、「旧大島邸」の解体工事の見学会が開かれ、解体作業の中で明治26年に建物が建築されたことを示す資料が初めて見つかったことが紹介されました。
見学会は、唐津市が1月に続いて開き、市民およそ30人が参加しました。
解体作業は、主屋の一部を除いてほぼ終わっていて、参加者たちは解体工事を監修する神奈川大学の西和夫名誉教授からこれまでの作業について説明を受けました。
西名誉教授は、主屋の南側にある縁側の天井板を見せ、裏側に大工の親方である棟りょうの名前とともに建物の建築年代を示す「明治廿六年」と墨で書かれていたことを紹介しました。
西名誉教授によりますと、建物の建築年代を特定する資料が見つかったのは初めてだということで、貴重な発見だとしています。
旧大島邸の解体作業は、予定より3週間ほど早く2月末に終わる見通しで、唐津市は今後、地元の住民や専門家などで作る委員会を設置し、移転先を決めることにしています。

     02月11日 19時48分

 
朝日新聞  2011年
2月19日 
 大島小太郎の足跡
伝える品75点展示

   来月5日から唐津

 旧唐津銀行の創立者で、唐津市の近代化に大きな足跡を残した大島小太郎(1859~1947年)とその時代を紹介する展示会が3月5日から同30日まで、同市近代図書館で開かれる。自邸の旧大島邸の解体をめぐり関心が高まったことを受けたもので、小太郎についての本格的な展示は初めて。
 展示は「明治と唐津藩」から始まり、小太郎と父親の大島興義の年譜や写真、同時代に交流のあった人物像、鉄道、電力、港、銀行と広範にわたった小太郎の仕事ぶりなどが6部に分けて紹介される。特に、注目されるのは、解体作業で取り外された旧大島邸の「菊と鳥」の絵が描かれた床の間の天袋などの建具や、ついたて、ひな人形などの文物類。計75点を展示する予定だ。
 近代図書館の田島龍太館長は「明治、大正、昭和の3代を生きて、唐津の近代化に貢献した大島小太郎の人と時代をこの機会に知ってほしい」と話している。
 期間中の午前10時~午後6時(入場は午後5時半まで)。月曜休館。入場無料。問い合わせは近代図書館(電話0955・72・3467)へ。



大島邸移築
募金箱設置へ

唐津の市民委員会20カ所に


 唐津市西城内の旧大島邸の移築や運営費用の一部を市民の手で集めようと発足した「旧大島邸基金市民委員会」の第1回総会が18日、聞かれ、募金活動がスタートした。事務局の唐津商工会議所や商店など20カ所に募金箱を設置するほか、郵便振込用紙を使って1口千円の寄付を募る。
 総会には、市内の各団体の代表ら約20人が参加。唐津商エ会議所の太田善久会頭の会長就任など役員と規約を承認した。寄付集めの方法については、5千円以上の寄付をした場合、確定申告をすれば所得税と個人住民税の税額控除を受けられる「ふるさと寄付金」の適用も検討。今後、市側と調整するという。
 坂井俊之市長は1月4日の年頭会見で、旧大島邸の移築場所や活用方法などを話し合う「基本構想検討委員会」を3月にも立ち上げる方針を表明している。市民委員会は、市側の動きに合わせて、資金と運営の両面で市との役割分担のあり方を探っていくことになりそうだ。
 基金の問い合わせは、唐津商工会議所(電話0955・72・5141)へ。
西日本新聞  2011年
2月19日 

旧大島邸基金の募金活動を開始

 小学校の校舎新築に伴い移築される「旧大島邸」(唐津市西城内)の復元や運営に協力しようと、「旧大島邸基金」市民委員会(会長・太田善久唐津商工会議所会頭)は18日、募金活動をスタートした。

 同商議所や唐津観光協会など、活動に賛同する団体や企業に募金箱を設置したほか、「一口千円」で寄付を募る。委員会事務局を務める辻いく子さんは「期間も目標額も決めていません。息の長い活動になりますが、市民みんなの手で旧大島邸を復元しましょう」と呼び掛けている。

寄付は郵便振込口座「01710-8-122362 『旧大島邸基金』市民委員会」まで。
同委員会事務局(唐津商工会議所内)=0955(72)5141。

=2011/02/19付 西日本新聞朝刊=

 
佐賀新聞  2011年
2月19日 
旧大島邸、移築保存支援へ基金創設 唐津市

 移築保存の方針が決まった明治期の木造建築物「旧大島邸」(唐津市西城内)の移築費用などを支える基金創設に向け、「旧大島邸基金市民委員会」が18日、発足した。邸の活用を考える懇話会の委員らが発起人で、2月から募金を呼びかけ、市に寄付する。
 発起人は懇話会の馬渡雅敏会長や市民団体「城内を考える会」の辻いく子代表、唐津商工会議所の太田善久会頭ら9人。この日の発起人会では、募金活動のほか講演会など邸の啓発活動を行う規約を確認し、太田会頭を会長に選んだ。
 事務局は唐津商工会議所に置き、移築やその後の管理運営費として募金を集める。一口千円で、委員も募る。
 旧大島邸は、当初は解体される予定だったが、保存を求める声が上がり、市民や市職員らによる懇話会で協議。城内地区に移築保存することが決まった。懇話会の最終報告に基金設置も盛り込まれていた。

読売新聞  2011年
2月19日 

旧大島邸復元へ募金活動を開始唐津で市民委総会

 唐津市の旧大島邸の復元や復元後の運営に協力するために募金を集める「旧大島邸基金」市民委員会の第1回総会が18日、唐津商工会議所で開かれ、規約や役員などを承認し、募金活動を始めた。商議所や唐津観光協会の窓口などに募金箱が置かれ、さっそく募金に応じる市民もいた。

 総会には、委員会にボランティアで参加する18人が出席。会長の太田善久・商議所会頭が「唐津は文化都市として生きないといけない。旧大島邸の保存に勢いがあるうちに、募金活動を盛り上げていこう」などとあいさつした。

 募金箱のほか、振り込み(郵便振込口座番号01710―8―122362、名義は「旧大島邸基金」市民委員会)で、一口1000円(何口でも可)から受け付ける。目標額は設定せず、一定の額が集まれば、市へ寄付する。問い合わせは唐津商工会議所(0955・72・5141)へ。

 NHK
佐賀放送
2011年
2月19日 

旧大島邸基金で寄付呼びかけ

唐津市の明治中期の和風建築「旧大島邸」の保存運動を進めているグループは18日総会を開き保存に賛同する署名をした6000人あまりの人たちに建物の活用に関する基金のために寄付を募ることを決めました。
明治中期の和風建築唐津市の旧大島邸は、保存を求める住民グループなどの意見を受けて移築されることになり、1月グループなどは移築後の建物の維持費などに活用してもらおうという「旧大島邸基金」を設置していました。
唐津市で18日行われた総会では基金のための寄付をどのように集めていくのか話し合われ去年、グループが行った署名活動で運動に賛同してくれた人たちに寄付を呼びかけることを決めました。
署名をしてくれた人は全国各地の6000人あまりでグループは基金用の口座に一口1000円から寄付できる振込用紙などを郵送したいとしています。
また、基金に賛同した地元の商店街や唐津商工会議所などにあわせて20個の募金箱を設置するということです。02月19日 09時20分

佐賀新聞  2011年
2月20日 
「旧大島邸」移築へ募金始まる
 唐津市民委呼びかけ


 移築に向けて解体工事が進む明治期の和風建築「旧大島邸」(唐津市西城内)の移築を支えるための募金活動が始まった。1月に発足した「旧大島邸基金」市民委員会(会長・太田善久唐津商工会議所会頭)が取り組み、市に寄付する。
 唐津商工会議所や唐津観光協会の事務所など市内各地に募金箱を設置。振り込みでも受け付ける。郵便振替で一口千円から。口座番号は01710-8-122362、口座名は「旧大島邸基金」市民委員会。同委員会は「移築やその後の運営には相当の費用が予想される。市民の力で文化的財産を守り継いでいきたい」と協力を呼びかける。
 18日は、太田会長ら発起人のほか、商工観光、茶道関係者ら約20人が総会を開き、活動の趣旨を確認。発足時に決まっていなかった副会長や理事ら役員を選んだ。
 募金に関する問い合わせは唐津商工会議所内の同委員会事務局、電話0955(72)5141へ。

佐賀新聞  2011年
3月7日 
唐津発展の礎、大島小太郎の功績を紹介

 唐津市 近代唐津の発展を支えた大島小太郎の功績を顕彰し、当時の歴史をたどる「大島小太郎とその時代」展が、唐津市近代図書館で開かれている。江戸から昭和にかけての絵図や大島家文書、移築される「旧大島邸」の建具など約70点を紹介。鉄道や港湾など社会基盤整備の礎を築いた人物像と唐津発展の背景に迫っている。30日まで。
 大島小太郎は1859(安政6)年、唐津生まれ。辰野金吾ら多くの俊才を育てた唐津藩英語学校「耐恒寮」で高橋是清に学び、1885年に唐津銀行の初代頭取に就いた。
 唐津興業鉄道や唐津築港会社、唐津電灯会社、佐賀県初となる図書館も設立。1919年には60歳で北九州鉄道(筑肥線)を整備するなど、88歳で生涯を閉じるまで地域の発展に尽くした。
 会場では、その業績を鉄道、電力、銀行、港湾のテーマ別に当時の資料や写真パネルで紹介。唐津藩士だった大島家の文書や、邸宅とした旧大島邸のふすまや床の間の天袋など市所蔵資料も飾っている。
 唐津市教育委員会主催で入場無料。開館は午前10時から午後6時まで(月曜は休館)。
 
NHK
佐賀放送 
2011年
3月8日 
歴史建物を生かす委員会に

唐津市は移築作業が行われている和風建築の「旧大島邸」の活用方法を検討する委員会を設置することにしていますがこの委員会では国の重要文化財の「旧高取邸」など中心市街地に点在する歴史的建造物などを活用したまちづくりも考えていく方針を決めました。
住民などの意見を受けて移築作業が進められている唐津市の明治中期の和風建築「旧大島邸」について、坂井俊之市長は移築後の活用方法などを検討する委員会を設ける方針を示していました。
この委員会について唐津市は旧大島邸だけではなく、国の重要文化財の旧高取邸など城下町の風情を色濃く残す中心市街地の建物などを活用したまちづくりもあわせて考えていく方針を決めました。
委員会は4月設置する予定でメンバーには建築の専門家や住民などから選ぶ方針です。
唐津市は、委員会の設置に必要な予算として330万円あまりを市議会に計上しています。

03月08日 10時01分

読売新聞  2011年
3月17日 

旧大島邸の主人紹介する展覧会・・・唐津市近代図書館

移築保存で解体された唐津市の「旧大島邸」の主人だった旧唐津銀行頭取・大島小太郎(1859~1947年)を紹介する展覧会が、市近代図書館の1階美術ホールで開かれている。

 邸を保存すべきかどうかの議論のなかで大島の業績や屋敷が見直され、ゆかりの明治洋風建築物「旧唐津銀行」が26日に改修オープンすることから、市教委が大島に関して理解を深めてもらおうと企画。写真パネルや文書のほか、邸の建具類など約75点が展示されている。

