唐津新聞 昭和56年1月22日

 曳山図絵の退色を憂う

投 書
 曳山会館に来客を連れて見物に行くたびに思うことであるが、あそこに陳列されている曳山図絵がなんとなく色の冴えが初めのころに比較して衰えているように思うが私だけの感じであろうか。
 それにつけて思われることは多くの重要文化財は実物大の複製を展示しておいて実物は最も適した保存方法で別に保管しておき年に一回虫ぼしのために十日ぐらい外に出して展示するというようにしているようだ。
 曳山図絵は、今や一神社の宝物ではなく唐津市の歴史を伝える重要な文化財としての価値を自他ともに認められている。
 ただ漫然と紫外線の強い螢光燈のもとに四六時中さらし出し、然も温度湿度共に決して保存に適しているとは言いがたい場所にさらしものにして紙の質を悪化させ絵の具の質を変化させ退色させて美術品としての価値を低下させるにとどまらず歴史的な価値を消失させることになりはしないかと憂うる者である。
 実物大の複製を作ることは唐津市の財政から考えて不可能なことではないと思われるので市当局及び識者の御検討をお願いしたい。    (唐津一市民)


保存策を検討します
   縮尺の写真か絵にして展示

 一、投書の「唐津神祭行列図」は昭和四十七年「唐津市重要民俗資料」として指定し現在曳山展示場に常時展示公開しております。

 一、行列図の作成は明治十六年、唐津本町の絵師「富野淇園」で構図は神祭当日の十五台の曳山を中心に侍、町人、物売りなど千六百人余りが描かれており、もとは襖絵として描かれたもので、当時の風俗などを知る上で貪重なものであり美術品としても価値は高いものです。

 一、この行列図は.魚屋町西ノ木屋、山内小兵衛氏の所蔵でしたが、昭和三十年唐津神社千二百年祭記念に神社に奉納されたもので曳山展示場完成と共に展示公開しているものです。

教育委具会としての対応

 一、唐津神祭行列図は、文化財として貴重なものですので、その保存には慎重を期したいと思います。

 一、現在の曳山展示場は空調その他、保存、保管の条件としては最適の施設であります。

 一、しかしこのまま年中永年にわたり公開展示することは退色、変質のおそれがありますので何らかの手を打ちたいと思います。そこで、縮尺の写実か絵にするなどの方法を十九日神社側とよく話し合いましたので神社の意志を尊重して対処したいと思います。

唐津神社戸川宮司の話

 あの行列図は山内家から奉納されたもので保存については慎重の上にも慎重を期していただきたいものです。現在のところ神社の環境よりはよいところに展示し管理していただいているので安心しています。同時にあの行列図が唐津くんちの歴史的意義や曳山を理解する上で重要な役割りを果たし、参観者に深い感銘を与え高い評価を受けていますことは神社はもちろん奉納いただいた山内家に対してもその意にそうものとして喜びにたえません。唐津くんちの曳山行事が昨年二月国の重要無形民俗文化財に指定されたことでもあるし、今しばらく実物を皆さまに鑑賞していただきたいと思います。
 あの絵については常に注意して見ています。退色変質などは今のところ見受けられませんが教育委員会において写真その他の方法でそれにかわるものができればそれでもよいと思います。市民の方にいろいろ関心をもっていただいたことは神社としてもありがたいことで感謝にたえません。そうした意味で今後の対応については教育委見会にお任せしたいと思います。