唐津神社社報より唐津神祭に関わる記事を抜粋してネット化致します。
唐津神社社報   第120号   令和2年4月1日発行
発行所 唐津神社社務所
発行人 戸川 忠俊
編集人 戸川 健士
印刷所 (株)音成印刷
 唐津くんち曳山行事
第十三番曳山 水主町「鯱」
  〜保存修復事業〜
 
     

唐津くんちの曳山行事  第十三番曳山 水主町「鯱」  〜保存修復事業〜

 唐津くんち十三番曳山「鯱」につきましては昨年くんち終了後より曳山の蔵にて総塗替の工事に入っています。このことについて保存修復実行委員会がまず発足し、委員長に九州大学菊竹名誉教授、指導担当に文化庁文化財第一課小林主任調査官、事務局には水主町古瀬町内会長、坂本本部取締を始め十九名で構成されています。昨年六月、今年二月には保存修復委員会が彰敬館で開催されました。
 修復工事に関しては、昨年四月に展示場にて現地説明会、五月に業者入札が行われ石川県輪島の鞄c谷漆器店が請負業者に決まっています。
 第一回の委員会でまず「鯱」の修理経過と劣化状況について説明がありました。
 「鯱」の製作は明治九年(一八七六)製作、昭和五年(一九三〇)新規製作(昭和三年〜五年)、昭和四十一年(一九六六)総塗替、昭和四十八年(一九七三)台車新調、昭和六十三年(一九八八)総塗替となっており、現在の鯱は昭和五年に新しく製作されたものになります。
 本体部分は昭和六十三年に総塗替を行って三十年が経過しており経年劣化により漆の脱色、たたき塗りと言われる凹凸のある仕上げの一部が剥がれ、各所に亀裂が目視で確認されています。鯱は上下に可動することから亀裂は充分な注意が必要です。また亀裂からの雨水等の進入で下地の部分を破損させてしまう恐れがあるということでした。また平成元年に芯木が折れ本体背を突き破る事故が発生していることから今回再調査し修復を行うという事である。
 台車は昭和四十八年に新調され約四十五年が経過し経年劣化が著しく、部材の変形、反り、割れ、車輪の劣化が確認できるという。今回一部の框材・車輪の新調を行う。また展示場に保管されている旧台車を測定したところ、框寸法で二二六〇mmあり現在の台車より一〇〇mm広いことが判明した。旧台車の寸法に合わせる為、框材などを新調し、構造補強するそうである。
 委員からは鯱に特徴的なたたき塗り(凹凸のある漆塗り)が今回の塗替でなだらかになるのではという懸念もでたが、昔から残されてきた状態をなるべく継承しながら施工するということであった。民俗文化財修復は変化してきたことも大事であり、当初制作時の状態と変化してきた今の状態の両方を混ぜながら赤い椅麗な漆の仕上がりを目指していくということである。
 六月の第二回目の委員会では修復の具体的方法が示された。
 まず胴体・尾びれ・大びれ及び小びれ部分については、昭和六十三年修復時の劣化層まで掻き落としを行い、下地作業に着手。全面顔、頭部分のたたき塗り部分については、昭和六十三年の塗膜のみを掻き落とし、再度中塗り、上塗りを行う。
 金箔押し部分については、下層の痕跡及び古写真を参考に昭和五年新造時の形状を目指し修復するという事であった。さらに顔頭部の金箔施工の剥離剥落が顕著なことから今回調査を行った結果、昭和四十一年修復時の金箔が掻き落としされておらず残っており、これが原因とのことであった。そこで前回昭和六十三年修復時塗膜と下層の昭和四十一年施工の金箔の掻き落としを行い、さらに目荒しを施して中・上塗りを行うということである。
 台車に関しては幕吊枠を樫材から桧木材にて新調、塗装はウレタン塗装から摺り漆塗で修復、八双金具はウレタン塗装から黒漆焼付塗装で修復、梶棒の高さを現在より八〇mm上げることが協議された。
 最後に今回施工業者に指定された鞄c谷漆器店様について。鞄c谷漆器店は石川県輪島市にあり創業は文政元年(一八一八)で赤獅子が唐津神社に奉納される一年前、歴史ある漆器店です。輪島塗の漆器を始め建築内装、文化財修復にいたるまで手掛けていらっしゃいます。今回は初めて唐津曳山の修復に携って戴いております。会社のホームページに田谷漆器店十代目の田谷昂大さんのブログがあり鯱修復の様子が掲載されています。
 今回鯱は実に三十二年振りの総塗替。製作当初の鮮やかな姿が蘇ることでしょう。