 会場は、歴史資料と旧大島邸の遺産に大きく分かれている。歴史資料では、敷設に尽力した現在のJR筑肥線の妙見駅(現西唐津駅)の明治終わりから大正初期の写真、「電力王」と言われた松永安左衛門ら経済界との交流図、恩師で後に首相を務めた高橋是清からの直筆のはがきなどが並ぶ。大島が唐津の近代を開いた先駆者と分かるようになっている。

 遺産のコーナーでは、桜や紅葉をあしらったふすま絵「春秋図」、菊や鳥が描かれた床の間天袋など、華やかな色彩が訪れた人たちを魅了している。30日まで。月曜休館。入場無料。

(2011年3月17日  読売新聞)
朝日新聞  2011年
5月21日 
 「城内まちづくり」
唐津市計画策定委
 27日発足

 唐津市の旧大島邸の移築先などを含む城内地区のまちづくり計画を話し合う市の計画策定委員会が27日に発足することが20日、わかった。城下町の風情が残る城内地区のまちづくりの中で、旧大島邸の活用を考える。11月には計画案をまとめて坂井俊之市長に報告。市はこれを受けて計画を作成し、来年度から実行に移す予定という。
 27日に第1回の会合を開くのは、「文化的資源を活用した城内まちづくり計画策定委員会」。すでに学識経験者らからなる12人の委員が決まっている。委員会では、旧大島邸にとどまらず、国指定の重要文化財、旧高取邸や、今年没後100年を迎えた、福岡県久留米市出身の洋画家青木繁の絵を展示する河村美術館などのある城内地区全体の町づくり計画を検討する。
 12人の委員の内訳は、唐津市内在住を4人にとどめ、残りは福岡、佐賀両市、長崎県など市外の専門家を起用、「外からの目」の活用をめざす。また、議論の様子はインターネットで実況中継、ツイッター機能を使って外部からその場で意見を表明できるような仕組みも考えているという。
 27日は、委員らが、現地を知るために旧唐津銀行から唐津城まで、城内地区を歩いたうえで初会合に臨む。旧大島邸の文化的価値については、解体の監修者を務めた西和夫・神奈川大名誉教授が説明する。
 旧大島邸は、旧唐津銀行の初代頭取などを務めた大島小太郎(1859~1947)の自邸だった。「明治時代中期の大規模、上質な和風住宅」とされるが、すでに解体され、その部材は市内に保管されている。
朝日新聞  2011年
5月28日 
「唐津焼の展示施設を」
 唐津市の旧大島邸の移築先を含む城内地区のまちづくりを話し合う市の「城内まちづくり計画策定委員会」の初会合が27日、開かれた。12人の委員の中からは「城内に、全国ブランドである唐津焼の資料館や展示施設の設置を考えてほしい」との声も出た。今後4回の会合を開き、11月には計画案をまとめる予定だ。
 唐津焼の展示場を提案したのは、陶磁器研究で知られる東中川忠美・前県立名護屋城博物館長。「唐津焼の展示施設が無いのは寂しさを感じる」と指摘。地元委員からも「唐津駅を降りたら焼き物の町がひろがっているという風にしたい」との声が出た。
 また、東京電機大学の松岡恭子・准教授は「密集した地域に価値の高いものがかなりある。一個、一個の宝石をつなぐヒモの話を組み上げていかなければならない」と語った。
 旧大島邸解体工事の監修役を務めた神奈川大学の西和夫・名誉教授は「旧大島邸は非常に傷んでいたが、再修復すれば、全体の見事な構成が生き返る。庭の豊かな緑も再現を図ることが望ましい」と述べた。
 委員会は(1)城内地区のまちづくりの全体構想(2)旧大島邸の移築保存場所の選定と活用方法(3)唐津城、河村美術館など文化施設の活用計画などを策定する。6月上旬に旧大島邸などのワーキンググループを立ち上げ、具体的な作業を始めるという。(田中良和)
 
 
毎日新聞  2011年
5月28日 

唐津市:城内地区の旧大島邸など活用検討 まちづくり委が発足

 唐津市は27日、和風建築物・旧大島邸(旧唐津銀行頭取などを務めた大島小太郎邸)の移築先や利活用方法などを検討する委員会を発足させた。メンバーは有識者ら12人で、委員長に竹下輝和・九州大教授を選んだ。今年11月に計画案をまとめ坂井俊之市長に報告し、市は来年度から計画を実行する。
 この日は委員らが旧大島邸のあった城内地区を約2・5キロ歩いて現状を把握した後、協議に移った。旧大島邸の解体を監修・指導した西和夫・神奈川大名誉教授は「明治26年の建造で、棟梁(とうりょう)もわかった。建物の意匠と技術が極めて優れており、大島小太郎は唐津の歴史上重要な人物で学ぶべきものが多い」などと文化的価値を評価した。
 城内地区には旧高取邸や唐津城天守閣など多数の文化施設があり、計画ではこれらの資源を生かしたまちづくりを進める。委員会の様子は毎回、インターネットで動画中継される。【原田哲郎】
NHK
佐賀放送局
2011年
5月29日 

旧大島邸などの活用目指す

唐津市で明治時代の和風建築、「旧大島邸」の移築保存先や周辺のほかの歴史的建造物を活用したまちづくり計画を検討するための委員会が27日初めての会合を開きました。
唐津市では、明治中期の和風建築の「旧大島邸」の移築保存が決まったことを受けて有識者などで作る委員会で、建物の移築保存先や周辺のほかの歴史的建造物も生かしたまちづくりの計画をまとめることにしています。
27日は、委員会の初めての会合が開かれ、地元のまちづくりグループをはじめ、建築や都市工学などの研究者や映画館や博物館の関係者などの委員12人が出席しました。
会合では、旧大島邸の文化的価値について報告されたのに続いて、委員からこうした歴史的建造物を生かしたまちづくりのあり方について意見が出されました。
この中では、「観光客をひきつけるためにどのように街を見せていくのか考えていかなければならない」とか「既存の施設を利用して唐津焼をアピールできないか」などの意見が出されていました。
委員会は、今後、月に1回程度会合を開き、ことし11月には計画をまとめることにしています。

05月29日 09時55分 

朝日新聞   2011年
6月24日
 城内まちづくり
 「旧大島邸は核」

     唐津市長

 唐津市の坂井俊之市長は23日の記者会見で、先月発足した市の「城内まちづくり計画策定委員会」に関連して「旧大島邸は城内まちづくりの核のひとつ。これまでの移築保存の方針にぶれはない」と述べた。
 また、旧大島邸の解体の監修者の役割を務めた西和夫・神奈川大名誉教授が市のホームページに公開している「所見」の中で、「復元も、解体と同一担当者によることが望ましい」と述べていることに関連して、市長は「西先生からは今後も随時、助言を受けていく」と述べた。
 城内まちづくり委員会は、昨年10月にまとまった「旧大島邸の活用を考える懇話会」の報告書が旧大島邸の移築保存を提言したことを受けて設立された。5月27日に開かれた第1回会合では、旧大島邸の移築場所の選定と活用方法のほか、唐津城、旧高取邸などの文化施設の活用やネットワーク化などを課題としている。
佐賀新聞   2011年
7月9日
旧大島邸利活用ワーキング 文化的価値を確認

 旧大島邸をはじめとする歴史的・文化的建造物を生かし、唐津市城内地区の活性化を目指す「文化的資源を活用した城内まちづくり計画策定委員会」で、同邸の利活用について考えるワーキンググループが初会合を開いた。建築や商工、観光関係者ら8人の中心メンバーを含む約40人が参加、同邸の文化的価値を確認し、活用のアイデアを出し合った。 

 中心メンバーでアルセッド建築研究所の大川井寛子さんが同邸について、「ほとんどくぎを使わず、木を組んで建ててある。今の大工さんにお願いしても、やってくれないような丁寧な仕事で、棟りょうやお弟子さんの技術の高さがうかがえる」と解説した。 

 ほかのメンバーからは活用法について「子どもからお年寄りまで、どの年代も気軽に使えて、自慢できる場所にしたい」「古いものを古いまま残すのではなく、新しいものも入れたい。むちゃな意見も出してもらい、いいアイデアを吸い上げていけたら」などの提案が出た。

 
 朝日新聞  2011年
7月10日
 旧大島邸活用で
「大茶会」の構想

城内まちづくり計画委

 唐津市の文化的資源を活用した城内のまちづくり計画を話し合う委員会の第2回会合が8日、同市の旧唐津銀行本店で開かれた。建築などの専門家と市民代表からなる委員(12人)から移築保存される旧大島邸を中心に千人規模の人が参加する「大茶会」を開く構想が出た。
 旧大島邸の移築場所については、移築保存の方向を打ち出した「旧大島邸の活用を考える懇話会」が昨年10月に「城内地区とすることを望む」と報告。この日の委員会では、懇話会の会長だった馬渡雅敏委員が、旧大島邸が「南城内駐車場内に移築されると想定。旧高取邸や埋門ノ館などとつないで、千人規模の大茶会を開く構想を提示。他の委員も賛成した。、
 委員長の竹下輝和・九州大大学院教授(建築計画)によると、旧大島邸の移築先については、8月18日に開かれる第3回会合で話し合う予定という。(田中艮和)
 朝日新聞   2011年
8月19日
 
南城内駐車場の隣接地
旧大島邸移築先で一致
策定委
 唐津市の城内まちづくり計画策定委員会は18日、第3回会合を開き、旧大島邸の移築先を市営南城内駐車場の隣接地にすることで意見が一致した。パブリックコメントで市民の意見を聴いたうえで、11月に予定されている最終会合で決定する予定。これを受けて市が方針を決める。
 旧大島邸の移築先については、これまで開かれた委員会のワーキンググループで4カ所の候補地が出た。このうち、東城内の旧老人福祉センター跡地と、南城内駐車場隣接地が有力となったが、建物だけでなく庭園も復元できる広さと、駐車場やアクセスの便から南城内駐車場隣接地が好ましいとの判定になった。
 この日の委員会では、アドバイザーとして出席した西和夫・神奈川大学名誉教授が「自邸だった大島小太郎の空間を再現するには、南城内が最適」と発言。この日、出席の委員からも賛成意見が相次ぎ、移転先は南城内でまとまった。
 移転先になるのは、南城内駐車場北側の約5670平方㍍の用地。もともと、「南城内歴史文化ふれあい公園(仮称)」用地として市土地開発公社が2001年に先行取得したが、現在は、市職員の駐車場として使われている。この日の市の説明では、旧大島邸の解体前の位置関係と規模で復元が可能という。
 移築後の活用法については、茶会などの案が出たが、西名誉教授は「柔軟に決めてほしい」と提言。「城内地区全体をミュージアムに」という案については、「唐津には優れた建築がたくさんある。旧大島邸だけでなく、まち全体の歴史、文化を見直す必要がある」と述べた。(田中良和)
 西日本新聞   2011年
8月19日
 
