七ツ釜 |
波静なる日、舟をやとふて油のやうな海上を西に四里、神功皇后征韓の時、多くの守護神が集ひましたと言ふ神集島、高さ十数丈の玄武岩より成る立神岩、神工鬼作の玄武岩洞の奇観七ツ釜、燈台にて名ある鷹島、遠くは烏帽子島、又本邦捕鯨の創始地と伝へらるゝ小川島、夕日に映ゆる尖塔の教会に敬虔なる仏人の宣教師によりて全島人が導かるゝ馬渡島、水天髣髴の処に壱岐対馬あり、船路の眺め飽くことなく、更に綸を垂れて行く行く小魚を漁らんか−沖膾箸の雫や淡路島−百年寿命が延びる様な思がする。 |
【七ツ釜】 唐津から海上約四里、神功皇后征韓の後、戦捷を祝ふて御酒を中軍に賜ひ、其の土器を此処に棄てられたるとかにて、土器崎(カワラケサキ)又は神崎(カウサキ)と言ふ。 全岬悉く玄武岩より成りて断崖絶壁を為し、角形の石柱幾千万となく恰も薪を束ねて積み上げた様に、累々として白波砕くる其の巖脚に、洞窟が七つ、竈を並べた如く列んで居る、因て之を七ツ釜と称するのである。 風なき日は自由にこの洞窟に舟を漕ぎ入るゝことが出来る、夏季は毎年唐津から遊覧汽船が運航するが、湊(唐津の北二里二十五町)或は、呼子(唐津の北三里十二町)から小舟をやとふて行くことも興多い、然し風のある日は波が高くて近寄ることが出来ないのみならず危険である。此処より海上一里にして玄海の要津、呼子の港がある。 |
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七ツ釜 六角柱型の玄武岩を以て疊みたる大小七個の洞窟より成り、天巧の妙致と自然の雄大とは天下の絶景たり 北九州鐵道株式會社 |
七ツ釜 唐津より海上五里、呼子より海上二里、夏期遊覧船は唐津より壱人壱圓、他の期間は発動汽船の貸切り一艘十四五圓、又呼子よりの船賃五圓位である。音に聞えた絶勝で、玄武岩の断崖重畳して連続し其東端に恰も六角柱を列べたる如き七個の洞門が碧海に面して羅列し、波静かな日は洞内深く船を乗入れる事が出来る。付近に怪岩聳峙して天空を摩し波濤澎けんとして脚下を洗ふもの是を立神岩と呼ぶ。 |
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玄武岩よりなり六角形の柱状節理は整然として薪を積み重ねたる如く数百尺の石柱は立、横、斜に走り怪奇を極め岩脚、海に沿ふて大小七個の洞穴を穿つ俗に之を七ツ釜と呼ぶ、波静かなる時は洞内深く舟を乗入れる事が出来る。嗚呼天巧の偉大と自然の巧妙さに感嘆を禁じ得ざらん |
松浦潟 七ツ釜 岩は六角 玄武岩 右は立神 潮の花 わたしやチラリと一と目でも 股でのぞいて はらはらと エエコノ 呼子の沖ぢやえ |
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玄武岩より成り中に小湾を囲み風波常に穏かで水面鏡の如く中央に眼鏡岩なる大岩を擁し雄大なる風情掬すへく七ツ釜の勝と共に並び称せらる |
松浦潟 玄海の鳥は烏帽子に沖の島 鯨潮ふく 小川島 わたしやチラリと一と目でも せめて姫島 小呂の島 エエコノ 夜あけの霧ぢやえ |