令和二年唐津神社
春季例大祭について


 連日報道されております新型コロナウイルス感染拡大を受け、四月二十九日の春の大祭につきまして、神事は例年通り執行するものとし、奉納行事の曳山社頭勢揃は取締会と協議の上、中止することと致しました。
 なお、三島神社巫女舞、曳山囃子奉納、池坊生花展示につきましても中止の方向で検討しています。


雨の春季例大祭
 平成三十一年四月二十九日。平成最後の唐津神社春季例大祭は雨の中での祭典となりました。記憶ではここ二〜三十年、祭典時に雨が降ることは無かった(午後から雨が降ったことを一回か二回記憶している)ので、先代宮司から聞いた記憶を頼りに、準備を行いました。特に通常境内の広庭で行われる「浦安の舞」と「唐津曳山囃子保存会の囃子奉納」の奉納行事については、社殿の中で執り行うこととなりました。いつもなら広々とした所で行うのですが、お世辞にも広いと言えない参列者が目の前に迫る拝殿での奉納でしたので、どうなることかと心配しておりましたが、参列者の方から「いつもは遠くで眺めているものを、間近で見ることができて深く感動した」というお声を頂き、新たな発見もありました。また、例年市民会館前で行う十四台の曳山社頭勢揃いも雨天のため中止となりましたが、唐津曳山取締会様と唐津市文化事業団様の計らいで曳山展示場を無料開放して頂き、多くの観光客の方が訪れる結果となりました。
 お祭りの時は「晴天」が望ましいのですが、春祭りとは稲の豊作を願う行事。稲作に雨は必要不可欠なものですので、「恵みの雨」の中での祭典となって、早苗も喜んでいるのでは?と話すご来賓の挨拶に深く頷いた例祭となりました。

行事報告・予定

三月二十八日
・市丸利之助中将慰霊祭


四月九日
・唐津曳山取締会総会


四月十三日
・佐志八幡宮春季例大祭


四月二十三日
・佐賀県神社関係者大会(武雄)


四月二十九日
・唐津神社春季例大祭


五月十七日
・見借猿田彦神社三番庚申


六月中旬
・唐津神社総代会研修旅行


六月七日
・唐津神社旗争奪唐津曳山十四力町親睦スポーツ大会
  (当番町 平野町)


七月十六日
・見借猿田彦神社四番庚申


七月二十九日
・唐津神社夏越祭
 
 
 疫病鎮静祈願





 
春季例大祭
〈本年は神事のみ斎行〉 
 4月29日(水・祝日)昭和の日
 新型コロナウイルス感染拡大防止のため以下の奉納行事は中止
 浦安の舞・曳山社頭勢揃・池坊生花
唐津曳山囃子保存会 囃子奉納
 





 新唐津市民会館・曳山展示場作業部会開催報告

 現在唐津市は市民会館と曳山展示場の再整備を進めており、新たな施設に求められる機能や規模等について検討を進め、令和二年度には「基本計画」をまとめる予定としている。
 このような中、去る令和二年二月四日に第一回、三月二日に第二回の話し合いが行われた。市民会館に隣接する曳山展示場は当神社の宝物である曳山十四台を格納展示しており神社との関係が深いこともあり当社宮司が部会のメンバーに選出されました。戴いた資料から内容を紹介したいと思います。(唐津市HPより閲覧DL可)
 先ず第一回の部会では建設計画スケジュールや敷地高さ制限などの現在の市民会館と曳山展示場の概要が説明され、他の施設の配置図など例が挙げられました。その後のワークショップでは潟Vアターワークショップ様により進められました。潟Vアターワークショップ様は全国の劇場・ホールづくりの構想・計画から設計施工のコンサルティング会社として、東京国際フォーラム、歌舞伎座を始め有名施設を手掛けられ、九州でも現在六十三件もの施設を手掛けているそうである。