移築先候補は南城内 唐津市の旧大島邸
 「旧大島邸」の移築先を検討してきた唐津市の「文化的資源を活用した城内まちづくり計画策定委員会」(委員長・竹下輝和九大大学院教授、12人)は18日、同市南城内の一角を移築候補地とすることを決めた。城内地区の文化施設を生かしたまちづくりの方向性と合わせて11月に計画案をまとめ、市に提出する。
 候補地は「南城内駐車場」の北側に広がる約5700平方メートル。2001年、市土地開発公社が公園整備を目的に購入した。その後、未利用となり、現在は市職員の駐車場として利用されている。
 この日、市内で開いた第3回会合には委員9人が出席。「移築には十分な広さ」「城内の中心部にあり、近隣の文化施設と連携が取りやすい」などと意見が一致した。
 旧大島邸は旧唐津銀行の頭取だった大島小太郎氏の邸宅。小学校の校舎新築に伴い、市が移築保存を決めていた。市は本年度中に移築先を正式決定する方針。
 読売新聞   2011年
8月19日
 
 唐津・旧大島邸移築先南城内公園用地へ
唐津市の大志小校舎改築に伴って解体された旧大島邸の移築保存場所の候補地などを作成する「文化的資源を活用した城内まちづくり計画策定委員会」(委員長・竹下輝和九州大教授、12人)が18日、市役所で開かれ、移築先として城内地区にある南城内歴史文化ふれあい公園整備事業用地とすることで意見を集約した。11月に計画書を坂井俊之市長に提出、市長が最終的に移築先を決定するが、同用地に事実上決まった。

 委員会は5月に発足、これまで作業部会を開くなどして練ってきた計画案を事務局がまとめて報告。400年に及ぶ城下町の歴史的・文化的資源を生かしていこうとして、「歴史を展(ひら)き、文化を拓(ひら)く まちはミュージアムの創造」を基本理念とし、その中核事業として旧大島邸の復元や利活用を位置づけた。

 移築先となる同用地は、城内地区を東西に走る市道(産業道路)南側で、面積約5700平方メートル。市土地開発公社所有で、現在は市職員の駐車場として使われている。移築先として、旧老人福祉センター跡地など4か所が提案されたが、同用地は〈1〉面積が一番広く、邸全体の移築保存が可能〈2〉城内地区のほぼへそに当たり、観光客や市民に場所がわかりやすい――などとして全会一致でまとまった。

 利活用については、「和風住宅の精神を生かして柔軟な発想を」、「伝統技術を学べる場所に」などの意見が出た。

朝日新聞   2011年
9月28日
 旧大島邸復元方法
「解体部材極力使用」

唐津市城内まちづくり委

 唐津市の「文化的資源を活用した城内まちづくり計画策定委員会」の第4回会合が26日、開かれた。まちづくりの中核事業と位置づけられた旧大島邸の復元方法については、すでに解体した部材をできるだけ使っていくことで意見がまとまった。この日、示された計画案を基に10月にパブリックコメントを求め、11月21日に開かれる最終会合で、計画案をまとめる予定だ。
 旧大島邸については、市の担当者が4月に実施した解体部材の調査結果を報告。それによると、主屋の天井、欄間、床の間などの部材はほぼ残っており、内部空間の復元は可能。しかし、茶室や仏間の傷みがひどく、解体部材を使っての復元は難しいとされた。
 これを受けて、復元方法は、①保存部材をできるだけ使う②新材を多く使う、の二つが示された。これに対して、アドバイザーとして出席したアルセッド建築研究所の清水耕一郎・佐賀所長(有田町)は「旧大島部の復元は新築事業ではない。保存部材で使えるものは極力使う姿勢で復元するほうがいい」と述べ、その方向でまとまった。
 このほか、計画案の中には、先導事業として、唐津城、河村美術館、旧老人福祉センター跡地の3カ所の魅力向上や活用が盛り込まれている。 (田中良和)
毎日新聞  2011年
9月28日 
 旧大島邸:表面部分は再利用を 移築で策定委

 唐津市の旧大島邸の移築後の利活用などを検討する「文化的資源を活用した城内まちづくり計画策定委員会」(委員長・竹下輝和九州大教授)は26日、同邸の復元に向け、床の間や天井など人の目に触れる部分についてはできる限り従来の部材の再利用を検討する方針を決めた。
 一方、人目につきにくい部分は安全性確保のため新材への取り替えが望ましいとした。
 また、利活用については市民参加などの視点から、市民力や民間活力を積極的に生かした取り組みを進める必要性を求めた。
 移築先は前回委員会で、同市の南城内駐車場北側約5700平方メートルの市土地開発公社所有の歴史文化ふれあい公園(仮称)整備事業用地を候補地とすることを決めている。【原田哲郎】

朝日新聞  2011年
11月22日 
旧大島邸復元1.6~2.5億円

唐津市城内まちづくり委で報告

 唐津市の「文化的資源を活用した城内まちづくり計画策定委員会」の最終会合が21日、開かれ、市のまちづくり計画案に対して12人の委員が意見を述べた。市はこれを受けて12月中旬に計画を決定する予定。「中核事業」と位置づけられた旧大島邸の復元には、建物だけで約1億6100万~約2億5300万円かかることが明らかにされた。

 計画によると、文化的価値のある主屋の復元には出来るだけ保存部材を使用し、茶室は部材の状況を見ながら内部空間を中心に再現。傷みのひどい仏間や台所などは新材で建築する。

 庭園は解体前の復元を基本とし、保存している石などを使用する。費用は建物の他、庭園に約3300万~約4500万円、周辺の緑地・広場の整備に約2800万~約3600万円などを見込んでいる、。

 財源は、国から事業費の40%の補助が得られる社会資本整備総合交付金や合併特例債を活用し、市の実質負担率は約20%としている。市は計画が決まれば、2012年度に部材調査や設計に入り、13年度に建設工事、14年度に完成をめざすとしている。
 読売新聞 2011年
11月22日 

旧大島邸14年度までに移築

唐津市が来月計画策定

 唐津市の「文化的資源を活用した城内まちづくり計画策定委員会」(委員長・竹下輝和九州大教授、12人)の最終委が21日、市内の旧唐津銀行で開かれた。まちづくりの基本理念「歴史を展(ひら)き、文化を拓(ひら)く “まちはミュージアム”の創造」の中核事業である旧大島邸の移築保存は、2014年度までの完成を目指すことを計画案に盛り込んだ。

 移築先は南城内歴史文化ふれあい公園(現市職員駐車場)の約5700平方メートル。建物は木造2階の約450平方メートルで、解体前の外観を基本に再現する。〈1〉主屋は文化的価値を有する部分で、できるだけ保存部材を使用する〈2〉茶室は腐朽度合いが著しく内部空間を中心に再現する〈3〉庭園は保存している石等を原則使用する――などの基本方針を示した。

 最終委を受けて、市は12月中旬までに計画を策定する。今後、運営準備委員会で利活用や運営方針について協議するほか、復元整備検討委員会(いずれも仮称)で保存されている部材の精査や建築手法を検討する。

毎日新聞  2011年
11月23日 
唐津市城内地区整備:旧大島邸復元と利活用
--まちづくり計画策定委
 

◇中核事業に位置づけ

 唐津市城内地区の整備について意見を出す「文化的資源を活用した城内まちづくり計画策定委員会」は21日、昨年から今年にかけて解体された旧大島邸の復元と利活用を計画案の中核事業として位置づけた。これを受け、市は12月中旬までに計画を策定する。

 旧大島邸は明治期の近代和風建築で、唐津銀行頭取だった大島小太郎の旧宅。計画案では、同市西城内にあった同邸を活用する理由として▽近代化の物語性が高く、まちなか観光の新たなスポットとして期待できる▽部材を保存中で速やかに復元する必要があり、緊急性が高い--ことなどを挙げている。

 整備費の見込みは土地取得に約6億5000万円。建設費は1億6100万~2億5300万円。このほか庭園や緑地・広場も整備する。

 策定委は今年5月から計5回開催。旧大島邸の移築候補地を同市南城内駐車場北側に整備される「歴史文化ふれあい公園」(仮称)としている。【原田哲郎】

佐賀新聞  2011年
12月13日 
 「再利用可能は2割」
 旧大島邸解体で唐津市

 唐津市南城内への移築復元に向けて論議が進んでいる明治の近代和風建築「旧大島邸」について、市は12日の市議会一般質問で、解体した建材で再利用が可能なのは2割程度とみられることを明らかにした。
 旧大島邸は昨年12月から約3カ月かけて解体、建材は移築復元のために保管している。市と解体業者らで建材の腐食状況を調べた結果、柱や梁(はり)など構造材のほとんどは建築基準法に適合させるのが困難と判断。天井や長押(なげし)床の間などの仕上げ材は創建当時のものが多く残っており、内部空間の復元は可能という。
 復元費は1億6千万~2億5千万円で、市土地開発公社が保有する南城内の候補地を市が買い戻すには現時点の試算で6億5千万円が必要。移築を支えるための市民募金は11月時点で150万円にとどまっており、市議から計画を見直す質問が出たが、市は「財政負担の軽減を模索し、地域の文化資源活用に向けて整備を進めたい」と答えた。 (桑原昇)
毎日新聞  2012年
2月10日 

旧大島邸100分の1の模型を製作

 旧唐津銀行の頭取などを務めた大島小太郎の邸宅「旧大島邸」の100分の1模型が9日、昨春改装された唐津市本町にある同銀行に寄贈された。
 県立唐津工業高校建築科3年の4人が課題研究の授業で製作。ヒノキ棒やスチレンボードなどを使用し、実物に極力近づけた。野崎太貴さん(18)は「再現に苦労したが、歴史ある建造物の模型製作に携われてよかった」と感想を述べた。
 また、他の生徒はくぎや金具を一切使わずに木組みやくさびの技術で製作した靴棚や電話台を寄贈した。
 破損したら将来にわたって後輩が修理していくことにしている。【原田哲郎】
 
STSサガテレビ  2012年
 2月9日 19:50
旧唐津銀行に高校生が旧大島邸模型を贈る
唐津市の工業高校の生徒が製作した旧大島邸の模型などがゆかりの旧唐津銀行に設置されました。旧唐津銀行に贈られたのは旧大島邸の模型に靴置きの棚、電話台です。地元・唐津工業高校建築科の生徒が授業の一環で去年4月から今年1月にかけて取り組んだものです。9日は、9人の生徒が旧唐津銀行を訪れ唐津市観光課の職員に目録を手渡しました。なかでも、旧大島邸は唐津銀行を創設した大島小太郎の住宅として知られています。現在、老朽化のため解体されていて移築されることになっています。(製作した生徒は)「とても達成感がありました。唐津にこういう建物があったんだと知ってもらいたいです」模型はガラスケースの中におさめられ展示されています。このほか、靴棚と電話台も設置され、利用者に役立ててもらいとしています。
 
佐賀新聞  2013年
5月28日 
旧大島邸
旧三菱合資会社唐津支店本館
明治期の建物整備
唐津市が観光拠点化に着手

 唐津市は本年度、2年前に移築保存を決めた「旧大島邸」の復元に着手する。老朽化のために休館中の県重要文化財「旧三菱合資会社唐津支店本館」も年度内に修繕や活用策をまとめる。いずれも唐津の近代化を象徴する明治期の建物として、民間団体などから保存活用を求める声が上がっていた。市民が注視する唐津観光の拠点づくりがようやく動き出す。

