くんちヤブにらみ 阿留布輪 |
くんち参りで一緒になった年配の人が「ヤマを引きたくない」という。 もうトシですねと、ひやかしたら 「おもしろくないもんな」と意外な返事を聞いた。 京町の珠取獅子が三日大事な鼻づらをひしゃぐ事故を起こした。脇山英治総取締めは、カジ棒を扱っている人か前を見ずに地面ばかり眺めているという。 威勢のよいくんちは見物人にとって面白いしまた唐津くんちの身上でもある。しかし、カジ俸がしっかりしていないとひき山は暴走する。近年山ひきがへたになったという声が多い。この十年ぐらいの間に、ひき出町内の人たちもだい分入れ替わりが激しく、子供のときから山を引いた人が少なくなり、「エンヤ、エンヤ」の掛け声もいつの間にかヨイサ、ヨイサに変っている。シシ、カブト、タイ、浦島と、それぞれに山のくせがあり、重さや高さも違う。 威勢がよいだけのひき山では、百五十数年の伝統か泣こう。 三日夕、中町でハッピを着た若者が、くんち見物にきた鏡の工員をなぐった事件もあった。同じハッピを着る人たちの問でもヤマを引きたくないムードがあるというからこんなを事件か持ち上がるのは当然だといえるが格調のある山ひきとハッピの若者の節度は、唐津くんちの良い風習として育てたいものだ。 |
昭和47年11月4日 唐津新聞 |