 第一回の作業部会は唐津の「まちじまん、文化じまん」として意見が交わされました。
唐津の町自慢では、
・自然が豊か
・美しい景色(城下町)
・暮らしやすい(災害が少ない)
・食べ物が美味しい
などの意見が出る一方、不満な点として
・商店街の人口減少(若者が唐津外に出る)
・交通の不便さ(渋滞)
・若者が働く場が少ない
・外国人観光客受け入れの課題(観光案内や外貨両替)
・町の魅力の発信不足
などが挙げられた。
唐津の文化自慢では
・唐津くんちの曳山
・唐津焼
・多くの祭り文化
・歴史的建造物や文化遺産が豊富
が挙げられた一方、
・発信力不足
・子ども達が文化的行事、活動に触れる機会が少ない
・曳山以外の文化にも目を
などの不滴点が挙がっていた。
 施設の課題や問題点は
 【市民会館】
・駐車場が少ない
・音響が悪い
・搬入口の使いづらさ
・障がい者、高齢者、乳幼児への対応
・ロビーが狭い、暗い
・リハ室の設備
 【曳山展示場】
・保存環境の悪さ
・資料の展示が少ない
・駐車場が少ない
・入口、チケット売り場が狭い
・子連れ、障がい者用トイレがない
などの意見があった。
 これを受けて第二回作業部会が「施設に求められる機能」をテーマに三月二日に行われた。
 主な意見を紹介すると、
 【市民会館】
・大ホールと中ホール設置
・唐津焼美術館併設
・広いリハーサル室
・子ども用のスペース
・物産販売所、研修室設置
 【曳山展示場】
・歴史資料展示
・囃子の生演奏
・曳山を見られるカフェ
・大型車の搬入スペースの確保
また、両施設に求める共通の機能として、
・唐津の文化力向上の為の場所
・情報の発信基地としての役割
・入口、ロビーを共用にする
・地下駐車場
・バリアフリーの施設
・城内地区との調和
など意見が交わされました。


 参加された皆さんの熱い思いが感じられ、どの意見もなるほど、と思わせられるものばかりでした。
 神社の立場としては唐津くんちを続けていく為、曳山の保存がしっかりとできる施設にして戴きたいと思います。


 現唐津市民会館は、昭和四十五年竣工で、当時は「唐津市文化会館」「曳山会館」の名称でした。設計は建築界で著名な唐津出身の村野藤吾氏を最高顧問に、総工費七億二千万円をかけて建設されました。当時このような施設では建築費が九州一ということで注目を集めたようです。開館して実に五十年もの間、唐津の文化向上と福祉の増進に寄与してきた市民会館と曳山展示場。来年四月には閉館し解体工事へ移るわけですが、工事期間中には曳山十四台が仮展示場となるアルピノホールへ移動しますので、今後くんちの巡行ルート変更など協議が必要になってきます。
 何はともあれ新しい市民会館、曳山展示場が今後素晴らしい唐津のシンボル的存在になるよう、皆さんと知恵を出し合っていきたいと思います。

市民会館建設計画スケジュール



 氏子総代改選
 唐津神社の氏子総代は一期四年の任期で、今年改選期に当たります。総代様方には二月下旬に文書にてお伝えの通りでございまして、新年度よりの新しい総代様方の御名前を頂戴致しております。
 しかしながら今般の新型コロナウイルス感染拡大の懸念から総会を先延ばしにしており、未だ区推薦総代様と総代三役様が決まっていない状態であります。やむを得ずの非常措置として前期の区推薦総代様と総代三役様には状勢が落ち着くまでの間留任戴きたいと思っております。ご事情ご賢察の上、総代様方には何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
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