 旧大島邸は、旧唐津銀行頭取で鉄道や港湾の整備などを手掛けた実業家大島小太郎の邸宅。市民運動の高まりを受け、市は一昨年、当初の記録保存から方針を転換、国の補助金などを活用して2016年度までの4年計画で移築復元を目指す。

 旧三菱合資会社唐津支店本館は、唐津炭田の石炭を唐津港から積み出すための事務所として建てられた。市に譲渡された後は歴史民俗資料館として利用されてきたが、老朽化を理由に10年前から休眠状態となっている。

 旧大島邸の移築をめぐっては、市議会から市全体の文化的資源の活用を検討した上で事業の位置づけを明確にするよう求められ、作業に時間がかかった。旧三菱合資会社唐津支店本館については旧大島邸の移築議論が盛り上がる中、市民団体などから早期活用の要望が強まり、一昨年から有識者や地元住民らで保存整備の検討を続けている。

 市は「いずれも唐津の歴史を語る上で欠かせない建物」と整備の目的を示し、両施設の活用による観光・文化振興の相乗効果に期待する。

 坂井俊之市長は観光ブランド戦略の柱に位置づける唐津焼美術館構想と合わせ、「人が集う場所として活用の中身を充実させたい」と話す。

 
佐賀新聞  2013年
6月25日
 
旧大島邸復元、7月にも始動 唐津市議会

 唐津市議会は24日、「旧大島邸」の復元設計費を含む一般会計補正予算案を可決した。老朽化が著しく、文化財としての保存が難しかった旧大島邸の復元は市民の間でも意見が分かれていたが、設計費が認められたことで、来月にも利活用検討委員会が発足。2016年度完成に向け、事業が動き出す。

 旧大島邸の移築復元の総事業費は10億7500万円。内訳は土地取得6億5600万円、建物の復元2億3800万円、日本庭園整備1億800万円など。本年度内に設計し、来年度に市土地開発公社から唐津神社北側の土地5700平方メートルを取得、15~16年度に建物や庭を整備する計画となっている。

 常任委員会の審議では高額な事業費を指摘する声が相次ぎ、第2会派の清風会や社民は「建築費や維持管理費は市民の理解を得られるように節減すべき」と付帯意見をつけるべきと主張。第1会派の志政会が「時間をかけて審議し、積み上げた。安易な付帯意見はつけるべきでない」と反論し、原案通り可決した。

 唐津経済の礎を築いた大島小太郎(1859~1947年)の邸宅だった旧大島邸は2010年度、大志小校舎の拡張工事に伴い解体。木材の約8割が腐食するなどして使えないことから、市は「文化財としての復元は難しい」との認識を議会で示している。

 周辺には曳山展示場や埋門ノ館など観光施設が集積しており、今村繁公観光文化スポーツ部長は今議会で「まちなか周遊の拠点としてアピールしたい」と建設の狙いを説明。7月中に建物の利活用検討委員会を立ち上げる方針を示している。

佐賀新聞  2013年
06月26日 
 
旧大島邸ゆかり大志小に茶室 茶道部も発足

 唐津市西城内の大志小学校(原口毅校長)は新校舎に茶室を設けた。改築の際、隣接する旧大島邸が解体された経緯があるため、市教委が同邸ゆかりの地として特別に設置した。児童21人による茶道部が今月発足し、茶の湯文化を引き継いでいく。

 旧大島邸の茶室は「敬日庵」と呼ばれ、大島小太郎と親交のあった経済人や地域の名士たちが数多く足を運んだ。昨年4月に完成した大志小新校舎1階に置かれた12畳の茶室も、地域住民が気軽に利用できるように、校舎とは別の専用出入り口が設けられている。

 新設の茶道部には地域住民も熱心に協力し、唐津焼の茶器、茶せんなどの茶道具は寄付で集まった。指導には、解体前の旧大島邸で活動を続けてきた茶道裏千家淡交会唐津支部が当たっている。

 24日の初活動では、唐津支部会員が抹茶のたて方や茶の飲み方だけでなく、和室の歩き方まで“茶の心”を丁寧に指導した。同支部の岩本鶴吉さん(77)は「旧大島邸ゆかりの小学校で指導できることは感慨深い。子どもたちに茶の湯を通じ、感謝と思いやりの心を伝えたい」と語った。

 子どもたちは決まり事の多い茶の作法に戸惑いながらも、おいしいお茶とお菓子に思わず笑顔。部長の松本夕葵さん(12)は「幼稚園でもお茶をやっていたのでまた、やってみたかった。みんなと一緒に礼儀を身に付けたい」と微笑んだ。(30日付の子ども佐賀新聞「わくわく小学校探検」で大志小を特集します)

写真:茶道部が発足した大志小。校舎内に造られた茶室で、礼儀作法を学ぶ子どもたち=唐津市西城内

佐賀新聞  2013年
8月1日 
旧大島邸利活用を議論 市民検討委が初会合


 唐津市が同市南城内に移築復元する実業家大島小太郎の居宅「旧大島邸」の活用策を考える市民検討委員会(12人)の初会合が31日、開かれた。城内地区で唯一、武家屋敷の面影を残す近代和風建築であることから、解体前の意匠を残し、市民が使いやすい建物として復元することを確認した。

 会合では、唐津銀行を創設した大島の企業家精神を生かす活用法や、観光客にも配慮した整備を求める意見が出た。市民の間には市の財政負担に対する懸念もあるため、委員の一人は収支を見据えた運営の必要性を指摘。市民募金やふるさと納税を積極的に活用することなどを確認した。

 検討委は、市内のまちづくり団体や商工・観光関係者らで構成。移築先を見たことがない委員もいたため、21日に開く次回会合では現地を視察し、復元方法などの議論を深めていくことにした。

2013年08月01日更新

活用や運営方法などについて意見交換した「旧大島邸利活用検討委員会」=唐津市の大手口センタービル

 
朝日新聞  2013年
8月1日 
 唐津の「旧大島邸」利活用法を協議
委員会初会合、移築保存など話し合う


 唐津市西城内にあった明治時代の和風建築「旧大島邸」の利活用方法を話し合う委員会の初会合が31日、開かれた。経済団体や市民団体などの委員11人が出席し、移築保存の方法などを話し合った。
 旧大島邸は、旧唐津銀行を創立した大島小太郎の邸宅。1893(明治26)年に建てられ、約5300平方㍍の敷地に木造一部2階建て延べ約450平方㍍の屋敷や、約2200平方㍍の庭園があった。
 隣接する大志小学校の改築に伴い解体されることになっていたが、市民から保存を求める声が上がり、移築して再現することに。建物などはすでに解体され、部材は復元にむけ保管されている。
 移築先は、市土地開発公社が別の事業のために購入していた近くの土地約5700平方㍍で、そばに唐津神社などがある。市は9月に設計の入札をする予定で、委員会も今後、復元の具体的な中身などを決めていく方針。
 市は整備費としてこれまで、土地取得費に6億5千万円、建設工事費に1億6100万~2億5300万円、庭園に3300万~4500万円、緑地・広場などに2800万~3600万円との概算を出している。       (石田一光)
毎日新聞  2013年
08月01日 

旧大島邸:移築・復元、利活用へ検討委発足

 唐津市南城内に移築・復元が計画されている和風建築物・旧大島邸の移築後の利活用を論議をする検討委員会(委員12人)が31日、発足した。委員長にはからつ大学交流連携センターの藤岡継美事務局長が就任した。

 同邸は旧唐津銀行頭取など務めた大島小太郎の邸宅。隣接する市立大志小学校の改築に伴い解体され、南城内歴史文化ふれあい公園(仮称)整備事業用地(約5700平方メートル)に移築される計画。

 この日の検討委で、今年度中に設計するために9月をめどに庭や公園の配置などを決めることにした。今後、文化交流の結節点、または核となる施設として、復元後の利活用を話し合っていく。次回委員会は8月21日。

 計画によると、2014~2015年度に建物を建築、16年度に庭や公園などを整備する。【原田哲郎】 

佐賀新聞  2013年
08月04日 
唐津・旧大島邸の活用 現代版「耐恒寮」として

 参院選でもそうだったが、安倍首相の経済政策「アベノミクス」をめぐって、唐津とゆかりのある人物が引き合いに出される。

 高橋是清(これきよ)。戦前の昭和恐慌時、金融緩和・インフレ政策に転換し、危機を乗り切った蔵相であり、若いころは唐津藩の英学校「耐恒寮(たいこうりょう)」の英語教師だった。

 唐津の在任期間は1年3カ月足らずだったが、辰野金吾、曽禰達蔵、天野為之ら建築界の巨匠や明治期を代表する経済学者となる若者たちが高橋の下で学び、東京に戻る彼を追って上京した。

 唐津銀行の創立者で、鉄道を敷設し、港を整備した大島小太郎も、その一人である。

 大島の居宅だった「旧大島邸」の利活用計画が動き出す中で、唐津の近代化の礎を築いた人々、そして耐恒寮があらためて注目されている。

 旧大島邸は旧高取邸に近い西城内にあり、大座敷や茶室を備え、武家屋敷の面影を残す明治中期の建物だった。隣接する小学校の改築に伴い取り壊す予定だったが、市民による保存活動で移築保存されることになった。

 流れを振り返ると、解体か保存かに揺れた歴史遺産が残った幸運な事例に思えるが、本題はむしろこれからだ。

 場所を東に移して再建することに加え、部材の約8割が腐食して使えないことから、唐津市は「文化財ではなく、一般建築物として復元する」ことにした。「保存」「復元」というより、「再生」であり、最近の用語で言えば「リノベーション」だろう。

 外観や茶室、庭園など歴史的な佇(たたず)まいを残し、観光資源として活用しつつ、時代に即した新しい価値をどう創出するか。土地取得費を含め、10億円を投じる事業にふさわしい施設運営や自主事業計画が大きな鍵となる。

 旧大島邸を中核に据えた市策定の「文化的資源を活用した城内まちづくり計画」は、大島らの起業家精神を受け継ぎ、まちづくり事業やビジネスに活用することをうたう。

 まさに「現代版耐恒寮」の再現と言えよう。

 市民サイドではまちづくり団体が耐恒寮や高橋、大島にスポットを当てた講座を開くなど、下地となる動きがすでに始まっている。

 高橋は明治初期にあって、教室では日本語を使うことを許さず、英語だけを使ってやりとりをした。唐津の経済界ではフランスの化粧品業界やグアムとの経済交流が進行している。高橋にならって語学人材育成の場もいいだろう。

 唐津には大学など高等教育機関はなく、NPO法人の数も人口からすれば多くない。市民大学や官民協働、起業への支援(インキュベーション)を行う場はどうか。茶室がある屋敷の一画で、起業家や定住したクリエーターが新しいビジネスや文化を発信するのも、今日的だろう。

 旧大島邸の保存が決まって3年。市長選を挟んで間が空き、市民の関心が冷めかけている印象も受ける。利活用策を協議するため先週発足した市民委員会では、早々に建物の配置計画が諮られたが、具体的な利用・運営方針を固めるのが先ではないか。

 もう一度、市民、議会、行政が熱く議論を重ねたころに立ち返り、今の唐津に必要なこと、足りないことを考える中で利活用策を練り上げたい。それが現代版耐恒寮への礎になるはずだ。(吉木正彦)

 
西日本新聞  2013年
08月11日
 
 市民参加の検討委が初会合
 旧大島邸活用法を協議

 明治期の近代和風建築で、移築保存されることになった旧大島邸(唐津市西城内)について、唐津市と市民が協働して活用法を話し合う「旧大島邸利活用検討委員会」がスタートした。10月中旬までに4回の会合を開き、移築先の建物配置や運営方法などを決定する。

 7月31日に開かれた初会合には、市職員のほか、市民団体や観光、商工業の関係者が出席。母屋や茶室、庭の配置について意見を交わし、今月中にメンバーが現地を視察してそれぞれの配置を決定することを確認した。

 旧大島邸は、佐賀銀行の前身である唐津銀行を創立し、鉄道や唐津港の整備にも足跡を残した大島小太郎の邸宅。1893(明治26)年の建築で、約5300平方メートルの敷地に、木造一部2階建て約450平方メートルの屋敷があった。隣接する小学校の建て替えに伴い、市が同邸を購入、解体することになったが、住民が署名集めなど保存を求めて活動を展開。これを受け、市は移築して復元することにした。

 ただ、移築に向けて解体された同邸の部材は約8割が腐食などで使えず、安全性確保や費用面などを考慮し、文化財としてではなく、新材も使って一般建物として復元することにした。このため、イベントなどの幅広い利用が可能となり、同委員会でも議論される。

 移転先は市土地開発公社が公園用地として所有した近くの約5700平方メートル。市の概算によると、土地取得費は6億5千万円、建設工事費1億6100万~2億5300万円。庭園などに3300万~4500万円、緑地・広場に2800万~3600万円。14年度に着工、15年度には建物を完成させる予定。

 佐賀新聞 2013年
08月20日
 
旧大島邸活用検討委 21日に2回目会合


 唐津市が南城内に移築復元する実業家大島小太郎の居宅「旧大島邸」の活用検討委員会の第2回会合が21日午後2時から、埋門ノ館で開かれる。移築先を見学後、運営方針などを話し合う。傍聴自由。

 移築場所は市土地開発公社が保有する南城内の土地で、点在する文化観光施設をつなぐ場所にある。現在は市職員の駐車場になっており、市が土地を買い戻し、2015~16年度に建物や庭を整備する計画。

 市策定のまちづくり計画では、近代唐津の礎を築いた大島の企業家精神を生かし、まちづくり事業やビジネスなどでの活用を描いている。

 委員は市内のまちづくり団体や商工、観光関係者ら12人。初回会合では収支や採算性を踏まえた運営の必要性を指摘する意見などが出た。

 
佐賀新聞  2013年
08月22日
 
唐津市・旧大島邸 市民協働、持続的運営を

 唐津市南城内に移築保存される「旧大島邸」の活用を考える市民検討委員会の第2回会合が21日、開かれた。復元後の維持費が概算で年間1千万円になるとの見通しが示され、市民協働による持続可能な運営を目指していくことを確認した。

 国重要文化財の旧高取邸や中尾家屋敷、埋門ノ館など市営の観光文化施設の年間維持費は3700万~600万円。市がこれらを参考に旧大島邸の運営に関わる人件費など年間の運営費を試算した。

 これを受け、会合では市の財政負担を減らす方向で運営方法を協議。利用料など受益者負担の仕組みを取り入れる意見が相次いだ。

 具体的な活用策では、内容を限定せず、学習塾や子ども教室など市民が自由に使える公民館的な機能を持たせる提案の一方、採算性を踏まえ、観光業者と連携して披露宴会場として貸し出すなど、広く利用を促す仕掛けを求める意見も出た。

 また、委員の一人は町屋を起業家の支援スペースとして継続使用している他地域の事例を紹介。唐津市出身の画家中島潔さんの作品や、唐津焼の展示スペースにしてはどうかといった提案もあった。

 次回は9月3日、小城市小城町の深川家住宅を視察し、運営するNPO法人と意見交換する。

 
佐賀新聞  2013年
09月23日 
旧大島邸の活用 市民と研究者の連携を

 唐津市城内で武家屋敷の面影をとどめる数少ない明治期の邸宅、旧大島邸をテーマにしたシンポジウムが19日開かれた。保存への道筋をつけた学術調査団の大学教授らが主催し、「(市民の)運動と(専門家の)研究が両輪となってここまでこぎ着けた。活用面でも両者の連携を」と、活用計画策定に向け、建築学や地域史など専門的な視点の必要性が提起された。

 旧大島邸にゆかりや関わりのある人たちが登壇。建築した大工棟梁の孫にあたる吉田登美代さんは「(学術調査で)祖父が時の人になり、初めて業績を知り、自分でも古文書を調べた。知らないと大事なものを失ってしまうところだった」と、身近に感じた研究や調査の意義を語った。

 解体工事の大工棟梁で、大島邸と高取邸(国重要文化財)が同じ棟梁が手掛けたことを感じ取っていた松尾和昌さんは「釘一本、ほぞ一個にも工夫があり、今の大工には到底できない、技術の高さに驚いた」と述べ、復元に際しても知識と技術が必要と強調した。

 郷土史家中里紀元さんは「意匠を凝らした茶室はもちろん、茶庭も素晴らしい。京都でも見ることができない茶庭で、観光資源になる」と再現を求めた。

 旧大島邸の保存活用計画は市が選任した市民委員会で協議中で、学術調査団の西和夫・神奈川大名誉教授や山田由香里・長崎総合科学大准教授は「運動だけ、また、研究だけでは建物の保存は難しい。活用でも力を合わせていきたい」と締めくくった。

2013年09月23日更新
写真 
市民ら80人が参加し、パネリストともに旧大島邸の価値を振り返り、活用を考えた=19日夜、唐津市の市民交流プラザ
 
佐賀新聞  2013年
11月19日 
 
「大島小太郎」の生き方学ぶ 大志小5年生

 唐津の近代化を先導した大島小太郎(1859~1947年)の偉業と精神性を学ぶワークショップがこのほど、唐津市の大志小であった。5年生69人が紙芝居や町の模型作りを通じ、唐津を愛した小太郎の志を学んだ。

 まちづくりグループ「まちはミュージアムの会」と「いきいき唐津」の企画で、製作には佐賀大学生や市内の高校生が手伝った。事前学習ではまちを歩いたり、資料を調べ、イメージを膨らませた。

 紙芝居担当グループは銀行や鉄道、電気、港湾など唐津の近代化に必要なインフラ整備を次々と手掛けた小太郎の生涯を13枚の絵で表現。模型グループは辰野金吾生誕地や桜馬場遺跡、劇場近松座の跡地で現在、駐車場などになっているスペースを小太郎の“目線”でまちづくりを提案し、博物館やカフェ、公園など作った。

 紙芝居を担当した梶原水月君(11)は「いつも、みんなの役に立つには何をしたらいいか考えて行動していると思った。経営が厳しい時、4年間、給与をもらわなかったのはすごい」と語った。

 現在、旧大島邸の移築復元に向け、利活用を議論している。まちはミュージアムの会の河内野信恒会長(52)は「曳山がある地域なので、江戸以降の時代感覚がこの地区の子どもたちにはある。大島小太郎や辰野金吾が活躍した唐津の近代化も一緒に勉強していければ」と話した。

写真1
大島小太郎の〝目線〟でのまちづくりを模型で提案する5年生たち=唐津市の大志小学校
写真2
紙芝居で大島小太郎の生涯を振り返る5年生たち=唐津市の大志小学校

佐賀新聞  2014年
03月08日 
旧大島邸の移築復元 主屋と茶室、忠実再現


 唐津市は7日、同市南城内に移築復元する旧大島邸の設計図案を明らかにした。主屋と茶室はほぼ忠実に再現し、さまざまな市民活動ができるように厨房やボランティアルームを設けた管理棟を新設する。今月末までに正式決定し、新年度に着工する。

 移築復元する旧大島邸は主屋、茶室、管理棟を合わせ、延べ床面積は463平方メートル。和室10室からなる主屋(297平方メートル)と「敬日庵(けいにちあん)」と呼ばれた茶室(56平方メートル)は解体した部材などを使い、ほぼ忠実に再現する。

 管理棟(計110平方メートル)は、民間委員12人で構成する利活用委員会で提案されたカフェや食事スペースは設けないものの、簡単なコーヒーサービスなどができるように厨房を整備する。

 旧大島邸の設計は、佐賀市の隔林亭の復元に携わったアルセッド建築研究所(本社・西松浦郡有田町)が担当。昨年7月から6回にわたって開かれた利活用委員会での議論も考慮して作成した。

 旧大島邸は、唐津神社に隣接する駐車場用地に移築復元。総事業費は10億5600万円。庭園も忠実に再現する方向で検討しており、2016年度中のオープンを目指す。

 
朝日新聞  2014年
03月27日 
主屋と茶室、再現へ 唐津の旧大島邸移転で
  唐津市西城内にあった明治期の和風建築「旧大島邸」の移転保存方法を検討してきた唐津市は26日、主屋(おもや)と茶室を可能な限り忠実に再現する方針を決めた。2016年度中の完成を目指す。観光に貢献し、市民にも利用される復元にしたいとしている。

 旧大島邸は、旧唐津銀行の創立者で唐津の近代化に貢献した大島小太郎の邸宅。和室10室からなる主屋(297平方メートル)と茶室(56平方メートル)は忠実に再現する一方、カフェ案も出ていた、主屋の西の台所棟(92平方メートル)は来場者にコーヒーを出す厨房(ちゅうぼう)程度にとどめ、運営に携わる人たちのミーティング室を設ける。主屋東側の物置や廊下は雨漏りで傷みが激しく、復元しない。庭園は、移転先の土地の形状の制約もあるが、庭石の配置や築山など忠実に復元する方針だ。...

 旧大島邸は、隣接する小学校の改築に伴い解体されることになっていたが、市民から保存を求める声が上がり、移築して再現することに。建物はいったん解体され、部材すべてが保管されている。旧城下の面影を残す近くの5670平方メートルの土地に移転することが決まっている。

 移転保存方法を議論してきた利活用検討委員会は今後、旧大島邸の運営を考える委員会に衣替えする。(原口晋也)
佐賀新聞  2014年
05月28日  
  

唐津市「塩漬け」解消 6月議会に提案

 唐津市は27日、旧大島邸の移築先となる南城内の土地5700平方メートルを6億5600万円で取得する議案を6月議会に提案すると発表した。市の第3セクターである土地開発公社が13年前に購入した土地で、具体的な用途が決まらず、借金の利息だけが膨らんでいたが、旧大島邸の復元事業を通じ、国の財源を活用することで“塩漬け”状態を解消する。

 南城内の土地は個人の所有地だったが、高層マンション建設計画が浮上。市は2001年7月、景観保護のために「歴史文化ふれあい公園事業」を名目に、5億9500万円で市土地開発公社に購入させた。

 ただ、公社の場合、購入原資は100%が金融機関からの借金。旧大島邸の移転計画が決まるまで、公園事業の具体案はなく、利息だけが増えた。市は多額の用地取得費の捻出に苦慮したが、旧大島邸の移築復元事業に活用することで、合併特例債など国の交付金活用が可能になった。

 今回の用地取得で、市は当時の土地購入価格に加え、13年間の利息3500万円と事務費2500万円を上乗せして公社に支払う。土地開発公社理事長を兼任する世戸政明副市長は「歴史的な景観整備を進めていた城内の一等地で、開発に利用されてはならないという当時の判断があった。市民の負担にならないように、国の財源がつく事業が見つかるまで時間がかかった」と話す。

 旧大島邸移築復元の総事業費は用地取得費も含め、10億5600万円。財源は、国の社会資本整備交付金2億6560万円と市の負担が3割で済む合併特例債7億3710万円など。市の実質負担は約2億7500万円で、全事業費の26%となっている。

 土地は2008年以降、市職員用の有料駐車場として運営され、6年間で2400万円の収入があったが、公社の事業収入に計上され、今回の用地取得には反映されない。

佐賀新聞  2015年
02月03日 
元日本建築史学会会長、西和夫さんを悼む

■旧大島邸保存活用に尽力

 日本建築史学会元会長で、名護屋城跡(唐津市鎮西町)の保存整備や佐賀城本丸歴史館(佐賀市)の復元など、佐賀県内の歴史的建造物や遺跡の保存活用にも関わってきた神奈川大学名誉教授の西和夫さん(76)が1月3日亡くなった。

 最近は、保存か解体かで揺れた旧大島邸(唐津市)の調査団長としてたびたび唐津を訪れ、学術的な調査に加え、歴史を生かしたまちづくりを提唱してきた。

 旧大島邸復元計画は2016年度の完成を目指し、3日には工事の安全祈願祭が行われるが、完成後、どう活用していくか。明確なビジョンは見えず、保存で盛り上がった市民の関心も薄れがちだ。

 そうした状況を案じ、危惧する西さんは一昨年9月、唐津でのシンポジウムで、市民と専門家、そして行政が一体となった活用の大切さを提唱していた。

 生前、親交のあった中里紀元さん(前松浦文化連盟会長)の追悼寄稿と併せ、西さんが旧大島邸と唐津に寄せた思いを追懐する。

=追悼= 前松浦文化連盟会長 中里紀元

「文化財は住民が活用しなければ保存も価値もない」言葉と行動を胸に刻む

 旧大島邸 唐津市西城内にあり、唐津銀行の創始者で明治期の疲弊した唐津の経済を立て直し、港、鉄道道路を整備した大島小太郎の旧宅。明治初期の建築で、茶室を備え、江戸期の武家屋敷の面影を残す。茶室などは昔の部材を活用し、唐津神社に隣接する南城内の駐車場用地に移築復元する。

 旧大島邸の復元に向けて安全祈願祭が行われようとするその直前、西和夫先生の突然の訃報に接し、驚きと痛惜の思いを深くする。高齢の身で神奈川から遠路、たびたび来唐され、酷暑、寒風の中でも大島邸保存と再建に尽力された西先生の行動と言葉の一つ一つを思い起こす。

 2009年、私たちは旧大島邸を文化財として保存する運動を始め、市内外から寄せられた多くの署名を添え、唐津市に要望書を提出した。大島邸は1998年度に市土地開発公社が文化財及び教育的用地として購入したが、文化財に指定されないまま老朽化とシロアリ被害にさらされていた。

 ただ、講演会や観光客の案内休憩に貸され、特に裏千家淡交会唐津支部は毎月定例会場として使用し、建物の状況をたびごとに市へ連絡され、簡単な補修が行われていたため、完全な廃屋状態だけは免れていた。

 しかし、市側は財政面から建物保存は困難で、東隣の大志小校庭の拡張が必要として、取り壊す方針を決め、保存を願う市民と行政側の見解は平行線のまま、焦りだけが募っていった。

 ところが2010年6月、市民の依頼で大島邸を調査された西先生の評価が大島邸の運命を変えた。

 西先生は「大工の技術も素晴らしく、旧高取邸(国指定重要文化財)と比べ遜色もない。明治の住宅は全国的に極めて少なく、日本の住宅を知る上で貴重」とその価値を語り、「唐津の近代化の礎を築いた大島小太郎の旧宅を取り壊すことは、まちの歴史そのものを壊すことになる」と保存の意義を主張された。

 さらに日本建築学会による正確な学術調査を唐津市に要望され、その年の8月、市の依頼を受けるかたちで西先生を団長とした調査団を結成。床下まで本格的な調査が実施され、建築史における価値付けのもと、保存復元へ動いていった。

 建物そのものを保存することは不可能だったが、大島邸が解体され、柱の骨組みだけの姿になった翌年2月、建築に携わった吉田吉次郎棟梁らの技術の高さを知り、文化財としての価値を認識してほしいと、西の浜からの寒風の中、市民を前に長時間説明された。

 その時、「どんなに貴重な評価の高い文化財でも、住民が保全し、活用しようと思わなければ文化財は保存も価値もない」と訴えられた。今もあの言葉が鮮明に脳裏に残る。

 唐津市民からの感謝や市当局からの謝辞を受けられる機会もなく、何より、再建された大島邸を見られることもなく、亡くなられたことは非常に残念である。だからこそ、西先生の言葉を心として、唐津の文化財保全と活用に尽力したいと強く思う。

佐賀新聞  2015年
02月04日
 
旧大島邸、復元始まる 市長ら安全祈願16年度完成目指す

■茶室再現、日本庭園も

 唐津市の近代化を築いた大島小太郎(1859~1947)が暮らした「旧大島邸」の移築復元工事が3日、唐津市南城内で始まった。現在の大志小学校にあった邸宅の解体部材などを使い、主屋や茶室などを再現する計画で、日本庭園も含め、2年後の2016年度に完成する予定。

 安全祈願祭には工事関係者や利活用検討委員会のメンバーら約70人が出席。坂井俊之市長が「大島小太郎の功績や息吹が感じられるように、上質で本格的な和の空間の再現を行いたい。市民や来訪者の交流の結節点を目指す」とあいさつした。

 同邸の移築復元については、住民の保存運動から財政問題を理由にした反対まで、多くの議論が交わされた。市議会の熊本大成議長は「この日を迎えるまでに様々な意見が出た。ぜひ、観光唐津に益する施設になってほしい」と語った。

 旧大島邸は、敷地面積5700平方メートルで、うち建物面積は436平方メートル。総事業費は10億2千万円。解体して保管されていた柱や天井板、床板などの部材のうち40%を活用する。市では施設の利活用のための運営員会を新年度に立ち上げる。

毎日新聞  2015年
02月04日
タウンたうん:旧大島邸復元工事、安全を祈願−−唐津 /佐賀

 和風建築物・旧大島邸復元工事の安全祈願祭が3日、唐津市南城内の移築地(約5700平方メートル)であった。坂井俊之市長が「来訪者の交流の結節点として親しみやすい空間になることを期待する」とあいさつした。

 同邸は、旧唐津銀行頭取などを務めた大島小太郎の邸宅。市立大志小改築に伴い移築することになった。明治時代中期の住宅で、木造一部2階建て延べ約450平方メートルだった。

 移築面積は主屋や茶室、管理棟など計約437平方メートル。当時の柱や天井板など約4割を活用する。工事費は約3億3400万円。2016年度中の完成と開館を目指している。【原田哲郎】

佐賀新聞  2015年02月20日

旧大島邸瓦に児童らが名前 21日からイベント

 唐津市南城内への移築復元工事が始まった「旧大島邸」の屋根瓦に名前を残す「瓦一枚運動」が、21日に開幕する「唐津のひいな遊び」に合わせて行われる。イベントに先駆けて16日、旧大島邸と関わりの深い同市西城内の大志小の児童や保護者が瓦に名前を残した。

 旧大島邸は唐津の近代化に尽くした大島小太郎(1859~1947年)の邸宅。かつては現在の大志小敷地内にあった。瓦一枚運動は、千円の寄付につき、復元工事用の瓦1枚に名前を記すことができる仕組み。寄付金は市に贈られ、旧大島邸の運営などに活用される。

 16日は大志小で、児童や保護者が、個人や家族、友人同士で瓦の裏面に墨で名前や住所、日付を記した。同小は大島小太郎について学ぶ授業に取り組んだことがあり、6年の松尾陽輝君(11)は「大島さんは人のためを思って働く優しい人だと思った。自分の名前が大島邸に残るのはうれしい」と話した。

 21日~3月8日、旧唐津銀行で申し込みを受け付ける。運動事務局の辻いく子さんは「唐津市民に、新しくできる大島邸に愛着を持ってほしい」と話す。 

佐賀新聞  2015年10月16日 

唐津で旧大島邸の復元現場を公開

木材、半分を再利用

2015年10月16日 10時16分

主屋の復元が始まった旧大島邸。可能な限り、解体前の古い木材を活用しながらの作業が進む=唐津市南城内
主屋の復元が始まった旧大島邸。可能な限り、解体前の古い木材を活用しながらの作業が進む=唐津市南城内

 復元工事が進められている旧大島邸の現場見学会が15日、移築先の唐津市南城内で開かれた。事業者が進ちょく状況や木組みの工法を説明し、解体後に保管していた木材を建物全体の半分に再利用する方針を示した。

 旧大島邸は1893(明治26)年ごろ主屋が完成し、隣接する小学校の改築に伴い、2011年に解体した。腐食が激しく当初は再利用可能な木材は2割程度とみられていたが、新材を使って長さを継ぎ足す「継手(つぎて)」の技法などで補修し活用できることが分かった。

 屋根に置く平瓦は鉄分がさび、ほとんど使えなかったが、装飾された鬼瓦は数枚を除き解体前のものをそのまま使う。

 工事現場の公開は今回が初めてで、市民約60人が玄関部分に柱が建てられる様子を見学した。唐津市北波多の原田洋さん(72)は「いろんな道具を使って、昔ながらの木組みをされているのを間近で見ることができ、興味深かった。完成の日が楽しみ」と話した。

 旧大島邸は2017年3月完成予定。今年12月には上棟式、来年2月には壁塗り体験会を計画している。

佐賀新聞   2015年12月05日

市民「感慨深い」 旧大島邸で上棟式、400人が祝う

解体前の姿に近づく

もちまきなどが行われた旧大島邸の上棟式=唐津市南城内
もちまきなどが行われた旧大島邸の上棟式=唐津市南城内

 移築復元工事が進む佐賀県唐津市南城内の旧大島邸で4日、上棟式があった。保存活動に関わってきた市民や近隣の幼稚園、保育園児ら約400人が参加して神事やもちまきがあり、関係者は来年度末の完成を心待ちにした。

 式では、長さ4メートルのマツの棟木を屋根の上にロープで引き上げる棟上げ作業が行われた。工事は今年2月に始め、これまでに母屋と茶室の柱や梁(はり)など構造材の組み立てが終わり、解体前の姿に近づきつつある。当時の雰囲気を残そうと、解体木材や瓦はできるだけ再利用を試みている。

 完成後の運営資金に活用してもらおうと、瓦の裏に記名して一枚千円の寄付を集めていた「旧大島邸市民委員会」の辻いく子さん(66)は「たくさんの人の思いがこもった建物。やっとここまできたかと思うと感慨深い」と話していた。

 旧大島邸は唐津の近代化を進めた銀行家大島小太郎(1859-1947年)の住居で、没後も茶会などで使われていた。

 
毎日新聞  2015年12月5日 

旧大島邸
復元へ上棟式 園児ら協力、棟木を屋根に

 唐津市南城内の敷地(約5700平方メートル)で復元が進む和風住宅「旧大島邸」は4日、主屋棟と茶室棟の棟上げ作業に合わせた上棟式が行われた。来年11月25日までに建物工事を終え、その後、庭や外構など付帯工事を行い、全体工事は2017年3月完成、同4月オープンの予定。

 同邸は旧唐津銀行頭取など務めた大島小太郎の邸宅。市立大志小学校の改築に伴い移築されている。明治時代中期の住宅だった。

 式には一般市民や近くの幼稚園・保育園児ら約400人が出席。園児らがロープを引いて松の棟木(4メートル)を屋根に立てた。坂井俊之市長が「旧大島邸は市の近代化のシンボルの一つ。景観を大事に守り、生かしていきたい。市民の憩いの空間、交流の拠点として使っていただき、城内地区の核となる施設になることを期待している」とあいさつ。最後に紅白もちをまいた。

 移築面積は主屋や茶室、管理棟など計約432平方メートル。当時の柱や天井板など約5割を活用し、柱や梁(はり)などの復元は伝統的な継ぎ手加工技術で進められている。工事費は約3億6500万円。

 復元工事現場ではこの日、旧大島邸基金・市民委員会が「瓦一枚運動」をアピールした。1000円の寄付で屋根瓦1枚の裏に名前を残す企画。賛同する市民らが寄付し、瓦に名前を記入していた。運動で集まった名前を入れた瓦は1000枚弱、近く他の瓦と共に桟葺(さんぶ)きされる。【原田哲郎】

 
佐賀新聞  2017年02月22日 

旧大島邸4月開館へ 太郎右衛門さん作品寄贈

自作の手洗い鉢4点を寄贈した十四代中里太郎右衛門さん(右)と峰達郎市長=唐津市南城内の旧大島邸
自作の手洗い鉢4点を寄贈した十四代中里太郎右衛門さん(右)と峰達郎市長=唐津市南城内の旧大島邸
仮置きした男性用トイレの「斑唐津」の手洗い鉢。鏡の前で鉢全体が見られる
仮置きした男性用トイレの「斑唐津」の手洗い鉢。鏡の前で鉢全体が見られる

◆伝統技法の手洗い鉢4点

 唐津焼の十四代中里太郎右衛門さん(60)が21日、唐津市南城内に4月23日オープン予定の「旧大島邸」へ自作の手洗い鉢4点を寄贈した。西城内から移築復元中の明治期の邸宅に似合い、唐津らしい趣あるしつらえとして人々の目を引きそうだ。

 工事を進めている唐津市から1年半ほど前に提案された中里さんは、構想を温め、昨夏に1週間ほどで一気に制作した。直径約33センチ、高さは13~15センチで、古唐津の素材を使い、登り窯で焼くなど伝統的な技法を集約。「大きさ、色合い、風合いも自分が思う以上」と納得している。

 新設した管理棟の女性用トイレに絵唐津、斑(まだら)唐津皮鯨の2点、男性用トイレには「斑唐津のぐい飲みを好む男性が多い」(中里さん)と斑唐津を設置。朝鮮唐津は予備で保管しておく。

 中里さんは主屋の大座敷で「庭の緑はまだだが、先日、ここに座ると京都にいるような雰囲気になった。近くの旧高取邸もそんな場所だが、文化財ではない分、ここは利活用できる良さがある。その一助になればと作らせてもらった」と思いを語った。

 旧大島邸は唐津の近代化を進めた大島小太郎(1859~1947年)が1893(明治26)年に建てた住居。主屋棟や茶室棟など建物の復元工事は完了し、庭園や駐車場の整備が進んでいる。

佐賀新聞  2017年04月08日  

旧大島邸の移築終了 唐津市南城内

移築復元された旧大島邸の茶室でお茶を楽しむ峰達郎市長(奥)ら=唐津市南城内
移築復元された旧大島邸の茶室でお茶を楽しむ峰達郎市長(奥)ら=唐津市南城内

■23日開館控え公開

 唐津市が西城内から南城内に移築復元を進めていた明治期の邸宅「旧大島邸」が完成した。歴史的な佇(たたず)まいを残す新たな観光・文化施設で、総事業費約10億円をかけて整備した。23日の開館に先立ち7日、報道陣向けに公開された。

 旧大島邸は唐津銀行の創設者で鉄道敷設や港湾整備で唐津の近代化に尽力した大島小太郎(1859~1947年)の旧宅。主屋の完成は1893(明治26)年ごろとされ、同じ棟梁(とうりょう)が建てた近くの旧高取邸(国重要文化財)よりも10年ほど古い。

 建物面積は約470平方メートルで、主屋棟、三つの茶室からなる茶室棟は古い部材を4割ほど再利用した。庭園も築山や踏み石などの配置が再現されている。

 当初、市は隣接する大志小学校の敷地にするため、解体を予定していたが、市民の保存運動を受け、移築保存へ方針転換した。

 かつて旧大島邸の離れに住み、「活用策を考える懇話会」会長も務めていた松浦通運社長の馬渡雅敏さん(61)は「ほぼそのまま再現されている。使わないと家は傷んでいく。使用料はかかるけど、市民にいろんな目的で活用してほしい」と復元を喜んだ。

 入館料は一般100円、小中学生50円。23日午後1時から入館できる。

佐賀新聞  2017年04月13日   

旧大島邸、移築復元23日オープン

■明治の和風邸宅、市民の拠点に

 市民の熱意が行政を動かし、10億円の費用を要して移築復元された明治中期の和風邸宅「旧大島邸」が23日、唐津市南城内にオープンする。唐津の近代化に尽力した大島小太郎(1859~1947年)の旧宅で、当時の面影を残す大規模で上質な住宅。当面直営する市は「観光・文化施設」と位置付け、観光客が訪ねるだけでなく、茶会や講座、展示の会場など市民活動の拠点としての活用も見込む。開館前に施設内の様子を紹介する。

■開館記念行事と利用案内

【23日】10時=開館記念式典、13時=一般入館開始、14時=解体、復元に携わったアルセッド建築研究所の清水耕一郎所長の講演

【29日】9時半~16時=三流派合同茶会(14時半まで受付、有料)

【30日】11、15時=唐津大使佐藤和哉さんとしの笛のひととき

【30~5月5日】三流派交代による呈茶席(有料)

▼入館料 一般100円、小中学生50円

▼各部屋使用料(1時間)

 15~6畳和室が700~300円、6~3畳茶室が900~300円など

▼開館時間 9~17時(事前申請で部屋貸し出しは7~21時可)

▼休館日 水曜日(祝祭日は翌日休館)と年末年始

▼駐車場 隣接する南城内駐車場に149台

▼電話0955(73)0423=18日から通話可


茶親しむ邸宅の広間 最も広い15畳和室。茶道宗〓流唐津支部原田社中による実演とともに公開された。茶室棟の3室のほか、ここと8畳和室にも炉が切られている。奥の違い棚の天袋と地袋には、唐津藩御用絵師であった長谷川雪塘のふすま絵も=唐津市南城内の旧大島邸
茶親しむ邸宅の広間 最も広い15畳和室。茶道宗徧流唐津支部原田社中による実演とともに公開された。茶室棟の3室のほか、ここと8畳和室にも炉が切られている。奥の違い棚の天袋と地袋には、唐津藩御用絵師であった長谷川雪塘のふすま絵も=唐津市南城内の旧大島邸
ようこそ 建物東側の玄関から見た旧大島邸。玄関の軒の瓦は再利用し、その周辺に市民の寄付運動「瓦一枚運動」の瓦834枚を敷き詰めている
ようこそ 建物東側の玄関から見た旧大島邸。玄関の軒の瓦は再利用し、その周辺に市民の寄付運動「瓦一枚運動」の瓦834枚を敷き詰めている
できるだけ再利用 主屋棟と茶室棟は移設前の木材を4割ほど再利用。和室内部の見える部分の多くは再利用だが、真新しい木材もあちこち
できるだけ再利用 主屋棟と茶室棟は移設前の木材を4割ほど再利用。和室内部の見える部分の多くは再利用だが、真新しい木材もあちこち
きらりと光る意匠 左上から時計回りに、長谷川雪塘が描いた天袋小襖(ふすま)のスズメ▽紅葉や鶴など部屋ごとにモチーフが異なるくぎ隠し▽スズメをあしらった付書院の欄間▽十四代中里太郎右衛門さんが寄贈した手洗い鉢
きらりと光る意匠 左上から時計回りに、長谷川雪塘が描いた天袋小襖(ふすま)のスズメ▽紅葉や鶴など部屋ごとにモチーフが異なるくぎ隠し▽スズメをあしらった付書院の欄間▽十四代中里太郎右衛門さんが寄贈した手洗い鉢
旧大島邸、移築復元23日オープン
毎日新聞地方版  2017年4月14日   旧大島邸を観光スポットに /佐賀
 唐津の近代化に尽力した大島小太郎(1859~1947年)の邸宅が唐津市南城内に「旧大島邸」として復元され、23日に記念式典やイベントをして開館する。大島は旧唐津銀行の頭取を務めたほか、鉄道や道路の敷設、唐津港の整備など唐津の近代化に大きく貢献した人物。

 唐津藩の英語学校「耐恒(たいこう)寮」で、東京駅を設計した辰野金吾や同じく著名な建築家の曽禰達蔵らとともに、後に蔵相や首相を務めた高橋是清の薫陶を受け、1885年に佐賀銀行の前身となる唐津銀行を創立した。

 その邸宅はかつて、移築場所から西に約300メートルの地点にあった。1893年の建築で老朽化が進み、隣接する市立大志小学校の改築に伴い、いったんは取り壊される運命だったが、周辺住民らの反対で現在地に移築復元された。大規模で上質な住宅で、和風住宅の庭を伴う建築構成や意匠の優秀さ、特徴をよく示している建物。

 旧大島邸の移築復元までには長い道のりがあった。市民らは「大島邸を残す会」を発足させ、保存・活用の要望書を提出。また、市民団体「大島邸を保存する会」は公金支出の差し止め勧告を求める住民監査請求。更に建築史学会も当時の市長に同邸の保存に向けての要望書を提出し、「日本住宅の歴史の中で重要な存在」として何らかの方法で残すべきだと見解を出した。

 市民らもただ口を出すだけではなかった。率先して旧大島邸基金・市民委員会を発足し「瓦一枚運動」を展開。1口1000円の寄付で屋根瓦1枚の裏に名前を残すとして募った。その中には大志小の児童も名を連ねた。

 その節目節目に取材してきたが、振り返ってみると関係者の熱意がなければ同邸は壊される運命だった。主屋や茶室など当時の柱や天井板、欄間や床の間の襖(ふすま)絵など約4割を活用し、柱や梁(はり)などの復元は伝統的な継ぎ手加工技術で進められた。庭石も移設した。

 城下町・唐津の中心部にあり、唐津城や曳山(ひきやま)展示場、旧高取邸などと連携させた観光スポットとして期待される。大島の功績の継承の場として、市民の憩いの空間、交流の拠点として大いに活用してもらいたい。【原田哲郎】

佐賀新聞  2017年04月24日   

城内の新たな名所に 唐津市旧大島邸がオープン

城内の新たな名所に 唐津市旧大島邸がオープン

 唐津市南城内に移築復元された明治中期の和風邸宅「旧大島邸」が23日、開館した。城下町の風情が残る城内地区の新たな観光施設になるとともに、茶室(3部屋)を利用した茶会、和室(7部屋)を使った展示や講座など市民活動の拠点を目指す。1面参照 

 唐津銀行の初代頭取で、鉄道敷設や港湾整備など唐津の近代化をリードしてきた大島小太郎(1859~1947年)の旧宅。式典で峰達郎市長は「(大島の業績の上に)地域住民一人一人が唐津の経済、近代化を支えてきた。そう考えると、この旧大島邸は市全域の貴重な歴史的遺産」と価値を語った。

 大島の孫で長崎県島原市在住の高尾雄三さん(84)は幼い頃、夏休みになると唐津を訪ね、広い旧宅でかくれんぼした思い出があるという。「庭の木が生い茂って茶室が暗かったが、随分明るくなった。市民の皆さんに小太郎のことを知ってもらえれば」と期待した。

 市は当初、隣接小学校の敷地にするため、解体の予定だったが、市民の保存運動で移築保存した。式典では275万円を寄付した「旧大島邸基金市民委員会」などに感謝状が贈られた。

写真説明

「旧大島邸」開館のテープカットをする関係者。右から2人目は大島小太郎の孫・高尾雄三さん=唐津市南城内

西日本新聞  2017年04月24日 

城下町に新歴史遺産
 唐津市移築復元旧大島邸オープン [佐賀県]

テープカットで「旧大島邸」の開館を祝う出席者テープカットで「旧大島邸」の開館を祝う出席者

 唐津市が移築復元した明治期の和風建築「旧大島邸」(同市南城内)が23日、開館した。記念式典には峰達郎市長ら約120人が出席し、城下町の歴史遺産としてよみがえった邸宅の新たな出発を祝った。

 1893(明治26)年建築の旧大島邸は、旧唐津銀行の創立に関わった大島小太郎の邸宅。周辺住民の保存運動を機に西城内から移築された。主屋棟と茶室棟、管理棟の3棟で延べ床面積431平方メートル。優れた意匠のふすま絵や欄間があり、往時の庭も再現した。

 式典には大島の孫、高尾雄三さん(84)=長崎県島原市=と大島の長男夫婦のおい、浅井昭秋さん(77)=広島市=も出席。高尾さんは「邸宅が本来の姿を取り戻し、祖父の業績を市民の記憶にとどめてもらえるのがうれしい」と語った。

 浅井さんは、大島が学んだ唐津藩の英語学校「耐恒寮(たいこうりょう)」の教師高橋是清が1926(大正15)年、大島に宛てた封書を持参。「内容を読み解いてもらい、資料として生かしてもらえたら」と市に寄託した。40年ほど前、旧大島邸の蔵跡で見つけたものだという。浅井さんは「建物はきちんと再現され、60年以上前から通ってきた思い出が一気によみがえって体が震えた」と感慨深げだった。

 入館料は一般100円、小中学生50円。

 
佐賀新聞  2017年04月24日  

「コノワタで晩酌、楽しい」高橋是清、唐津の教え子に礼状

高橋是清から大島小太郎に届いた礼状。右は封書の裏面
高橋是清から大島小太郎に届いた礼状。右は封書の裏面
若いころ、耐恒寮の英語教師を務めた高橋是清
若いころ、耐恒寮の英語教師を務めた高橋是清
晩年の大島小太郎(唐津市教育委員会所蔵の肖像画)
晩年の大島小太郎(唐津市教育委員会所蔵の肖像画)

■大島小太郎への書簡、旧大島邸で展示へ

 旧唐津藩の英語学校耐恒寮(たいこうりょう)の教師で後に内閣総理大臣を務めた高橋是清(1854~1936年)が、教え子の大島小太郎に宛てた書簡が23日、大島ゆかりの旧大島邸の開館式典で初披露された。「送ってもらった海鼠腸(このわた)で晩酌を楽しんでいる」という礼状で、子弟の交遊とともに、酒豪で鳴らした高橋の人柄を伝える。 

 書簡は便せん1枚で、大島が大伯父となる広島市在住の浅井昭秋(てるあき)さん(77)が持参した。約40年前、大島邸の裏にあった蔵が倒壊し、後片付け中、行李(こうり)の中から出てきたという。

 発信地は「東京市赤阪」で、「老生も至極健全」と近況を伝え、「毎度結構なる海角(鼠)腸をたくさんお贈りいただき感謝する」とし「好物で、ご教示のように焼き塩を加え、晩酌に楽しんでいる」とつづる。

 日付は「十五年二月十一日」。高橋は昭和11(1936)年、「二・二六事件」で暗殺されており、大正15(1926)年とみられる。高橋は内閣総理大臣などを務めた後、昭和2年(1927年)、再び大蔵大臣に就任しており、当時は無任の時代と思われる。

 高橋は米国帰国後の明治4(1871)年、17歳で唐津に招かれ、建築家辰野金吾や経済学者の天野為之らを指導し、唐津銀行の設立者で唐津の近代化に貢献した大島も教え子の一人。高橋は唐津赴任の夜、藩士40人を相手に酒を飲み、朝昼晩一日3升が日課だったというエピソードが残る。

 旧大島邸は解体に伴い、唐津市が南城内に移築復元した。書簡は寄贈、展示されることになり、市は「開館に花を添えるサプライズの贈り物」と喜ぶ。

佐賀新聞  2017年04月30日 

復元された旧大島邸で茶会

3流派協力

開館したばかりの旧大島邸で開かれた三流派合同茶会=唐津市南城内
開館したばかりの旧大島邸で開かれた三流派合同茶会=唐津市南城内

 唐津市南城内の旧大島邸で29日、開館を記念し、宗徧流、裏千家、表千家による「三流派合同茶会」が開かれた。移築復元された明治中期の和風邸宅は茶室棟を備えており、約200人が茶文化を空間とともに楽しんだ。

 6畳と3畳をつなげた茶室で濃茶、15畳大座敷で薄茶、庭の野だては立礼で、各流派がそれぞれ担当した。同日始まった唐津やきもん祭りを目当てにした観光客が興味深そうにのぞき込む姿もあった。

 旧大島邸は唐津の近代化に尽くした大島小太郎(1859~1947年)の旧宅。唐津では1817年に奥州棚倉から小笠原氏が入部するとともに宗徧流が根付き、大島家とも関係が深い。小太郎の長男の嫁鎮(しず)子さんに宗徧流を学んだという同市北波多の原田キワ子さん(75)は「取りつぶされる直前だった建物がこうして残り、茶会ができる。先生や大島家への供養になる」と話していた。

 旧大島邸には23日の開館から28日まで1日平均50人が来館している。

 
 佐賀新聞  2017年05月15日 論説 

歴史的建造物の活用

息づく風土と気概を未来へ

庭園とともに移築復元された旧大島邸。茶室を3室備え、和の雰囲気が漂う=唐津市南城内
庭園とともに移築復元された旧大島邸。茶室を3室備え、和の雰囲気が漂う=唐津市南城内

 この週末、唐津くんち11番曳山(やま)「酒呑童子(しゅてんどうじ)と源頼光(みなもとらいこう)の兜(かぶと)」(米屋町)が総勢300人の曳き子とともに福岡市天神のビル街を駆けた。ユネスコの無形文化遺産登録を記念した九州合同イベントだ。

 博多祇園山笠はおなじみとして、想像上の動物「亀蛇(きだ)」が舞い踊る「八代妙見祭」など祭りの多様性を再認識させた。唐津くんちの「鯛(たい)曳山」を見慣れた博多っ子も、酒呑童子の迫力ある眼球に驚き、畏怖さえ感じたことだろう。

 唐津くんちが商人の豪気さを伝えるように、祭りはその地域の風土と気質を伝える。アイデンティティー、つまり、拠(よ)って立つ精神と言っていい。それは建物、歴史的建造物も同様である。

 各地で歴史的建造物を活用したまちづくりが進む。もちろん単なる建物の保存ではない。戦後の開発至上主義の流れの中で見失ったものを取り戻そうという精神復興の側面も大きい。

 唐津市では旧大島邸が移築復元され、連休前に開館した。旧唐津銀行の創立者で鉄道、港湾など社会基盤整備に尽力した大島小太郎の邸宅であり、城内に唯一残る明治期の近代和風建物だった。

 移築復元までは紆余(うよ)曲折があった。隣地での小学校建設に伴い解体される予定だったが、住民が保存運動に立ち上がり、建設費の支出差し止めを求める住民監査請求を起こした。移築決定後も1口千円の寄付で瓦の裏に名前を残す「瓦一枚」運動に取り組んだ。

 唐津において住民が行政を動かした「画期的な出来事」と今も評される。ただ熱気もいつしか冷め、1年を通じてどう活用していくか、具体策は見えない。土地取得費を含め10億円を投じた事業ながら「負の遺産」にならないか、早くも危惧する声が聞かれる。

 市議会では位置づけをめぐって今なお「観光施設か文化施設か」という論議が交わされている。観光施設であれ文化施設であれ、どう活用するかが肝要であり、使い続けていくことで、いつか「平成の歴史的建造物」となる。

 茶室を備えた邸宅が実業家であり文人だった大島の人物像を伝えるように、平成の時代にその精神を引き継ごうとした市民の気概を100年後、200年後の人たちに伝えるはずだ。

 旧大島邸の周辺には明治時代の炭鉱王高取伊好の邸宅で国重要文化財の旧高取邸や、家族の居宅だった舞鶴荘が残る。唐津城とともに、幕末・明治期の唐津の息吹を感じさせる歴史ゾーンである。

 曳山のユネスコ文化遺産登録に続き、作家檀一雄が唐津の風土に触発された「花筐(はなかたみ)」が映画となって公開される。唐津に息づく気風が脚光を浴びようとする今こそ、和文化の薫るまちづくりを進める好機であり、旧大島邸を核に機運を広げていきたい。(吉木正彦)




 大島家文書目録

 大島邸保存の活動経緯メモあり

このサイトの管理者である吉冨 寛が把握している小学校や大島邸に関する会議や勉強会などをメモしてみました。

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 文化的資源を活用した城内まちづくり計画策定委員会
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